【ライターコラムfrom仙台】ニューヒーロー賞で“時の人”に…西村拓真、3年目の変化もその時間のままで
サッカーキング2017年11月12日(日)12時55分
ニューヒーロー賞を受賞した西村拓真 [写真]=J.LEAGUE
時の人、となった。だが、彼自身の時の流れは、乱れることなくそのままだ。
ベガルタ仙台の3年目、西村拓真のことである。
この数週間、彼の名前がメディアに取り上げられる機会が増えた。10月27日には仙台のクラブ史上初めてJリーグYBCルヴァンカップのニューヒーロー賞に選出され、11月3日には同大会決勝戦の前夜祭で表彰された。この大会でグループステージ初戦から準決勝第2戦までの10試合計808分に出場し、2得点2アシストと活躍。クラブ史上初めてのニューヒーロー賞受賞者となった。6日に発表された『TAG HEUER YOUNG GUNS AWARD』の候補にもノミネートされた。
現在の西村拓真がどんなプレーヤーなのか、ということを一言で説明するのは、難しい。3日のルヴァンカップ決勝戦前夜祭のスピーチから分かるのは、彼がマイペースなタイプだということだろうか。
プレーについて言えば、同大会の2得点2アシストという数字から、「得点に絡む仕事ができる選手」の一言で済ませることもできるかもしれない。問題は、その“仕事”の中味だ。彼の相手陣内における業務内容は、特に今シーズンに増えた。
2015年にプロ生活をスタートさせた西村は、4-4-2のFWで起用されてきた。当初の彼のスタイルを言葉にするならば「ゴールに向かって一目散に突進するFW」というところだった。富山第一高校3年時の2014年にはプレミアリーグWESTで18試合10得点を記録した点取り屋であり、プレー自体も姿勢も、ゴールに向かう姿が目立っていた。プロ2年目の2016年明治安田生命J1リーグ・2ndステージ第12節・ヴァンフォーレ甲府戦でJ1初ゴールを記録したときも、クロスに対して頭から勢いよく飛びこんで決めた。
その西村は3年目の今季、自身にとって初めてという3-4-2-1の2にあたるシャドーのポジションで、プレーの幅を広げている。ゴールに背を向けてボールを受け、鋭くターンしてから抜け出す。相手の間にいち早く的確なポジションを取り、ワンタッチでフリーの味方を使う。がむしゃらに突き進むことの多かった守備のプレッシングも、相手の向きや間合いに即した形が増えた。「視野は広がりました。1トップとの連係もそうだし、駆け引きする相手が相手のDFだけでなくボランチとかMFの選手ということも見えてきました」と本人も振り返る。できることが増えるぶん、一言で説明することが難しくなった。
出場機会を増やし、その成長を示す機会も増えた西村だが、その素地となるものは今年突然できたわけでなく、年々耕されてきたものだ。高校時代にアシストが多かったスタイルからフィニッシュを増やすスタイルに自分を変えていったように、プロ入り後も渡邉晋監督や福永泰コーチらコーチングスタッフや、梁勇基や野沢拓也といったベテランから同期の茂木駿佑ら若手に到るまでのチームメイトから、多くを学んできた。2016シーズンを前にしたオフ期間にスペイン研修の実戦で自身初の1トップを経験したときも、「パスの受け手として、プレーの幅が広がりました」と、糧にしていた。こうした、前向きな学習の積み重ねが、その時その時のきっかけによって、成果をもたらしてきた。
ニューヒーロー賞を受賞後、「見る人の目が変わってきた、ということは自分でも感じています」とのことだが、彼自身のペースは変わらず、現状に満足せず、さらに上を目指す。「まだまだ物足りない。結果を出したいんです」と西村は先を見る。その結果というのは、FWとしてのゴールということか。その問いには、彼はこう答える。
「『FWとして』というより、チームに貢献する選手としての結果を出したい」
西村はこれからも、彼のペースで学び続け、成長も続ける。
文=板垣晴朗
ベガルタ仙台の3年目、西村拓真のことである。
この数週間、彼の名前がメディアに取り上げられる機会が増えた。10月27日には仙台のクラブ史上初めてJリーグYBCルヴァンカップのニューヒーロー賞に選出され、11月3日には同大会決勝戦の前夜祭で表彰された。この大会でグループステージ初戦から準決勝第2戦までの10試合計808分に出場し、2得点2アシストと活躍。クラブ史上初めてのニューヒーロー賞受賞者となった。6日に発表された『TAG HEUER YOUNG GUNS AWARD』の候補にもノミネートされた。
現在の西村拓真がどんなプレーヤーなのか、ということを一言で説明するのは、難しい。3日のルヴァンカップ決勝戦前夜祭のスピーチから分かるのは、彼がマイペースなタイプだということだろうか。
プレーについて言えば、同大会の2得点2アシストという数字から、「得点に絡む仕事ができる選手」の一言で済ませることもできるかもしれない。問題は、その“仕事”の中味だ。彼の相手陣内における業務内容は、特に今シーズンに増えた。
2015年にプロ生活をスタートさせた西村は、4-4-2のFWで起用されてきた。当初の彼のスタイルを言葉にするならば「ゴールに向かって一目散に突進するFW」というところだった。富山第一高校3年時の2014年にはプレミアリーグWESTで18試合10得点を記録した点取り屋であり、プレー自体も姿勢も、ゴールに向かう姿が目立っていた。プロ2年目の2016年明治安田生命J1リーグ・2ndステージ第12節・ヴァンフォーレ甲府戦でJ1初ゴールを記録したときも、クロスに対して頭から勢いよく飛びこんで決めた。
その西村は3年目の今季、自身にとって初めてという3-4-2-1の2にあたるシャドーのポジションで、プレーの幅を広げている。ゴールに背を向けてボールを受け、鋭くターンしてから抜け出す。相手の間にいち早く的確なポジションを取り、ワンタッチでフリーの味方を使う。がむしゃらに突き進むことの多かった守備のプレッシングも、相手の向きや間合いに即した形が増えた。「視野は広がりました。1トップとの連係もそうだし、駆け引きする相手が相手のDFだけでなくボランチとかMFの選手ということも見えてきました」と本人も振り返る。できることが増えるぶん、一言で説明することが難しくなった。
出場機会を増やし、その成長を示す機会も増えた西村だが、その素地となるものは今年突然できたわけでなく、年々耕されてきたものだ。高校時代にアシストが多かったスタイルからフィニッシュを増やすスタイルに自分を変えていったように、プロ入り後も渡邉晋監督や福永泰コーチらコーチングスタッフや、梁勇基や野沢拓也といったベテランから同期の茂木駿佑ら若手に到るまでのチームメイトから、多くを学んできた。2016シーズンを前にしたオフ期間にスペイン研修の実戦で自身初の1トップを経験したときも、「パスの受け手として、プレーの幅が広がりました」と、糧にしていた。こうした、前向きな学習の積み重ねが、その時その時のきっかけによって、成果をもたらしてきた。
ニューヒーロー賞を受賞後、「見る人の目が変わってきた、ということは自分でも感じています」とのことだが、彼自身のペースは変わらず、現状に満足せず、さらに上を目指す。「まだまだ物足りない。結果を出したいんです」と西村は先を見る。その結果というのは、FWとしてのゴールということか。その問いには、彼はこう答える。
「『FWとして』というより、チームに貢献する選手としての結果を出したい」
西村はこれからも、彼のペースで学び続け、成長も続ける。
文=板垣晴朗
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