2年連続選手権出場の飯塚、苦しみ乗り越えて得た一体感「強豪に勝って街に活気を」
サッカーキング2023年12月25日(月)20時26分
2年連続2回目の選手権出場となる飯塚 [写真]=IZUKA FC
2015年から本格強化を始め、7年目にインターハイ初出場。昨年は福岡県勢の最多選手権出場回数を誇る東福岡を倒し、悲願の初出場を果たしたのが飯塚だ。MF村越凱光(現:松本山雅FC)をはじめとしたJリーガーや、DF藤井葉大(3年、ファジアーノ岡山加入内定)のような世代別代表に選ばれる選手を輩出し、チームの強化は着実に進んでいるが、世間からの新興勢力という見られ方は変わらなかったという。
「選手権初出場はマグレと言われていたから、今年は絶対に行きたかった。より圧倒的して勝てればマグレとは言われない」。中辻喜敬監督の言葉通り、2年連続での選手権出場は目標ではなく、チームが多くの人から認められるためのノルマだったと言っても過言ではない。
こだわるのは運動量とスピードを高めた強度の高いサッカーだ。「0.01秒速くなれば、15センチが埋まる。相手との距離を15センチ詰められたらボールが指先に触れる。30センチ詰めることができれば奪える」(中辻監督)と曜日ごとにフィジカルトレーニングを設定。1年かけて選手の能力を伸ばすことで、昨年以上のチームを目指してきた。
だが、強化は思い通りに進まない。ゴールデンウィークに負傷し、半年以上の戦線離脱を強いられたDF坂本海凪太(3年)を筆頭にけが人が相次いだ。春と夏の長期休みを利用し、ベースアップに取り組んだが、春に鍛えきれていない分、夏に追い込んでも思い通りの成果が上がらない。「夏にフィジカル測定をすると、このままでは(選手権予選の)決勝で食われるという数値だった。今年はけがに泣かされたシーズンだった」(中辻監督)
チームの雰囲気も良好だったとは言い難い。主将の藤井はこう続ける。
「みんなの個が強くて自分の要求ばかり。試合中、喧嘩になることも多かった。夏までは各々が何をしたいのかあまり分からず、高円宮杯プリンスリーグも勝てる試合を逃していた」
ただ、苦しみながらも積み上げてきた努力は無駄ではない。強度の高い練習をしつつ、選手権に入ってからは選手のフィジカルとメンタルのピークを決勝に持っていけるよう微調整を加えながら練習を実施。大会の山場と見ていた準々決勝の東海大付属福岡戦で逆転勝利をおさめると、チームの勢いは加速していく。「選手権の頃は文句を言っている場合ではないとなっていた。いかに自分がチームのために貢献できるか、チームのために犠牲になれるかという考え方に自然と変わっていた」。藤井の言葉通り、選手の意識も大きく変化した。
決勝の東福岡戦はスコアこそ1-0で終わったが、選手は手応えを感じていたという。「一番進化を実感できたのは、選手権予選の決勝。昨年はあっさり勝てないというか、一戦一戦が山場という感じがした。今年も1試合1試合が山場で接戦だったが、気持ち的には心の余裕があった」(藤井)。
2度目の選手権は、絶対的王者である青森山田が初戦の相手だが、怯んだ様子は見られない。「僕らは飯塚という街全体の支えがあって、全国に行ける。青森山田という全国トップクラスの強豪に勝つことで感謝の気持ちを伝えて、街に活気を与えたい」と坂本は意気込む。
取材・文=森田将義
「選手権初出場はマグレと言われていたから、今年は絶対に行きたかった。より圧倒的して勝てればマグレとは言われない」。中辻喜敬監督の言葉通り、2年連続での選手権出場は目標ではなく、チームが多くの人から認められるためのノルマだったと言っても過言ではない。
こだわるのは運動量とスピードを高めた強度の高いサッカーだ。「0.01秒速くなれば、15センチが埋まる。相手との距離を15センチ詰められたらボールが指先に触れる。30センチ詰めることができれば奪える」(中辻監督)と曜日ごとにフィジカルトレーニングを設定。1年かけて選手の能力を伸ばすことで、昨年以上のチームを目指してきた。
だが、強化は思い通りに進まない。ゴールデンウィークに負傷し、半年以上の戦線離脱を強いられたDF坂本海凪太(3年)を筆頭にけが人が相次いだ。春と夏の長期休みを利用し、ベースアップに取り組んだが、春に鍛えきれていない分、夏に追い込んでも思い通りの成果が上がらない。「夏にフィジカル測定をすると、このままでは(選手権予選の)決勝で食われるという数値だった。今年はけがに泣かされたシーズンだった」(中辻監督)
チームの雰囲気も良好だったとは言い難い。主将の藤井はこう続ける。
「みんなの個が強くて自分の要求ばかり。試合中、喧嘩になることも多かった。夏までは各々が何をしたいのかあまり分からず、高円宮杯プリンスリーグも勝てる試合を逃していた」
ただ、苦しみながらも積み上げてきた努力は無駄ではない。強度の高い練習をしつつ、選手権に入ってからは選手のフィジカルとメンタルのピークを決勝に持っていけるよう微調整を加えながら練習を実施。大会の山場と見ていた準々決勝の東海大付属福岡戦で逆転勝利をおさめると、チームの勢いは加速していく。「選手権の頃は文句を言っている場合ではないとなっていた。いかに自分がチームのために貢献できるか、チームのために犠牲になれるかという考え方に自然と変わっていた」。藤井の言葉通り、選手の意識も大きく変化した。
決勝の東福岡戦はスコアこそ1-0で終わったが、選手は手応えを感じていたという。「一番進化を実感できたのは、選手権予選の決勝。昨年はあっさり勝てないというか、一戦一戦が山場という感じがした。今年も1試合1試合が山場で接戦だったが、気持ち的には心の余裕があった」(藤井)。
2度目の選手権は、絶対的王者である青森山田が初戦の相手だが、怯んだ様子は見られない。「僕らは飯塚という街全体の支えがあって、全国に行ける。青森山田という全国トップクラスの強豪に勝つことで感謝の気持ちを伝えて、街に活気を与えたい」と坂本は意気込む。
取材・文=森田将義
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