HELM MOTORSPORTSがST-X参戦初年度でチャンピオン獲得の快挙。チーム一丸で掴んだ栄光に喜び
11月27日に三重県の鈴鹿サーキットで開催されたENEOSスーパー耐久シリーズ2022 Powered by Hankookの最終戦となる第7戦『SUZUKA S耐』。FIA-GT3車両規定で争われるST-Xクラスは、2位フィニッシュを果たしたHELM MOTORSPORTS GTR GT3(鳥羽豊/平木湧也/平木玲次)が2022年のチャンピオンを獲得した。
HELM MOTORSPORTSは、茨城県出身の平木湧也と玲次の兄弟が茨城県の地域密着型チームというコンセプトを掲げ、若いチームスタッフを中心にFIA-F4やスーパー耐久ST-3で活躍してきたチームだ。2022年からはFIA-F4に加え、全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権、さらにスーパー耐久ではニッサンGT-RニスモGT3を投入し、FIA-GT3車両規定で争われるST-Xに戦いの場を移していた。
ST-X初年度ながら、HELM MOTORSPORTSは今季第2戦『NAPAC 富士 SUPER TEC 24時間レース』でチーム初の総合優勝を飾り、第4戦オートポリスでもトップチェッカーのマシンにペナルティが科されたことで2勝目を獲得している。しかし、続く第5戦もてぎでは4位、第6戦岡山では5位と、いまひとつ流れに乗り切れていなかった。
そんななかで迎えた最終戦、HELM MOTORSPORTSは土曜日の予選でチーム初のポールポジションを獲得してみせる。「僕は2番手でしたけど、鳥羽さんがスーパーラップを見せてくれました」と平木湧也が言うとおり、まず行われたAドライバー予選でトップタイムを記録して上昇ムードを作ったのがジェントルマンドライバーとしても活躍する鳥羽豊だ。
その鳥羽は2022年FIA-F4のインディペンデントクラスでチャンピオンを獲得するなど、速さを披露してきたドライバーだが、今回の予選は「ほとんど記憶がないんですよ(笑)。自分でもどうやって走ったんだと思うくらい集中していました」と自身のアタックを振り返った。しかし、鳥羽はこの鈴鹿大会に向けて、実は「不安で仕方なかった」という思いもあったという。
「僕はこんなにハイパワーのクルマに乗ったのは今年が初めてで慣れていないなか、どんどんとクルマがウエイトの影響で変化しているような状況で、チームの足を引っ張っていました。ですので、この鈴鹿では『何とかチームにプラスになるんだ』という思いだけだったので、鈴鹿の前に一度テストに行きました。そこである程度の感覚を掴んでいましたけど、もう不安で仕方なかったです」
この鳥羽の走りが決め手となり予選ポールポジションを獲得したHELM MOTORSPORTS GTRはポール獲得による2ポイントを追加し、ST-Xランキングトップの888号車Grid Motorsport AMG GT3とのポイント差を0.5点差に縮めて翌日の決勝に挑むことになった。
そして迎えた決勝では鳥羽がスタートドライバーを担当。レース序盤では1周目に日立Astemoシケインで16号車ポルシェセンター岡崎 911 GT3Rと接触してしまう場面もあったが、その後はペースも良く快調な走りを披露して26周の第1スティントを終えた。
「とにかく攻めないと限界はわからないので、専有走行ではけっこう気合を入れて走行したのでいい感じは掴めていました。湧也くんもいいセットアップを見つけてくれていたのでクルマもすごく乗りやすかったですし、そのセットアップのおかげで、今まで苦労していた部分がだいぶ緩和されました」と鳥羽。
HELM MOTORSPORTS GTR GT3の第2スティントは湧也が担当し、65周目には平木兄弟の弟でもある玲次に第3スティントを託す。その玲次が「一番ピンチだった」と語るのが、チャンピオンシップを争う888号車に先行を許したときだという。
「フルコースイエローが導入されたときに888号車がいいタイミングでピットに入ったので、そこで半周くらいギャップができてしまいました。ですが、その後にセーフティカーになったので湧也が888号車の後ろにつくことができました。そこからはすぐに888号車をパスしてギャップを作ってくれたましたけど、一番ピンチだったのはそのときです」
「それ以外はうしろを見ながらのレースだったのでまったく心配はしていなかったです。クルマにもトラブルは起こりませんでしたし、とにかく888号車の前に出ることができたので、気持ちとしてはすごく楽でした」
そんな玲次から93周目に再びステアリングを引き継いだのが、兄でありチーム代表でもある湧也だ。ピットアウト時点では16号車と31号車DENSO LEXUS RC F GT3に続く3番手でコースに復帰した湧也だったが、レース終盤には31号車に追いつきオーバーテイクに成功、2番手に浮上してチェッカーフラッグを受け、4位フィニッシュの888号車を逆転してST-X参戦初年度でのチャンピオンに輝いた。
レース後の湧也は「チャンピオンを獲っちゃいましたね」と喜びをみせたものの、「まだ実感がないです」と落ち着いた様子で以下のように続けた。
「このプロジェクトを始めたときには、シリーズチャンピオンよりもまず優勝したいという気持ちでした。今年は富士24時間とオートポリスで勝利しましたけど、チームとしてはそこから全然うまくいきませんでした。でも、そのなかでいろいろと修正や改善をすることができたので、その結果、最後はこのようにいいかたちで締めくくることができました」
また、四輪レースのチャンピオンは2015年のスーパーFJ鈴鹿選手権以来だという玲次も「ここまでうまくいくことは予想していなかったです」と今季の戦いぶりに驚いた様子だ。
「富士24時間で優勝し、オートポリスでも勝つことができました。そのあたりからチャンピオンシップは少しずつ意識していましたけど、その後はウエイトを搭載したのでいいレースをすることができませんでした。ですので、この鈴鹿にすべてを賭けてチーム一丸となってやってきました。それが結果になったので、ものすごくほっとしています」
そしてFIA-F4インディペンデントクラスに続いて、スーパー耐久でもチャンピオンを獲得する結果でシーズンを締めくくった鳥羽も「レースは3年前から始めましたけど、ますますはまってしまいそうな感じです(笑)。本当に楽しかったです」と笑顔で喜びを語った。
まさにジェントルマンドライバーである鳥羽の努力による速さ、そして平木兄弟を筆頭とするHELM MOTORSPORTSが一丸となって掴んだ“シリーズチャンピオン”という富士24時間制覇に続くビックタイトル。2020年に立ち上げられたまだまだ若いチームだが、これからの活躍がさらに楽しみなチームであることは間違いないだろう。
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