【アジア最前線:中国 #12】ホームアドバンテージなき中国代表の行く末は?
サッカーキング2021年11月11日(木)17時0分
いまだ自国での代表戦開催は許されず
FIFAワールドカップカタール2022アジア最終予選で、中国代表は4試合を終えて、1勝3敗の5位となっている。2位のオーストラリアとは勝ち点6差ながら、現実的には3位に入ってプレーオフから2002年大会以来2度目の本戦を目指すことになる。
敵地での第4節サウジアラビア戦(2ー3の敗北)を終えて、チームは一旦帰国。合計21日間の隔離が必須とされるなか、フィットネスを維持するために広州FCらと3試合の強化試合を行った。いまだ自国での代表戦の開催は許されておらず、11月11日に予定されているオマーンとの“ホームマッチ”に向けて、選手やスタッフたちはまたも慌ただしく中東へ発たねばならない。
新型コロナウイルスによる厳しい行動制限が、代表チームの足枷となっているのは明らかだ。選手やスタッフは行く先々で外部との接触を禁じられ、精神的なストレスを重ねている。筆者がUAEで行われたベトナムとの“ホームゲーム”を取材した際、ある関係者はこう話した。
「中東で50日を過ごし、とくに前半は完全に隔離されていた。その間、選手たちは練習や試合のとき以外、ホテルから一歩も出られず、明らかに精神状態が悪くなっている」。
とはいえ、一部の選手がホテルのプールサイドでくつろいでいる写真をSNSに掲載したことなどにより、彼らに同情するサポーターは少ない。
だが現場を取り仕切るリー・ティエ監督は、「家なき子になってしまった選手たち」を擁護する。当初、中国サッカー協会は蘇州でホーム戦を開催する意向を示していたが、新型コロナウイルスの感染を完全に抑え込もうとしている政府により却下された。そのため、最初の2試合はカタールの首都ドーハで開催(第1節はオーストラリアのホーム、第2節の日本戦は中国のホーム)。先にオーストラリア戦の会場が決まっており、移動が不要になる点と、来年のW杯の会場にある快適な環境ーー外は暑くても、会場内にはエアコンが設置されているーーが考慮された。
CSL延期の決断も代表にとっては逆効果に
しかし、カタール政府は代表チームの団体としてのコロナワクチン接種を認めておらず、選手やスタッフは厳重に行動を制限されていた。加えて、連敗スタートとなったこともあり、中国サッカー協会は10月のベトナムとの“ホーム戦”から、よりワクチンへの理解があるUAEのシャールジャで開催することにした。そのベトナム戦で最終予選における初勝利を収めているため、これは英断だったと言えるはずだが、選手やスタッフの負担はあまり変わっていない。
ライバルの一つであるオーストラリアは、11月から自国でホームマッチを開催することを決定した。これで中国がグループBで唯一、本国のアドバンテージを享受できないことになった。イラクとシリアも同じ状況だが、彼らは疫病対策というよりも、安全面を考慮してのものだ。グループAでその両国が5位と6位に沈んでいることからも、中国の未来に明るい展望は描きにくい。
中国サッカー協会は8月中旬に代表キャンプを立ち上げ、W杯出場を至上命題に掲げた。そのために、中国スーパーリーグ(CSL)を延期する措置を執ったが、これも逆効果になっているようだ。中国代表の選手たちは、エスパニョールに所属するウー・レイを除き、全選手がCSLに在籍している。代表戦以外に真剣勝負の場がなくなった彼らは、試合勘が鈍っているように見える。
中国代表のリー監督は何度も質の高い相手との親善試合を要請したが、コロナ禍で対戦相手はなかなか決まらない。そもそも、国際マッチウィークではない時期に選手を招集できる代表チームは極めて限られる。結局、10月のベトナム戦の前にシリアとのフレンドリーマッチができただけで、それにも多額の招待料を支払って実現させたと目されている。
文=Ming Zhao(趙明)
翻訳=井川洋一
FIFAワールドカップカタール2022アジア最終予選で、中国代表は4試合を終えて、1勝3敗の5位となっている。2位のオーストラリアとは勝ち点6差ながら、現実的には3位に入ってプレーオフから2002年大会以来2度目の本戦を目指すことになる。
敵地での第4節サウジアラビア戦(2ー3の敗北)を終えて、チームは一旦帰国。合計21日間の隔離が必須とされるなか、フィットネスを維持するために広州FCらと3試合の強化試合を行った。いまだ自国での代表戦の開催は許されておらず、11月11日に予定されているオマーンとの“ホームマッチ”に向けて、選手やスタッフたちはまたも慌ただしく中東へ発たねばならない。
新型コロナウイルスによる厳しい行動制限が、代表チームの足枷となっているのは明らかだ。選手やスタッフは行く先々で外部との接触を禁じられ、精神的なストレスを重ねている。筆者がUAEで行われたベトナムとの“ホームゲーム”を取材した際、ある関係者はこう話した。
「中東で50日を過ごし、とくに前半は完全に隔離されていた。その間、選手たちは練習や試合のとき以外、ホテルから一歩も出られず、明らかに精神状態が悪くなっている」。
とはいえ、一部の選手がホテルのプールサイドでくつろいでいる写真をSNSに掲載したことなどにより、彼らに同情するサポーターは少ない。
だが現場を取り仕切るリー・ティエ監督は、「家なき子になってしまった選手たち」を擁護する。当初、中国サッカー協会は蘇州でホーム戦を開催する意向を示していたが、新型コロナウイルスの感染を完全に抑え込もうとしている政府により却下された。そのため、最初の2試合はカタールの首都ドーハで開催(第1節はオーストラリアのホーム、第2節の日本戦は中国のホーム)。先にオーストラリア戦の会場が決まっており、移動が不要になる点と、来年のW杯の会場にある快適な環境ーー外は暑くても、会場内にはエアコンが設置されているーーが考慮された。
CSL延期の決断も代表にとっては逆効果に
しかし、カタール政府は代表チームの団体としてのコロナワクチン接種を認めておらず、選手やスタッフは厳重に行動を制限されていた。加えて、連敗スタートとなったこともあり、中国サッカー協会は10月のベトナムとの“ホーム戦”から、よりワクチンへの理解があるUAEのシャールジャで開催することにした。そのベトナム戦で最終予選における初勝利を収めているため、これは英断だったと言えるはずだが、選手やスタッフの負担はあまり変わっていない。
ライバルの一つであるオーストラリアは、11月から自国でホームマッチを開催することを決定した。これで中国がグループBで唯一、本国のアドバンテージを享受できないことになった。イラクとシリアも同じ状況だが、彼らは疫病対策というよりも、安全面を考慮してのものだ。グループAでその両国が5位と6位に沈んでいることからも、中国の未来に明るい展望は描きにくい。
中国サッカー協会は8月中旬に代表キャンプを立ち上げ、W杯出場を至上命題に掲げた。そのために、中国スーパーリーグ(CSL)を延期する措置を執ったが、これも逆効果になっているようだ。中国代表の選手たちは、エスパニョールに所属するウー・レイを除き、全選手がCSLに在籍している。代表戦以外に真剣勝負の場がなくなった彼らは、試合勘が鈍っているように見える。
中国代表のリー監督は何度も質の高い相手との親善試合を要請したが、コロナ禍で対戦相手はなかなか決まらない。そもそも、国際マッチウィークではない時期に選手を招集できる代表チームは極めて限られる。結局、10月のベトナム戦の前にシリアとのフレンドリーマッチができただけで、それにも多額の招待料を支払って実現させたと目されている。
文=Ming Zhao(趙明)
翻訳=井川洋一
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