山本昌がドラフト候補の12投手をチェック。 大学・社会人でズバぬけた選手は?

Sportiva10月24日(土)7時0分

 50歳までNPBでプレーし、通算219勝を挙げたレジェンド・山本昌さん(元中日)。これまで数々のアマチュア投手の活躍を予言し、課題を言い当ててきた山本昌さんが、今年の大学生・社会人のドラフト候補12名を一挙に分析。レジェンドの目に「大学生豊作年」と言われる今年のドラフト候補はどのように映ったのだろうか?

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山本昌がチェックしたドラフト候補・総勢21投手


今年のドラフトの目玉のひとりである早稲田大・早川隆久
早川隆久(早稲田大/179センチ・80キロ/左投左打)

木更津総合高時代から見ていた投手ですが、すごく成長したなぁと驚きました。高校時代は球速が常時140キロ前後でしたが、今では約10キロも速くなっています。さすが小宮山悟監督の指導力だなと感じます。投球フォームは体重移動がスムーズだし、上背を生かせてボールに角度もある。リリースでボールを離すタイミングが非常によく、うまく切れていると感じます。バランスがよく、欠点がほぼないフォームなので、コントロールには苦労しないでしょう。変化球も多彩で、大きく曲がるカーブまである。ロッテが1位指名を公言するのもうなずけますし、ここまで完成度の高いサウスポーは久しぶりです。


今年3月にYouTubeチャンネルを開設した苫小牧駒大の伊藤大海
伊藤大海(苫小牧駒澤大/176センチ・80キロ/右投左打)

日本ハムが1位指名を公言した、北海道の剛球右腕。第一印象は「マー君(田中将大投手/ヤンキース)っぽい立ち方をするなぁ」ということです。足をゆっくりと上げて、強い腕の振りからすばらしいボールを投げます。彼も早川くん同様に高校卒業後に大きく伸びたと聞きますが、18〜22歳の年代は別人のように成長する選手が多いなと実感します。あえて気になる点を挙げるとすれば、少し上体が立ち気味でリリースで引っ掛けて投げるときがあること。体重移動で左肩がもう少し捕手側に寄るようになると、バランスがよくなってボールのキレもさらに上がりそうです。


中学時代に全国制覇の経験がある慶応大・木澤尚文
木澤尚文(慶應義塾大/183センチ・85キロ/右投右打)

ボールに力があり、いかにも体の強さがあることが伝わってきます。広島の森下暢仁投手のように左肩を先に開いて高い位置から腕が出てくる投げ方ですが、グラブサイドでしっかりと壁をつくって投げられます。それとカットボール、スプリットと140キロ前後で動く細かな変化球がすごくいい。手の振りが鋭いので、このような変化球が扱えるのでしょうね。プロ入り後の課題を挙げるなら、肩の開きが早いフォームだけに、時折シュート回転が強くなる傾向があること。プロの打者は失投を見逃してくれないので、シュートして甘く入ったボールを狙われる危険があります。とはいえ、彼が魅力的な投手であることはに変わりません。


スリークォーターから最速155キロの速球を投げ込む日体大・森博人
森博人(日本体育大/177センチ・80キロ/右投右打)

腕が少し横から出てくるだけでなく、全体的に変則的なムードのあるフォームですね。それでもボールを切る位置がしっかりしているから、球が走るのでしょう。150キロ台のスピードがコンスタントに出て、体に力があることが伝わってきます。少し上体主導で投げるので動作にブレもありますが、体全体でストライクゾーンに向かっていくようなラインを意識すれば、もっとコントロールがよくなるはずです。また、彼が成長した要因のひとつに、日本体育大の辻孟彦コーチの手腕もあると聞いてうれしく思います。辻コーチは中日時代のチームメイトで、ピッチングについて質問してくるなどとても研究熱心でした。今では名投手コーチになりつつありますね。


今年9月のリーグ戦で18奪三振をマークした八戸学院大の大道温貴
大道温貴(八戸学院大/178センチ・83キロ/右投右打)

初めてチェックする投手でしたが、相当にすばらしい素材ですね。フォームは言うことなし。体を縦に使えるから縦変化の球種を扱えますし、ゆったりと間を取れるのもいいですね。また、これでもかと腕を強く振るので、ボールの走りもいい。完成度が高く、フォームが安定しているのでプロでも先発として投げられそうです。少し気になるのは、1球1球に力を込めすぎるところ。力投型なのはわかりますが、抜くべきところは抜いて8割くらいの力感で投げる術を覚えたら、ダルビッシュ有投手(カブス)のように投球に強弱をつけられるようになるはずです。


最速152キロの速球と多彩な変化球が武器の法政大・鈴木昭汰
鈴木昭汰(法政大/175センチ・81キロ/左投左打)

常総学院高時代に見た時から、いい投手だと評価していました。高校時代は「ゲームをつくれるピッチャー」と感じていましたが、大学での4年間で10キロ近くボールが速くなっていて順調に成長していることがうかがえました。フォームはまとまっているし、さまざまな球種で打者を打ち取れる長所も健在です。今後の課題を挙げるとすれば、ボールが全体的にスライド回転しているところ。腕を振る際に右肩と左肩が同時に動いているので、右肩が開くのをもう少し我慢できるようになると、球筋が安定するでしょう。体が真っすぐにストライクゾーンに向かうようになって、今まで以上にコントロールがよくなるはずです。


ダイエーで活躍した永井智浩氏を叔父に持つ亜細亜大学・平内龍太
平内龍太(亜細亜大/186センチ・90キロ/右投右打)

こんな投手がいたのか......と衝撃を受けました。恐るべきパワーの持ち主ですね。バックスイングは少し変則的ですが、腕の振りは豪快そのもの。キレ、強さともすばらしく、これだけボールが走る投手を久しぶりに見ました。今秋は右ヒジのクリーニング手術明けと聞きましたが、現時点で155キロ付近の球速がバンバン出ていますから、将来160キロ前後が出る可能性は十分あるでしょう。大学での実績は乏しくても、これだけのボールが投げられればドラフト上位指名候補ですよね。大学時代の澤村拓一投手(ロッテ)に近いイメージです。あとは体に負担のかかりにくい動作を覚えられたら、長く活躍できるはずです。


高校時代は無名ながら大学進学後に急成長した仙台大・宇田川優希
宇田川優希(仙台大/185センチ・95キロ/右投右打)

見るからに体に力があって、フォームのバランスが合ったときは素晴らしいボールを投げる速球派右腕です。特徴的なアウトステップですが、手は真上から出てきてボールに角度があります。ただ、気になるのは腕の振りと体の使い方のバランスが合っていないときが多いことです。すばらしいボールとそうでないボールのムラが激しいのは、ここが原因でしょう。体重移動の際に右腰が前に出てくる前に投げてしまうので、腰が回りきらないのです。西勇輝投手(阪神)もアウトステップするフォームですが、右腰を入れて投げられるので、ぜひ参考にしてもらいたいですね。


作新学院時代の3年夏に甲子園で優勝した明治大・入江大生
入江大生(明治大/187センチ・87キロ/右投右打)

日本一になった作新学院高時代に、エースの今井達也投手(西武)だけでなく、2番手として投げた彼のことも印象に残っています。ボールは速いし、将来性も高くて「こんなピッチャーがいたのか」と驚いた記憶があります。ボールとグラブを離すタイミングが遅くて少し変則的なテークバックですが、打者からすると急にボールが出てくる感覚でタイミングが取りにくいフォームのはずです。腕のしなりはいいし、球は速く、変化球のキレもいい。とくに縦に鋭く落ちるスライダーは、今の時点でプロの一軍の打者も手こずるはずです。あとはコントロールをいかに磨けるかがカギになりそうです。腕が速く回る、目標を定める時間が短い投げ方なので、バランスを保てるかどうか。上の世界ではリリーフタイプに見えます。


社会人No.1投手の呼び声高いトヨタ自動車の栗林良吏
栗林良吏(トヨタ自動車/177センチ・80キロ/右投右打)

社会人ナンバーワン投手の評判どおり、非常にまとまったいい投手だなと感じます。森下暢仁投手(広島)のように左肩を早めに開いて右腕が真上から出てくるフォームで、ヒジがしっかりと上がってタテのカーブがとてもいい。体のラインが真っすぐに捕手に向かっていくので、コントロールもよさそうです。少し気になるのは、縦に落ちるフォークを投げる際に腕の振りがわずかに緩むこと。プロの強打者を相手に投げるには、腕を強く振り切れるようになりたいところです。とはいえ大学、社会人と経験を積んでいるだけあって、完成度の高い即戦力候補なのは間違いありません。


東洋大で上茶谷大河、甲斐野央らとチームメイトだったENEOSの藤井聖
藤井聖(ENEOS/176センチ・78キロ/左投左打)

大学時代は甲斐野央投手(ソフトバンク)、上茶谷大河投手(DeNA)、梅津晃大投手(中日)の「東洋三羽烏」の陰に隠れていたそうですね。でも、投手は立場によって変わるもの。ENEOSという名門社会人のエースになって、大きく進化したのもうなずけます。上背はなくても腕の振りがよく、力強いストレートに落ちるツーシームも光ります。フォームで少し気になるのは、体重移動の際に左肩が下がりすぎること。リリースまでに肩の位置が戻っていれば問題ないのですが、時折戻りきらないシーンがあり、ボールの上下動が激しくなります。せっかく真っすぐにホームに向かえるラインがあるだけに、もったいなく感じます。もちろん、投球フォームは本人の感覚が大事なので自分に合った投げ方を追求してもらいたいですが、一つの見方として参考になればうれしいです。


球質の重いストレートが武器のセガサミー・森井絃斗
森井絃斗(セガサミー/184センチ・94キロ/右投右打)

高卒3年目と若く、体に力のある魅力的な右腕です。体重移動からフィニッシュにかけて、松坂大輔投手(西武)と重なる部分があります。ストレートより、スライダーを投げる際のバランスがもっともよく見えます。ストレートを投げる際に少し動作がバラけて球筋が暴れるので、体の力を素直にボールに伝えられるようになるといいですね。ホーム方向へ真っすぐに力が伝わる形を目指していくといいでしょう。まだ若いのでさらに体に力がついてくるでしょうし、いずれはプロの一軍で投げられる投手になるはずです。

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 例年と比べると、大学生投手のレベルの高さに驚かされました。とくに早川投手(早稲田大)は飛び抜けてすばらしい。プロの一軍ですぐに勝てるでしょうし、もし私が先発投手の層が薄い球団の監督なら迷わず1位指名します。

 今年は先発タイプ、リリーフタイプとさまざまなバリエーションの好投手がいますから、球団のニーズによって思い切った指名が見られるかもしれません。先発タイプなら鈴木投手(法政大)もいいし、リリーフタイプなら平内投手(亜細亜大)の馬力は凄まじい。木澤投手(慶應義塾大)や入江投手(明治大)もリリーフならすぐプロで活躍できそうです。また、大道投手(八戸学院大)は先発でもリリーフでもどちらも適性が高そうです。

 今年は高校生にも高橋宏斗投手(中京大中京)のような好素材もいますから、今からドラフト会議が楽しみでなりません。

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