日本でのキャリアを切望するラウル・ハイマンとイゴール・フラガ「いつ入国できるかを常にチェックしていた」
12月7〜8日に鈴鹿サーキットで行われた全日本スーパーフォーミュラ選手権の合同/ルーキーテスト。ここ数年続いていたコロナ禍に伴う入国の水際対策も緩和され、外国人ドライバーのテスト参加も増えている今回だが、そのなかでもフォーミュラ・リージョナル・アメリカズ(FRA)でチャンピオンを獲得し、スーパーフォーミュラへ挑戦するスカラシップを獲得したラウル・ハイマンにとっては、夢が叶った2日間だという。
イギリス出身で26歳のハイマンは母国のイギリスやヨーロッパを舞台としてレース活動を展開。ヨーロピアンF3やGP3などにも参戦していた。実は2019年の終わりに、鈴鹿サーキットで開催された全日本F3選手権のテストにB-Max Racingから参加したのを機に、日本でのレース活動も視野に入れていた。
「2019年の終わりにF3のテストで鈴鹿に来たことがあるけど、そこで素晴らしい経験をすることができて、2020年シーズンはスーパーフォーミュラ・ライツに参戦したいと思って準備をしていた」とハイマン。しかし、直後に新型コロナウイルスのパンデミックが始まってしまい、日本でのレース参戦も見送られることになった。
「それでも鈴鹿でのF3テストの経験は心に深く刻まれ続けていたし、日本でレースキャリアを重ねたい思いは強かった。だから、この3年間は毎日朝起きると、必ず日本の入国に関する情報サイトをみて、いつになったら入国できる可能性が出てくるのかを常にチェックしていたんだ」
しかし結果的に来日は叶わず、2020年と2021年を棒に振るかたちとなったハイマンだが、2022年はFRA参戦のチャンスをつかみ、別のアプローチを試みた。
「2020年と2021年にそれが叶わず、レースもできなかったのだが、2022年はFRAの参戦チャンスを手にすることができた。でも、このカテゴリーに参戦した一番の理由は、チャンピオンになって、スーパーフォーミュラにつながるスカラシップを受けるためだった。ここに至るまで時間はすごくかかったけど、このチャンスは絶対に逃したくないと思っていた。この2年半のブランクを早く取り戻すことができるようにベストを尽くしたいと考えていた」とハイマン。
スカラシップの条件であるシリーズチャンピオンを獲得し、スーパーフォーミュラのルーキーテスト参加への切符をつかみ取った。
そんななか、初めて乗ったスーパーフォーミュラのマシンは驚きの連続だったようで「僕が今まで走ったクルマのなかでも、一番速くてパフォーマンスのあるクルマだ。FRAの車両と比べてもクルマのパワーは2倍はあるし、ダウンフォースも3〜4倍はあるということに驚いた」と笑顔で話すハイマン。
来季となる2023年シーズンは当初の予定どおり日本でのレース参戦を目指していく方向のようで「来季の目標はもちろんスーパーフォーミュラに参戦することだ。日本でレースをする場合、スーパーフォーミュラと並行してスーパーGTに参戦するドライバーもいるので、そのチャンスも得られれば最高だと思っている。ただ、今はスーパーフォーミュラに出るためのスカラシップとして来ているので、こちらのカテゴリーを優先したいと考えている」と語った。
■グランツーリスモ王者のフラガが、ついにSFの実車をドライブ
今回はTEAM IMPULからテストに参加しているイゴール・フラガは、2018年にFIAグランツーリスモ・チャンピオンシップのネイションズカップでチャンピオンとなるなど、eモータースポーツ界で大活躍。ここ数年は、リアルなモータースポーツへの参戦機会も増え、現在は活動拠点を日本に移している。
日系ブラジル人で、12歳までは日本で育ったこともあり、日本語での会話もまったく問題がないフラガだが、「ネイションズカップで優勝したことで、グランツーリスモのサポートを受け、ヨーロッパのフォーミュラ・リージョナルなどに参加できて、とても良い経験を積むことができました。ですが、2020年はコロナ禍の影響もあって(実車の走行は)2年ほどブランクが空いてしまいました」と、彼もコロナ禍の影響を受けて思うようにレース活動ができなかったという。
そんななか、スーパーフォーミュラのeモータースポーツアンバサダーになったことで日本での活動チャンスも増え、2度のスーパーフォーミュラ・ライツでのテストを経て、今回は国内トップフォーミュラに初挑戦した。
「スーパーフォーミュラの車両はパワーがものすごくありますし、ダウンフォースやグリップも高いので、その部分に対して(ドライビングで)改良しないといけない点はありますけど、この2日間を通じて徐々にステップアップできていると思います。このチャンスを与えてくださったTEAM IMPULさんに感謝しています」とフラガ。
バーチャルでは数え切れないほど走り込んでいる鈴鹿サーキットだが、やはりリアルで走ると違いは多くあるとのこと。
「リアルだと、コースの高低差やコーナーのバンクなどを感じることができますし、コーナリングではとてつもないGフォースがかかったりと、そういった(バーチャルとは違う)感覚がたくさんくるのですごく楽しいです。鈴鹿サーキットを走れる機会をいただけてすごく嬉しいです。バーチャルでもリアルでも、(鈴鹿サーキットは)すごくチャレンジングなコースで、ドライバーとしてはすごく面白いコースだと思います」と、彼自身の今後に向けても今回のルーキーテストは貴重な経験となったようだ。
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