4年目の悲願達成。SFL王者獲得の宮田莉朋「今度はSFでチャンピオンを獲れるようになりたい」
12月6日、三重県の鈴鹿サーキットで開催された全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権第14戦の決勝レースで、ポール・トゥ・ウインを飾り2020年のチャンピオンを獲得した宮田莉朋(カローラ中京 Kuo TOM’S 320)が、レース後の記者会見でタイトル獲得の喜びを語った。
1999年8月10日生まれの宮田は、全日本カートでタイトルを獲得し、2015年にFIA-F4で四輪デビュー。2016年には全日本カート、FIA-F4で二冠を得ると、2017年にFIA-F4と並行して全日本F3選手権にデビュー。2017年にはFIA-F4では連覇を遂げたが、F3ではなかなか勝利には手が届かず、2018年にようやく初勝利を飾った。
全日本F3での3年目となる2019年はタイトルを本命視されていたが、いまや良き親友となったサッシャ・フェネストラズとの骨肉のタイトル争いの末、チャンピオンを獲り逃してしまう。宮田自身が「今年でもう“4年生”ですから」とこぼしていたように、2020年はチャンピオンを確実に獲り、すでに速さをみせている上のカテゴリーに上がることが至上命題だった。
そんななか、同い年のライバルである阪口晴南が宮田の前に立ちふさがることになるが、2020年の宮田は持ち前の速さに加え、強さも発揮。鈴鹿ラウンドでは、第13戦にまさかのスピン、コースオフがあるなど、鈴鹿ではタイトルは決まらないのではないか……とも思われたが、プレッシャーがかかる第14戦をしっかりと走り抜き優勝。見事今季のチャンピオンを決めた。
「チャンピオンを獲ることができて、本当にホッとしています。毎年『チャンピオンを獲ってこい』と言われるのですが、今年は自信がありませんでした」と宮田はレース後に語った。
「新型コロナウイルスの影響もあり、テストができていませんでしたから。新しいクルマ(ダラーラ320)になって、どういう風に動くのかもまったく分からない状況でしたし、8月の公式テストまで一度も乗れずに過ごしていました」
「ライバルたちがテストをしているという情報はかなりあったので、昨年よりももっと厳しいシーズンになるんじゃないかと予想していました。特に阪口選手のチームは、海外で速いモトパークと連携をとっているというのも知っていましたから、僕らにはデータがなさすぎると思って、辛いレースが続くだろうと考えていました」
しかし、第1ラウンドのもてぎでフルマークを獲得し波に乗ると、その後も3レースの週末には2勝ずつを獲得。チャンピオン争いを優位に運んでいく。「いざ開幕してみると、予想以上に僕らのパフォーマンスが高かったというより、逆に情報の割にまわりと離れていないな、という印象でした。昨年、スーパーフォーミュラのルーキーテストでHALO付きのクルマに乗っていたので、その動きはだいたい想定できていましたから、あとはスーパーフォーミュラ・ライツとSFの違いをしっかりエンジニアに伝えたりしました。そういった部分で、開幕大会のもてぎは順調にフルマークができたなという印象です」と宮田は振り返る。
「ただ、開幕前の不安が払しょくされることは一切なかったです。個人的な見解ですが、カローラ中京 Kuo TEAM TOM’Sのマシンの良さはメカニカルグリップが高いところで、夏場とかだと良いのですが、冬場だとライバル勢も状況が良くなり、その良い部分のマージンが薄くなっていく印象だったので、カレンダーが変わってこの時期に最終戦を迎えることになり、どんどん自信がなくなっていく一方でした」
ふだんから不安を口にすることも多い宮田だが、レースではきっちりとまとめてくるところが彼の強さでもある。第13戦でのリタイアの後も「『責められるかな』と思っていたら、逆に『珍しいな』と言われて。焦りは感じていないつもりでしたが、気持ちのどこかでシリーズポイントを考えていたのだろうなと思いました」と冷静に分析し、あくまで勝ちを積み重ねることを意識し、第14戦を制した。
4年間の大きな経験と、初代スーパーフォーミュラ・ライツ王者の称号を手にした宮田は、すでに来季の飛躍を見据える。「自分だけでは決められないことですが」と断りながらも、「今シーズンはダブルヘッダーで2回スーパーフォーミュラに参戦させてもらえましたが、特にオートポリスではタフなスケジュールの中でセッションのトップタイムを獲ったり、速さをみせることはできたと思います」とSF参戦を熱望する。
「チャンピオンを獲ったからにはスーパーフォーミュラに上がって、今度はスーパーフォーミュラでチャンピオンを獲れるようになりたいし、欲を言えば世界に行きたい気持ちもあります。WECだったり、小さい頃からF1のチャンピオンになることも夢です。自分でももっとアピールして、強くて速いドライバーになっていきたいです」
記者会見が終わった後も、「家に帰って(ドライビング)シミュレーターをやりたいです」と宮田は笑顔で語った。走ることにあくまでストイックな若者が掴んだ栄冠を手に、この先どんな飛躍をみせてくれるだろうか。期待が止むことはない。
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