F1第21戦木曜会見:女性だけのカート大会を開催したベッテル「一緒に何かをすることで、自信を持ってほしいと思った」
2021年F1第21戦サウジアラビアGP木曜会見では、フェルナンド・アロンソ(アルピーヌ)とセバスチャン・ベッテル(アストンマーティン)が揃って登場した。ともに複数回のタイトルを獲得したベテラン。今季から別チームに移籍、あるいは現役復帰して、新たな挑戦を始めた者同士だ。さらにいえばフェラーリで頂点を目指し、その夢がかなわなかったという共通点も持つ。
今季序盤はともに新天地で力を出しきれない苦しい状況が続いたが、ベッテルは第6戦アゼルバイジャンで2位表彰台、アロンソも前戦カタールGPで7年ぶりの表彰台とノリノリだ。そして中団での戦いが多いという要因も大きいとはいえ、レース中のオーバーテイクの回数も群を抜いている。
──フェルナンド、シーズンを通じて最も多くの追い抜きを行ったドライバーに与えられる『オーバーテイク賞』の現時点での第1位はあなたなんですよ。知ってました?
アロンソ:ふ〜ん、そうなんだ。
──そして第2位は、セバスチャン、あなたです。
ベッテル:みたいだね。それよりも賞品が何なのかが、気になるところだね。
アロンソ:そうだね、それはぜひ知りたい。そしたらどっちが取るか、お互いに賭けようか。
ベッテル:(笑)
そしてここでアロンソが、キミ・ライコネン(アルファロメオ)の名前を出してきた。
アロンソ:確か第3位はキミ(ライコネン)だよね?
──セバスチャンと同率2位です。
アロンソ:そうなんだ。でもキミは新型コロナウイルス陽性で2戦休んでるよね。だったらキミに1番の資格があるね。
──今週末、そして最終戦アブダビも、あなた方3人の抜きつ抜かれつが期待できるのでは?
ベッテル:そう思う。ていうか、僕ら3人でわざと抜いたり抜かれたりして、オーバーテイクの回数を稼ぐっていうのはどう?
アロンソ:そりゃあ、いい。今週末だけで20回は稼げそうだ。
そう言って、お互いにバカ受けするふたりの世界チャンピオン。続いてベッテルには、この会見の直前に行われていた女性だけのカートイベントについての質問が飛んだ。
──女性だけのカートイベントを開いたんですよね。
ベッテル:すごく楽しかったよ。サウジアラビアで初めてレースをするのを記念して、何かイベントを開きたかった。この国で僕にできることは何か、以前からいろいろ考えていてね。訪れる国によっては、人権問題とかいろいろネガティブな問題が脚光を浴びることがある。でも僕はあえて、ポジティブな面に光を当てたかった。それで女性だけのカート大会をやろうと思ったんだ。サウジアラビアで女性が車を運転できるようになったのは、2017年からだからね(編注:実際には2018年6月から)。
7、8人の女性が来てくれた。運転免許を持ってない人もいたし、もちろんカートで走るのが初めての人もいた。逆にレース経験者もいた。いっしょに何かをすることで、彼女たちが自信を持ってくれればと思ったんだ。
しかしこのイベントはベッテルにとっても、得ることの多いものだったようだ。
ベッテル:彼女たちといっしょに走って、たくさんの話をして、彼女たちの人生を垣間見せてもらって、この国がこれからいい方向に変わっていく確信が持てた。そして僕たちがついやりがちな、西洋的あるいはヨーロッパ的なレンズを通してだけでは、見えて来ないものがあるということも学ぶことができたかな。とにかくポジティブな部分に焦点を当てることが重要だよ。
社会的な発言や行動を積極的に行うという点では、ルイス・ハミルトン(メルセデス)もベッテルに負けていない。ただし両者のスタンスは、微妙に違う。サウジアラビアは女性の権利だけでなく、人権全般を侵害する国とみなされてきた。そして今回のF1開催については国際的な人権団体から、「F1を隠れ蓑に、世界からの非難をかわそうとしている」という批判も出ている。
ハミルトンはサウジアラビアでのF1開催について、「すごく温かい歓迎をしてもらったけど、でも正直ここにいることがいい気分だとはいえない。でもここでレースすることは、F1が選んだことだ」と、コメントした。
自分の信条としては、人権問題のある国でレースはしたくない。一方で、タイトル争いが佳境にある状況では、そちらを優先するしかない。そんな相反する感情に、ハミルトンはなんとか折り合いをつけようとしているように見えた。
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