「十万石まんじゅう」だけじゃない 全国の「石高菓子」をざっくりまとめてみた
ツイッター上で埼玉銘菓「十万石まんじゅう(十万石ふくさや)」が話題になっている。といっても「うますぎる」という話ではなく、名前になっている石高についてだ。
現代において増やしようもない石高の多寡で争っても仕方がないので、そのことは脇に置いておこう。それよりも、こうした名前に石高の入っている「石高菓子(記者が勝手に命名した)」は一体どれほどあるのかが気になる。
全国各地に藩があり石高が算出されていた以上、どの地域にも石高は存在する。ということはかつての藩の数だけ石高菓子があってもおかしくない。
1万から61万まで並ぶ石高菓子
ぜひとも全国の石高菓子を網羅したいところだが、さすがにすべてのお菓子の情報を完璧にキャッチはし切れないので、記者の私見によるざっくりとしたまとめになってしまうことをお許しいただきたい。また、菓子以外の食品や酒なども除外している。
まず、ツイッター上で「十万石まんじゅう」に関係してユーザーから挙がっていた石高菓子を見てみよう。
最初は広島県三原市の「三万石名城焼(三万石本舗)」。三原市は江戸時代に福山藩と広島藩で分割されており固有の石高はないのだが、三原城が広島藩の支城とされ、石高3万石の城代が配されていたことに由来するようだ。
さらに、福岡の「黒田五十二万石最中(如水庵)」、熊本の「肥後五十四万石(香梅)」と九州勢が挙げられている。どちらもストレートに福岡藩、熊本藩の石高を名前に取り入れた形だ。
珍しく千単位まで入っているのは茨城県土浦市の「九万五千石(前島製菓)」。土浦藩は当初3〜6万石台だったが、江戸中期ごろに9万5000石に拡大しており、この石高を採用していると思われる。
さて、ここからはJタウンネットによる石高菓子まとめだ。
まずは、「十万石まんじゅう」と同じ石高となっている岡山県津山市の「十萬石(大文字本舗)」。松平氏が治めていた津山藩の石高10万石に由来する。同じ中国地方には、広島の「浅野四十二万石(天光堂)」もある。こちらも広島藩の石高そのままだ。
瀬戸内海を挟んで四国に目を向けると、香川県丸亀市の「六万石(寳月堂)」、高知の「土佐二十四万石(西川屋)」の2つ。同じ四国で大きく石高が異なるが、丸亀藩は香川県の一部分なのに対し、土佐藩はほぼ高知一円となっていた差が大きいのだろう。ちなみに土佐藩の石高は幕府の記録では20万石とされており、土佐藩側の算出では24〜25万石とやや多めになっている。商品名は多めの石高だ。
さらに東へと移っていくと、滋賀県彦根市の「三十五万石(大菅製菓)」は彦根藩の、和歌山の「五十五万石(うたや)」は紀州藩の石高となっている。紀州藩は徳川御三家のひとつということもあり、包装紙に葵の御紋があしらわれているようだ。
ということは当然もうひとつの御三家、尾張藩61万石を冠する石高菓子が愛知にあるのではないかと見てみると、ありました「六十一万石(お菓子所六十一万石)」。やはり包装紙に葵のご紋が入っている。このデザインができるのは紀州、尾張と幕府直轄地くらいだろう。
ちょっと通り過ぎてしまったが、兵庫県姫路市には「五拾萬石(白鷺陣屋)」がある。姫路藩は池田輝政が52万石を与えられたはずなのだが、商品名では2万石減。ひょっとすると姫路藩の石高とは関係のないネーミングなのかもしれないが、「石」の単位が付く以上は石高菓子としておこう。
今回把握できた最後の石高菓子は長野県須坂市の「一万石(清野製菓舗、コモリ餅店)」だ。地元紙「須坂新聞」の2015年10月3日付の記事によると、2014年に製造していた菓子店が閉店し一度販売を終えたものの、銘菓の継承を希望する市内の菓子店2店が技術指導をうけ、復活したという。こうした話を聞くと、別に石高自慢をしたいわけではなく、郷土愛のひとつの表し方が名前に石高を使うという形で表れていると感じさせられる。
こうして見てみると、石高菓子は西日本側に多いような印象もあるが、調査不足の可能性もあるので断定はできない。また、40〜50万台の大藩が並んでいるが、実数でいえば10万以下のほうが圧倒的に多いはずで、これも取りこぼしているのではないだろうか。
今回挙げたもの以外にも当然まだまだ石高菓子はあるはずだ。「うちの石高菓子はこれだ」という一品、読者の皆様からもぜひ教えていただきたい。
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