【横浜FMシーズン総括】アタッキングフットボールの完成は道半ば。1年目の苦労を2年目の飛躍へ
サッカーキング2018年12月6日(木)18時31分
横浜FMは2018シーズンを12位で終えた [写真]=J.LEAGUE
アンジェ・ポステコグルー監督が標榜する『アタッキングフットボール』は、リーグ2位タイの56得点という形で一定の成果を収めた。大量得点の試合も数多く、観戦者にドキドキとワクワクを、極上のエンターテインメントを提供したという意味で、今季の横浜F・マリノスはリーグで異彩を放つ存在だったと言える。
一方で、失点の多さも顕著だった。総失点数はリーグワースト3位の「56」。これは優勝した川崎フロンターレ(27失点)の実に2倍以上で、昨季の36失点と比較してもその多さがうかがい知れる。こだわりのクリーンシート(無失点試合)もわずか7試合にとどまり、「堅守の横浜F・マリノス」というイメージは完全に過去のものとなった。
ポステコグルー監督はいかなる状況でも「アクション」の姿勢を貫いた。システムは4バックを基本にしながらオプションとして3バックも併用したが、いずれの場合でも自陣からのビルドアップで丁寧にボールをつなぐスタンスは不変だった。チームで唯一全試合にフルタイム出場したGK飯倉大樹が攻撃の第一歩となり、徹底的にショートパスをつないでゴールを目指した。
新たなスタイルはシーズン序盤こそ選手たちに迷いや戸惑いを生じさせたが、日々の鍛練の賜物か、夏以降はスムーズなポゼッションが実現できるようになった。両サイドバックがインサイド寄りにポジションを取る特徴的な動きも、あくまで戦法の一つに過ぎない。とにかくピッチにいる全員が空いているスペースを見つけて動き回る。それを自然体でできるようになった。
課題はそのパフォーマンスを結果につなげていく作業だろう。ビルドアップ時のポジショニングやクロスボール中心のゴールパターンは、良くも悪くも定型化していて対策は練られやすい。より多くの得点や勝ち点を積み上げるためには、相手を凌駕する精度や個の能力が必要になる。
「自分たちがやることは決まっている。だから相手はリアクションしてくる。その次を考えないといけない時期にきている」という飯倉の言葉にも一考の余地がある。力で上回れない場面で、二の矢、三の矢を用意しておくにこしたことはない。年間を通して一本調子だった感は否めず、相手にしてみれば対応は難しくなかったはずだ。来季に向けた補強と並行して、状況に応じた臨機応変さや柔軟性を持ち合わせる作業が必要だろう。
最終節の翌日、黒澤良二社長は「新しい取り組みの中で、人々に感動や笑顔を与えるサッカーをやるのは簡単ではないし、一朝一夕にはできない」と指揮官への理解を示し、来季もポステコグルー監督にチームの指揮を託すことを明言した。そして同時に「結果を求めたい」と2年目への期待も口にした。
アタッキングフットボールの完成は道半ば。その歩みの先にどんな結果が待っているかは分からないが、道を引き返すことに意味はない。1年目の苦労を2年目の飛躍につなげ、来季こそは頂点に立つ。
文=藤井雅彦
一方で、失点の多さも顕著だった。総失点数はリーグワースト3位の「56」。これは優勝した川崎フロンターレ(27失点)の実に2倍以上で、昨季の36失点と比較してもその多さがうかがい知れる。こだわりのクリーンシート(無失点試合)もわずか7試合にとどまり、「堅守の横浜F・マリノス」というイメージは完全に過去のものとなった。
ポステコグルー監督はいかなる状況でも「アクション」の姿勢を貫いた。システムは4バックを基本にしながらオプションとして3バックも併用したが、いずれの場合でも自陣からのビルドアップで丁寧にボールをつなぐスタンスは不変だった。チームで唯一全試合にフルタイム出場したGK飯倉大樹が攻撃の第一歩となり、徹底的にショートパスをつないでゴールを目指した。
新たなスタイルはシーズン序盤こそ選手たちに迷いや戸惑いを生じさせたが、日々の鍛練の賜物か、夏以降はスムーズなポゼッションが実現できるようになった。両サイドバックがインサイド寄りにポジションを取る特徴的な動きも、あくまで戦法の一つに過ぎない。とにかくピッチにいる全員が空いているスペースを見つけて動き回る。それを自然体でできるようになった。
課題はそのパフォーマンスを結果につなげていく作業だろう。ビルドアップ時のポジショニングやクロスボール中心のゴールパターンは、良くも悪くも定型化していて対策は練られやすい。より多くの得点や勝ち点を積み上げるためには、相手を凌駕する精度や個の能力が必要になる。
「自分たちがやることは決まっている。だから相手はリアクションしてくる。その次を考えないといけない時期にきている」という飯倉の言葉にも一考の余地がある。力で上回れない場面で、二の矢、三の矢を用意しておくにこしたことはない。年間を通して一本調子だった感は否めず、相手にしてみれば対応は難しくなかったはずだ。来季に向けた補強と並行して、状況に応じた臨機応変さや柔軟性を持ち合わせる作業が必要だろう。
最終節の翌日、黒澤良二社長は「新しい取り組みの中で、人々に感動や笑顔を与えるサッカーをやるのは簡単ではないし、一朝一夕にはできない」と指揮官への理解を示し、来季もポステコグルー監督にチームの指揮を託すことを明言した。そして同時に「結果を求めたい」と2年目への期待も口にした。
アタッキングフットボールの完成は道半ば。その歩みの先にどんな結果が待っているかは分からないが、道を引き返すことに意味はない。1年目の苦労を2年目の飛躍につなげ、来季こそは頂点に立つ。
文=藤井雅彦
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