「管理職は何でも知っている」は幻想!上手に“ヘルプ”が出せる上司ほど部下の成長、組織成果につながる
「管理職って大変な仕事ですよね」「管理職って孤独ですよね」といったイメージが、皆さんの中でもあるのではないでしょうか。
現場を預かる管理職として、何でも知っていいなければならないし、何でもできなければならない。かといって、相談できる相手がいるかと言えば、いない。そんな現状が、前述のイメージにつながっているようです。
今回は、そんなイメージにつながる原因を探り、肩の力を抜いて仕事に取り組むための方法を伝えてまいります。(文:働きがい創造研究所社長 田岡英明)
現場業務ならば部下の方が「よく知っている」ことも
高度経済成長時代の日本においては、まだインターネットのインフラもなく、徐々にOA化が進むといった状況でした。一部の世代の方にとっては、OA化という言葉も懐かしい響きなのではないでしょうか。
このような時代における組織の情報は「Face to Face」のコミュニケーションによって運ばれ、末端のメンバーに届いていくといったものでした。つまり、組織の上層部に行けば行くほど、たくさんの情報を持っていたわけです。
しかし、今はOA化が進み、インターネットの登場によって情報の共有が進んでいます。上司と部下という局面においては、情報格差というものが薄まってきているのです。また、業務の複雑化もあり、現場の業務に関しては部下の方がよく知っていたり、熟練していたりしていることも普通です。
他部署からの移動で、まったく畑違いの部署の管理職に昇格したのであれば、なおさらです。情報の共有化や仕事の複雑化が広がる現代においては、もはや上司は部下よりもなんでも知っており、なんでも上手にできるというのは幻想になっているのです。
“ヘルプ”を言える管理職になれ
そんな時代であることを認識し、上司自身が分からないことやできないことは、部下に“ヘルプ”を出せるようになりましょう。昭和時代からのマネジメントに慣れている方には難しいかもしれませんが、部下を育成しながら組織成果を出していくためには必要なことと、理解していかなければなりません。
“ヘルプ”を言える管理職は、マネジメントが上手である傾向があります。なぜなら、自分自身で仕事を抱え過ぎずに、自分にしかできない業務に集中することができるからです。管理職の多くがプレイングマネジャーである現在においては、多くのマネジャーがプレイヤー業務に時間を奪われ、マネジメント業務が進まないといった課題を抱えています。
いかに仕事を任せていくかがカギになっているのです。そして、任せたことでできた時間をマネジメント業務にあてていくのです。そのためにも“ヘルプ”を上手に使っていきましょう。
気をつけたいのは「“ヘルプ”でお願いした仕事を丸投げにしない」ということです。丸投げでは部下との信頼関係を作ることができませんし、マネジメントしているとも言えません。また、“ヘルプ”を出した仕事への干渉のし過ぎも気をつける必要があります。つい、「大丈夫かな」と心配し過ぎ、過干渉になり部下のモチベーションを下げるということが起こります。“ヘルプ”を出した仕事は任せ切ることを徹底しましょう。
部下とのコミュニケーションとしては、コーチング的な関わりを続けていく必要があります。上司がすべてを知っていて、すべてをできる時代ではない今日、ティーチングはなかなかできません。部下に考えさせ成長を促すコーチング的な関わりが求められるのです。
コーチングの基本は「答えは相手の中にある」というものです。部下の中にある答えと目標を導き出しながら、部下に考えさせ、“ヘルプ”を出した仕事をやり切ってもらいましょう。それが部下の成長にも組織成果にもつながっていきますので。
情報や仕事の複雑化が広がる現代においては、“ヘルプ”を出せる上司が組織成果を出していきます。なぜなら、その行動が自律的社員を作っていくからです。とは言え、“ヘルプ”を出し慣れていない管理職にとっては難しい行動のはずです。少しずつ“ヘルプ”を出していく練習をしていく必要があるでしょう。
【著者プロフィール】田岡 英明
働きがい創造研究所 取締役社長/Feel Works エグゼクティブコンサルタント
1968年、東京都出身。1992年に山之内製薬(現在のアステラス製薬)入社。全社最年少のリーダーとして年上から女性まで多様な部下のマネジメントに携わる。傾聴面談を主体としたマネジメント手法により、組織の成果拡大を達成する。2014年に株式会社FeelWorks入社し、企業の管理職向けのマネジメント研修や、若手・中堅向けのマインドアップ研修などに携わる。2017年に株式会社働きがい創造研究所を設立し、取締役社長に就任。
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