水戸GMの西村卓朗氏が伝える「プロになるために必要なもの」…『DR.SENOBIRU』のエメトレが主催するトークイベントに登壇
サッカーキング2022年12月14日(水)18時0分
12日、成長期サポートサプリメント『DR.SENOBIRU』を販売する株式会社エメトレが、「プロになるために必要なことと強豪大学に入学する方法」と題し、トークイベントを行った。
イベントにはサッカー・バスケットボール・野球の各界で活躍し、現在は後進育成・指導をしているゲストが招かれた。サッカー界からは水戸ホーリーホックのゼネラルマネージャーを務める西村卓朗氏が登壇。バスケットボール界からはアルバルク東京のゼネラルマネージャーを経て、2021年より京都ハンナリーズのゼネラルマネージャーを務める渡邉拓馬氏、野球界からは2003年に阪神タイガースに入団し、2017年に2000本安打を達成するなど非凡な実績を残した鳥谷敬氏が登壇した。
プロに続く道の選び方
「それぞれの競技を始めたきっかけ」、「プロを意識し始めたのはいつ頃からか」、「進学する中学、高校をどう決めたか」といったテーマからトークが始まり、3人のゲストは各々の経験談を伝えていく。
サッカー界においては、高校時代にサッカー部でプレーするという選択肢と、Jリーグクラブの下部組織でプレーするという選択肢がある。この決断をどう下すべきかについて、西村氏はこう話す。
「昔は高校サッカーからプロに行く人数のほうが圧倒的に多かったんですが、今はもうそれが逆転しています。ですから、どちらを選ぶべきかについては、今でも論争になります。中学、高校、そして大学も含めて、『場所が変わる』というのはすごく大きいと思います。それによって鍛えられることや育まれるものもあるので。親御さんがお子さんの身体的、精神的な発育の状態を見ながら一貫指導を選ぶのか、場所を変えるべきなのかを見極める。これが一つのポイントになると思います」
一方、鳥谷氏は聖望学園高校を卒業するにあたり、いくつかの選択肢の中から早稲田大学への進学を選んだ理由をこう語る。
「一番は父親です。父は高卒でサラリーマンをしていて、そこで給与面などに歯がゆさや壁を感じることがあったそうなんです。それで、『借金をしてでも大学に行ったほうがいい』という父親の判断で大学に行きました。実際に大学に行って感じたのは、高校であれば学校が終わってから練習をして……というふうに、練習をする時間が(部員全員)一緒なんですね。それは社会人もそう。でも大学に行くと、『時間をどう使うか』をうまく考えられた人がうまくなっていく。強制される時間が少なくなるので、時間の使い方、見つけ方が身につくんです。それはプロになってからも通用するものです」
大学でスポーツをするということ
この日の登壇者は国士舘大学(西村氏)、拓殖大学(渡邉氏)、早稲田大学(鳥谷氏)と、3人とも大学からプロの道へと進んだ経歴を持つ。鳥谷氏が語った「時間の使い方」という点以外にも、大学へ進むことで得られることは多いというのは、3人に共通する見解だ。
渡邉氏は、自身が大学に在学していた当時と、現在の大学生が置かれている環境には大きな違いがあると言う。
「今一番注目されているのは、『自分で考えることがパフォーマンスにつながる』ということです。僕たちの時代は、練習でも試合でも、コーチに言われたことしかできなかった。その後、いざ大学で解放されると何もできなくなってしまうということが多かったんです。海外の育成方法を見ると、『選手に考えさせる』ことを重視しているんです。日本でもそういったやり方が増えてきています」
そうした指導方法の変化によって、かつてとは違うタイプの選手が増えてきていると渡邉氏は続ける。
「アイデアや発想が、自分たちとは全く違う選手が多くなってきました。サイズが大きい選手でも3Pを打ったり、ドリブルがうまかったり。(自分たちの時代とは)全く規格が違うので、変わってきているなと感じます」
毎年プロ選手を輩出する早稲田大学でプレーした鳥谷氏は、そうした環境に身を置くこと自体に価値があると語る。
「普段の生活でもそうですけど、お酒を飲む人の周りにはお酒を飲む人が多いし、タバコもそう。自分を変えたいと思うのであれば、強豪校に行くというのは大事です。プロになる、日本代表に入るという意識を持った人たちの中に入っていくと、自然と自分もそうなっていく。高校時代は一人だけ頑張っていると、恥ずかしい……ではないですけど、頑張りすぎているという目で見られることがあります。でも、強豪校に行くと皆がそうなので、やる気がない人が逆に『恥ずかしい側』に変わってくるんです。人間は弱いものなので、楽なほうに流れてしまうんですけど、人の目や環境を使ってどう自分を律していくかは重要になってきます」
プロ選手に必要なもの
西村氏と渡邉氏は、プロクラブのGMとして選手の獲得に関わることも多い。選手のどんな部分に注目して獲得を決めるかについて、2人はこう話す。
「水戸ではだいたい選手に練習参加してもらうんですが、パッと見て技術的なレベルやフィジカルの部分はある程度わかります。チームに入ってきたときに周囲との人間関係をどう作るか、グループの中でどういった行動を取っているか、どんな言葉をかけているか、どんな表情でプレーしているか、そのあたりはかなり見ます。つまり、人間関係をどう構築していくのか、ですね」(西村氏)
「自分がミスしたときのリアクション、チームメートがミスしたときのリアクション、タイムアウト中にどんな行動をしているか。コミュニケーションの部分でどんな態度を取っているかは非常に重要視していますね」(渡邉氏)
サッカーとバスケットボールは、一度試合が始まってしまうと、監督やコーチの指示を直接選手に伝えるタイミングが限られている。この競技特性が「周囲とのコミュニケーション」を重視することにつながっているという。
「サッカーは『動のスポーツ』と言いますか、動きながら選手たちが考えて決断する機会が多い。試合中にフォーメーションが変わったり、今回のワールドカップでもあったように追う高さを変えたり。そういうことを瞬間瞬間で決断して、それをグループに共有できる。この“主張”と“傾聴”の部分は重要な要素になってくると思います」(西村氏)
「気づかいや思いやりが非常に大事。バスケにはナンバープレーもありますが、1、2、3クォーターまではそれでいいんです。でも、4クォーターはお互いにアジャストするので、出ている選手のセンスや反応が重要なんです。そこで『もう少しスペースを取ろう』とか『ここをサポートしてあげよう』という思いがある選手のいるチームが強い。これはスポーツだけではなく、一般社会でも通じることだと思います」
こうして、プロとして活躍するだけでなく、その後もクラブ運営や後進の育成に関わる3人の経験談を交えながらトークイベントは進行していった。プロを目指す子供たち、そしてその保護者にとって、様々な発見や今後の決断を助けるヒントが詰まったイベントになったはずだ。
イベントにはサッカー・バスケットボール・野球の各界で活躍し、現在は後進育成・指導をしているゲストが招かれた。サッカー界からは水戸ホーリーホックのゼネラルマネージャーを務める西村卓朗氏が登壇。バスケットボール界からはアルバルク東京のゼネラルマネージャーを経て、2021年より京都ハンナリーズのゼネラルマネージャーを務める渡邉拓馬氏、野球界からは2003年に阪神タイガースに入団し、2017年に2000本安打を達成するなど非凡な実績を残した鳥谷敬氏が登壇した。
プロに続く道の選び方
「それぞれの競技を始めたきっかけ」、「プロを意識し始めたのはいつ頃からか」、「進学する中学、高校をどう決めたか」といったテーマからトークが始まり、3人のゲストは各々の経験談を伝えていく。
サッカー界においては、高校時代にサッカー部でプレーするという選択肢と、Jリーグクラブの下部組織でプレーするという選択肢がある。この決断をどう下すべきかについて、西村氏はこう話す。
「昔は高校サッカーからプロに行く人数のほうが圧倒的に多かったんですが、今はもうそれが逆転しています。ですから、どちらを選ぶべきかについては、今でも論争になります。中学、高校、そして大学も含めて、『場所が変わる』というのはすごく大きいと思います。それによって鍛えられることや育まれるものもあるので。親御さんがお子さんの身体的、精神的な発育の状態を見ながら一貫指導を選ぶのか、場所を変えるべきなのかを見極める。これが一つのポイントになると思います」
一方、鳥谷氏は聖望学園高校を卒業するにあたり、いくつかの選択肢の中から早稲田大学への進学を選んだ理由をこう語る。
「一番は父親です。父は高卒でサラリーマンをしていて、そこで給与面などに歯がゆさや壁を感じることがあったそうなんです。それで、『借金をしてでも大学に行ったほうがいい』という父親の判断で大学に行きました。実際に大学に行って感じたのは、高校であれば学校が終わってから練習をして……というふうに、練習をする時間が(部員全員)一緒なんですね。それは社会人もそう。でも大学に行くと、『時間をどう使うか』をうまく考えられた人がうまくなっていく。強制される時間が少なくなるので、時間の使い方、見つけ方が身につくんです。それはプロになってからも通用するものです」
大学でスポーツをするということ
この日の登壇者は国士舘大学(西村氏)、拓殖大学(渡邉氏)、早稲田大学(鳥谷氏)と、3人とも大学からプロの道へと進んだ経歴を持つ。鳥谷氏が語った「時間の使い方」という点以外にも、大学へ進むことで得られることは多いというのは、3人に共通する見解だ。
渡邉氏は、自身が大学に在学していた当時と、現在の大学生が置かれている環境には大きな違いがあると言う。
「今一番注目されているのは、『自分で考えることがパフォーマンスにつながる』ということです。僕たちの時代は、練習でも試合でも、コーチに言われたことしかできなかった。その後、いざ大学で解放されると何もできなくなってしまうということが多かったんです。海外の育成方法を見ると、『選手に考えさせる』ことを重視しているんです。日本でもそういったやり方が増えてきています」
そうした指導方法の変化によって、かつてとは違うタイプの選手が増えてきていると渡邉氏は続ける。
「アイデアや発想が、自分たちとは全く違う選手が多くなってきました。サイズが大きい選手でも3Pを打ったり、ドリブルがうまかったり。(自分たちの時代とは)全く規格が違うので、変わってきているなと感じます」
毎年プロ選手を輩出する早稲田大学でプレーした鳥谷氏は、そうした環境に身を置くこと自体に価値があると語る。
「普段の生活でもそうですけど、お酒を飲む人の周りにはお酒を飲む人が多いし、タバコもそう。自分を変えたいと思うのであれば、強豪校に行くというのは大事です。プロになる、日本代表に入るという意識を持った人たちの中に入っていくと、自然と自分もそうなっていく。高校時代は一人だけ頑張っていると、恥ずかしい……ではないですけど、頑張りすぎているという目で見られることがあります。でも、強豪校に行くと皆がそうなので、やる気がない人が逆に『恥ずかしい側』に変わってくるんです。人間は弱いものなので、楽なほうに流れてしまうんですけど、人の目や環境を使ってどう自分を律していくかは重要になってきます」
プロ選手に必要なもの
西村氏と渡邉氏は、プロクラブのGMとして選手の獲得に関わることも多い。選手のどんな部分に注目して獲得を決めるかについて、2人はこう話す。
「水戸ではだいたい選手に練習参加してもらうんですが、パッと見て技術的なレベルやフィジカルの部分はある程度わかります。チームに入ってきたときに周囲との人間関係をどう作るか、グループの中でどういった行動を取っているか、どんな言葉をかけているか、どんな表情でプレーしているか、そのあたりはかなり見ます。つまり、人間関係をどう構築していくのか、ですね」(西村氏)
「自分がミスしたときのリアクション、チームメートがミスしたときのリアクション、タイムアウト中にどんな行動をしているか。コミュニケーションの部分でどんな態度を取っているかは非常に重要視していますね」(渡邉氏)
サッカーとバスケットボールは、一度試合が始まってしまうと、監督やコーチの指示を直接選手に伝えるタイミングが限られている。この競技特性が「周囲とのコミュニケーション」を重視することにつながっているという。
「サッカーは『動のスポーツ』と言いますか、動きながら選手たちが考えて決断する機会が多い。試合中にフォーメーションが変わったり、今回のワールドカップでもあったように追う高さを変えたり。そういうことを瞬間瞬間で決断して、それをグループに共有できる。この“主張”と“傾聴”の部分は重要な要素になってくると思います」(西村氏)
「気づかいや思いやりが非常に大事。バスケにはナンバープレーもありますが、1、2、3クォーターまではそれでいいんです。でも、4クォーターはお互いにアジャストするので、出ている選手のセンスや反応が重要なんです。そこで『もう少しスペースを取ろう』とか『ここをサポートしてあげよう』という思いがある選手のいるチームが強い。これはスポーツだけではなく、一般社会でも通じることだと思います」
こうして、プロとして活躍するだけでなく、その後もクラブ運営や後進の育成に関わる3人の経験談を交えながらトークイベントは進行していった。プロを目指す子供たち、そしてその保護者にとって、様々な発見や今後の決断を助けるヒントが詰まったイベントになったはずだ。
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