「この世界の片隅に」の聖地、呉市の旧海軍施設「青山クラブ」が全面保存へ
アニメ映画「この世界の片隅に」にも登場する広島県呉市内の旧海軍施設「青山クラブ」について、市が全面保存したい考えを市議会に伝えた。
全国から「聖地巡礼」するファンは多いといい、ネット上では歓迎の声が相次いでいる。
戦艦大和の乗組員らも家族との別れの場に使った「青山クラブ」
青山クラブは、旧海軍の下士官兵が利用する集会場として、戦前の1936年に建設された。地上3階建ての赤っぽいレンガ色の建物だ。戦艦大和の乗組員らも、家族との別れの場に利用するなどしたとされる。宿泊施設やボウリング場などを備えており、戦後は、海上自衛隊が利用していた。
最近まで一部が自衛隊の事務室になっていたが、老朽化のため17年から閉鎖されている。
16年に公開されたアニメ映画では、主人公のすずが広島から呉へ嫁入りし、青山クラブ付近で夫と待ち合わせたとの設定になっている。
青山クラブについて、市では、解体や一部保存、全面保存などの案を示して検討してきた。市民団体からは全面保存を求める要望が出ており、市も、その方向で検討することを決め、18年1月19日に市議会の総務委員会で説明した。
市の全面保存方針は、NHKがこの日朝に報じ、ツイッター上などで大きな話題になった。アニメファンらからは、「めでたい!」「地元や観光客に愛される魅力的な施設として再生して欲しい」などと歓迎の声が上がっている。
市の企画課にJタウンネットが19日に聞いたところでは、呉の歴史や文化、特産品などの情報発信を行う拠点として青山クラブを使いたいとした。また、市民が自由に利用できるフリースペース,宿泊施設などを備えることも検討しているそうだ。
呉市「アニメ映画の情報を発信することも検討したい」
ただ、呉市は、土地と建物を国から購入しなければならないほか、施設の整備費に約30億円かかると見込まれている。また、年間約9000万円もの維持費がかかり、30年で約28億円が必要になってくる。
かなりの費用がかかるため、今後は財源の確保が課題になりそうだ。
青山クラブは、アニメ映画の公開以来、全国からファンらが次々に聖地巡礼に訪れている。施設の近くで記念撮影する姿も目立っており、市企画課の担当者は、「将来的には、施設の一角で映画情報を発信することも検討したい」と話した。
市では、18年度に耐震診断を行って、どの程度活用できるか判断する。さらに、19年度にニーズ調査を行ったうえで、20年度以降に具体的な事業化を煮詰めていくとしている。
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