【コラム】不完全燃焼で終わった日韓戦…井手口陽介が語る“自分に足りない部分”とは
サッカーキング2017年12月17日(日)11時18分
韓国戦に先発出場した井手口 [写真]=VCG via Getty Images
2013年韓国大会以来の東アジアカップ(E-1選手権)制覇に王手をかけていた日本。16日の韓国戦(東京・味の素)に引き分け以上で優勝という優位な状況で大一番を迎えた。ヴァイッド・ハリルホジッチ監督が送り出したスタメンもGK中村航輔(柏レイソル)、昌子源(鹿島アントラーズ)、小林悠(川崎フロンターレ)ら計算できる面々ばかり。とりわけ中盤は、代表キャップ93試合目の今野泰幸、10月以降コンスタントに呼ばれている倉田秋、2017年代表戦11試合出場2ゴールの井手口陽介というガンバ大阪トリオが陣取っていて、連携面は全く問題ないと思われた。
開始早々に伊東純也(柏)がPKをゲットし、小林が先制点を挙げるという好スタートを切った日本だが、そこからリズムがおかしくなる。受けに回ったところを韓国は見逃さず、一方的に攻め込まれ、ボールを奪えなくなる。196cmの長身FWキム・シンウク(全北現代)の同点弾が生まれた13分のシーンでは、元アルビレックス新潟の左サイドバック、キム・ジンス(全北現代)に対する伊東と井手口の寄せが甘くなり、絶妙のクロスを入れられてしまう。23分には左サイドバック・車屋紳太郎(川崎)が与えたファウルから元ヴィッセル神戸のチョン・ウヨン(重慶)に芸術的FKを決められ、35分にもキム・シンウクに3点目を奪われる。少し離れた位置でボールウォッチャーになっていた井手口は思い切ってカバーに入ることができなかった。
「最初の立ち上がり10分から(守備が)はまらんって分かったので、そこから戦術を変えて相手の攻撃に合わせることがなかなかできなかった。ブロックを引いてやるとか、もっと前から行くであったりしないといけなかったのに、どっちにしろ中途半端だった。意思統一はしてたんですけど、なかなかうまくいかなかったですね」と背番号2をつける21歳のダイナモは苛立ちを隠せない。韓国に研究され、徹底マークされたとはいえ、この日の前半はあまりにも消える時間が長すぎた。同じ東京・味の素スタジアムで行われた今年6月のシリア戦で初キャップを飾り、短期間で一気に日本代表の主力へと駆け上がった男はこれまでにない大きな壁にぶつかった。
それでも、気を取り直して迎えた後半。井手口は一矢報いるべく、開始6分に右やや遠めの位置からミドルを狙った。が、シュートは力なく相手GKにキャッチされる。目に見える攻撃に絡んだシーンはこれくらい。過密日程の中、3試合連続出場したせいか、この時点ではすでにダイナミックさが失われ、得意のボール奪取にも出ていけない状態に陥っていた。指揮官も我慢できず、後半21分に同い年の三竿健斗(鹿島)とスイッチ。最終的に背番号2は1-4という日韓戦の屈辱的大敗をベンチで見守ることになった。
「11月の欧州遠征(ブラジル&ベルギー)でも差は感じたけど、今回の相手は組織的でしっかりしたチームだった。ああいうチームは真ん中だけじゃ崩せないと思う。監督が要求している『前、前』というのを素直にやりすぎていた。ピッチ内では自分たちでもっと自由にやっていい。裏に抜けるのは悪いことじゃないけど、それプラス、ボールを持つ時間は絶対に大事だと思う。そういうメリハリをつけながらプレーしたらよかったですね」と語る若武者は自らの応用力と柔軟性の不足を痛感した様子。ハリルホジッチ監督の速い攻めが機能しない場合は、自分たちで解決策を見出さなければいけないのは当然のこと。今の井手口にはそういう力がまだまだ足りない。彼は厳しい現実を突き付けられた。
今回のE-1選手権に挑んだ日本代表のうち、ロシア当確と言われたのは井手口1人。だからこそ、本人も「プレーで引っ張らないとあかん」という責任感を覚えながらピッチに立っていた。9日の初戦・北朝鮮戦の劇的決勝弾で日本を窮地から救い、12日の第2戦・中国戦では大島僚太(川崎)の負傷退場の穴を確実に埋めるなど、ハリルホジッチ監督の期待通りの的確な仕事を見せていただけに、韓国戦でもやってくれるという期待は高かった。が、チーム全体がバランスを崩し、ギクシャクしていく中、背番号2は修正力を示せなかった。同じ中盤に年長の今野と倉田がいた分、どこかで依存してしまった部分があったのかもしれないが、欧州組を含めたベストメンバーが揃った時も試合に出ている選手としては、受け身のままではいけない。かつての中田英寿のように周りを動かす影響力を身につけなければ、ロシアでは戦えないだろう。
ワールドカップ本大会まで6カ月。時間は非常に短い。けれども、今年の半年間で代表で成り上がった井手口であれば、劇的な変貌を遂げられるはずだ。盛んに報道されているイングランド2部の名門・リーズへの移籍話について本人は「自分としては高いレベルでやらないといけないとは思いますけど、そこはあんまり分かんない」と言葉を濁したが、世界と互角に戦いたいと思うなら、リスクを冒して出ていくしかない。
11月の欧州遠征でぬかるんだピッチに足を取られて滑ったり、転んだりしていた場面が多かったり、ケヴィン・デ・ブライネ(マンチェスター・C)のような選手に一瞬で振り切られたりしていたのも、環境やレベルに慣れていないから。ドイツに移籍したばかりの頃、浅野拓磨(シュトットガルト)も同じような戸惑いを吐露したことがあった。井手口もそれを自覚し、自分を変えるためにもっともっと貪欲にならなければならないだろう。
代表キャリア最大の不完全燃焼感を味わったダイナモがこの悔しい経験をどう今後に生かしていくのか。ここで奮起しなければ未来はない。強い危機感を持って、次なる一歩を踏み出してほしい。
文=元川悦子
開始早々に伊東純也(柏)がPKをゲットし、小林が先制点を挙げるという好スタートを切った日本だが、そこからリズムがおかしくなる。受けに回ったところを韓国は見逃さず、一方的に攻め込まれ、ボールを奪えなくなる。196cmの長身FWキム・シンウク(全北現代)の同点弾が生まれた13分のシーンでは、元アルビレックス新潟の左サイドバック、キム・ジンス(全北現代)に対する伊東と井手口の寄せが甘くなり、絶妙のクロスを入れられてしまう。23分には左サイドバック・車屋紳太郎(川崎)が与えたファウルから元ヴィッセル神戸のチョン・ウヨン(重慶)に芸術的FKを決められ、35分にもキム・シンウクに3点目を奪われる。少し離れた位置でボールウォッチャーになっていた井手口は思い切ってカバーに入ることができなかった。
「最初の立ち上がり10分から(守備が)はまらんって分かったので、そこから戦術を変えて相手の攻撃に合わせることがなかなかできなかった。ブロックを引いてやるとか、もっと前から行くであったりしないといけなかったのに、どっちにしろ中途半端だった。意思統一はしてたんですけど、なかなかうまくいかなかったですね」と背番号2をつける21歳のダイナモは苛立ちを隠せない。韓国に研究され、徹底マークされたとはいえ、この日の前半はあまりにも消える時間が長すぎた。同じ東京・味の素スタジアムで行われた今年6月のシリア戦で初キャップを飾り、短期間で一気に日本代表の主力へと駆け上がった男はこれまでにない大きな壁にぶつかった。
それでも、気を取り直して迎えた後半。井手口は一矢報いるべく、開始6分に右やや遠めの位置からミドルを狙った。が、シュートは力なく相手GKにキャッチされる。目に見える攻撃に絡んだシーンはこれくらい。過密日程の中、3試合連続出場したせいか、この時点ではすでにダイナミックさが失われ、得意のボール奪取にも出ていけない状態に陥っていた。指揮官も我慢できず、後半21分に同い年の三竿健斗(鹿島)とスイッチ。最終的に背番号2は1-4という日韓戦の屈辱的大敗をベンチで見守ることになった。
「11月の欧州遠征(ブラジル&ベルギー)でも差は感じたけど、今回の相手は組織的でしっかりしたチームだった。ああいうチームは真ん中だけじゃ崩せないと思う。監督が要求している『前、前』というのを素直にやりすぎていた。ピッチ内では自分たちでもっと自由にやっていい。裏に抜けるのは悪いことじゃないけど、それプラス、ボールを持つ時間は絶対に大事だと思う。そういうメリハリをつけながらプレーしたらよかったですね」と語る若武者は自らの応用力と柔軟性の不足を痛感した様子。ハリルホジッチ監督の速い攻めが機能しない場合は、自分たちで解決策を見出さなければいけないのは当然のこと。今の井手口にはそういう力がまだまだ足りない。彼は厳しい現実を突き付けられた。
今回のE-1選手権に挑んだ日本代表のうち、ロシア当確と言われたのは井手口1人。だからこそ、本人も「プレーで引っ張らないとあかん」という責任感を覚えながらピッチに立っていた。9日の初戦・北朝鮮戦の劇的決勝弾で日本を窮地から救い、12日の第2戦・中国戦では大島僚太(川崎)の負傷退場の穴を確実に埋めるなど、ハリルホジッチ監督の期待通りの的確な仕事を見せていただけに、韓国戦でもやってくれるという期待は高かった。が、チーム全体がバランスを崩し、ギクシャクしていく中、背番号2は修正力を示せなかった。同じ中盤に年長の今野と倉田がいた分、どこかで依存してしまった部分があったのかもしれないが、欧州組を含めたベストメンバーが揃った時も試合に出ている選手としては、受け身のままではいけない。かつての中田英寿のように周りを動かす影響力を身につけなければ、ロシアでは戦えないだろう。
ワールドカップ本大会まで6カ月。時間は非常に短い。けれども、今年の半年間で代表で成り上がった井手口であれば、劇的な変貌を遂げられるはずだ。盛んに報道されているイングランド2部の名門・リーズへの移籍話について本人は「自分としては高いレベルでやらないといけないとは思いますけど、そこはあんまり分かんない」と言葉を濁したが、世界と互角に戦いたいと思うなら、リスクを冒して出ていくしかない。
11月の欧州遠征でぬかるんだピッチに足を取られて滑ったり、転んだりしていた場面が多かったり、ケヴィン・デ・ブライネ(マンチェスター・C)のような選手に一瞬で振り切られたりしていたのも、環境やレベルに慣れていないから。ドイツに移籍したばかりの頃、浅野拓磨(シュトットガルト)も同じような戸惑いを吐露したことがあった。井手口もそれを自覚し、自分を変えるためにもっともっと貪欲にならなければならないだろう。
代表キャリア最大の不完全燃焼感を味わったダイナモがこの悔しい経験をどう今後に生かしていくのか。ここで奮起しなければ未来はない。強い危機感を持って、次なる一歩を踏み出してほしい。
文=元川悦子
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