TCR EU第4戦:マイク・ハルダーが2年越しのバルセロナ制覇。兄妹ドライバーの兄が揃って躍進
2020年は全6戦を予定するTCRヨーロッパ・シリーズは、後半戦突入となる第4戦が10月10〜11日にスペイン・バルセロナで開催され、2018年にも同地ゲスト参戦で勝利を挙げているマイク・ハルダー(FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCR/プロフィ・カー・チーム・ハルダー)が2年越しのトップチェッカーで今季初の2勝目を飾ったドライバーに。続くレース2はアンドレアス・バックマン(ヒュンダイi30 N TCR/ターゲット・コンペティション)が今季初優勝を飾り、ともに兄妹参戦を続けるドライバーが兄の威厳を示すリザルトを手にした。
ツーリングカー超高速バトルのモンツァ戦を経て、シリーズは欧州の代表的F1トラック連戦が続き、例年は最終戦に位置付けられていたバルセロナが第4戦の舞台に。その予選ではここまで選手権首位を維持し60kgものウエイトを搭載するダン・ロイド(FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCR/ブルータル・フィッシュ・レーシングチーム)がトップ10圏外に沈む一方で、同じホンダ勢の2台とヒュンダイがトップ4を分け合う直接対決の構図となった。
その勝負を制したのはマット・オモラ(ヒュンダイi30 N TCR/BRCレーシングチーム)で、今季TCRドイツから急遽転身したハルダーを0.024秒差で抑えてポールポジションを獲得。3番手にはオモラのチームメイトであるダニエル・ナジーが続き、4番手には前戦勝者のペペ・オリオラ(FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCR/ブルータル・フィッシュ・レーシングチーム)。そして5番手にモロッコの英雄メディ・ベナーニ(アウディRS3 LMS/コムトゥユー・レーシング)以下、僚友のサミ・タウフィク、第2戦勝者ニコラス・ベアト(アウディRS3 LMS/コムトゥユー・レーシング)ら3台のアウディが続くグリッドとなった。
そのまま土曜午後に開催されたレース1は、オープニングでフロントロウのハルダーがポールシッターを仕留めて先頭で1コーナーへ。首位陥落のオモラはグリップ確保に苦しみ、1周目を終えるまでに地元オリオラにもかわされ3番手へと後退する。
その後方では今季シリーズ初の女性勝者となったジェシカ・バックマン(ヒュンダイi30 N TCR/ターゲット・コンペティション)が、このラウンドからチームメイトとして参戦するアルゼンチン出身ドライバーのホセ-マヌエル・サパーグ(ヒュンダイi30 N TCR)に追突しコースオフ。2台ともにトラックへ復帰したものの、サパーグのヒュンダイはリヤに大きなダメージを抱えてしまう。
さらに、もうひとりの“妹”ドライバーであるミシェル・ハルダー(FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCR/プロフィ・カー・チーム・ハルダー)は、4周目にメカニカルトラブルでピットへと向かい、彼女のシビックはそのままレースを終えるなど、女性ドライバーには受難続きのレース展開となる。
一方で6周目にはチームメイト同士で4番手争いを展開していたアウディ勢に動きがあり、ティーンエイジャーのタウフィクが同郷の大先輩ベナーニをかわして4番手に浮上し、そのままの勢いで続く7周目の1コーナーではオモラも仕留め、鮮やかなオーバーテイクで3番手へと上がってくる。
■後方の波乱をよそにポール・トゥ・ウインで今季初勝利
残り2周で2番手オリオラのテールへと接近したタウフィクは、今季好調を維持するアウディのスピードを活かして世界戦経験者攻略を狙うも、オリオラは勝手知ったる地元サーキットで若手を封じることに成功し2位を死守。
その約5秒前方ではオープニングでホールショットを決めたハルダーが快適なマージンを維持してフィニッシュラインを越え、今季2勝目を獲得した最初のドライバーとなった。
「ここは僕が以前にも訪れたサーキットだし、良い思い出がある。2018年のレース2以来の勝利を飾れてうれしいよ。ホームのドイツからは遠く離れたが、僕らのチームは本当に良い仕事をした。選手権で大量ポイントを得られたのは素晴らしいね」と、喜びを語ったハルダー。
明けた日曜のレース2は、リバースグリッドのフロントロウにアンドレアスとジェシカのバックマン兄妹が並ぶと、3番手のジョン・フィリピ(ヒュンダイi30 N TCR/ターゲット・コンペティション)を引き連れターゲット・コンペティション艦隊が盤石の態勢で1コーナーへ。その背後には、7番手スタートから大きくジャンプアップを果たしたオリオラが続いていく。
さらに後方では、ウエイトハンデに苦しむロイドがオモラに接触し、ヒュンダイはダメージが大きくそのままピットで敢なくリタイアとなってしまう。
レース中盤の8周目には2番手争いの攻防が激化し、ジェシカは背後のフィリピから執拗なアタックを受けると、チームメイトの圧に耐え切れずスピンオフ。自力でコース復帰を果たしたものの、大きくポジションを失うことに。
続く9周目にはレース1の攻防で得た知識をフル活用したタウフィクが、ついにオリオラを抜き去り3番手へと浮上。その直後に前を行くフィリピにジェシカとの1件でドライブスルーの裁定が下り、タウフィクが労せずして2番手を手にする。
さらに10周目には同じくアウディに乗るベナーニがオリオラをかわして表彰台圏内へと上がり、そのまま12周のチェッカー。「アンダーステアがキツかったが、ラインをキープしてタイヤを発動させることに集中した」と語るアンドレアスが今季初勝利を挙げ、2台のアウディがポディウムを得る結果となった。
これでペナルティも絡み2戦連続でトップ10入りを逃したロイドが選手権首位から陥落し、ランキング4位へと後退。マイク・ハルダーが新たなポイントリーダーに浮上し、ベナーニ、ベアトのアウディ勢が追う展開へと変わったTCRヨーロッパ・シリーズ。続く第5戦は10月22〜24日にスパ・フランコルシャンで争われる。
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