飲み薬、塗り薬、植毛 - 多様化する「AGA治療法」の現状について湘南AGAクリニックの院長に聞いてみた!
マイナビニュース2024年4月2日(火)8時0分
「AGAは治る時代になった」。そう言われて久しいが、まだまだ薄毛治療に関する正しい情報は一般的に浸透しているとは言いにくい。薄毛に悩んでいても、どう一歩目を踏み出したらいいかわからない人も多いだろう。
そこで今回は、『AGA治療革命 飲む発毛剤から自毛植毛、そして毛髪培養へ』の著者で、湘南AGAクリニック新宿南口院の院長を務める笠井敬一郎氏に「AGA治療」の実態を聞いた。
■なぜ「禿げる人」と「禿げない人」がいるのか
――そもそも「AGA」とは何か、改めて教えてください。
まず、男性と女性では事情が違いますし、感染症や放射線による影響で禿げる場合もありますが、今回はそういった特殊な病気を除いた、一般的な男性型脱毛症(AGA)についてお話します。
AGAという言葉はこの10年で広く知られるようになりました。なぜかというと、禿げに効く治療薬が見つかったからです。それまで薄毛は老化現象の一種だと見られていて、それはある意味で間違いではないのですが、治療薬が開発されたことで、「禿げるのは病気だからで、薬を飲めば治るんだ」だということがわかったんです。
――なぜAGAになる人とそうでない人がいるんですか?
AGAの8割は遺伝で決まってしまうと言われています。まだ詳しい遺伝のメカニズムはわかっていないのですが、「X染色体」に原因があるんじゃないかと考えられています。
男性の場合、X染色体は母からもらうものなので、実はAGAは母方の遺伝の影響が強いんですね。一般的に「父が禿げているから自分も禿げる」と考えられがちですが、そうではなく、本当はお母さんのほうのお祖父ちゃんや従兄弟の遺伝子系統を見るべきなんです。
――それは意外ですね……。
AGAが発症するかどうかは遺伝の影響が大きいのですが、そこには男性ホルモンが大きく関わってきます。「テストステロン」という男性ホルモンが、「DHT(ジヒドロテストステロン)」に変化することで、髪の毛の成長を止める原因となってしまうんです。
DHTのレセプター(受容体)が毛根にあって、その感受性は人によって違うのですが、感受性が強い人は髪の毛の生成が止まってしまいます。テストステロンがDHTに変化しないようにし、AGAの進行を止めるのがAGA治療薬「プロペシア」です。
■飲み薬、塗り薬、植毛……多様化するAGAの治療法
――やはりAGA治療薬「プロペシア」の開発は画期的なことだったんですか?
画期的でした。もともと、アメリカ・インディアンは禿げないうえに前立腺も肥大しないという特徴に着目し、その原因を研究していくうちに、「ノコギリヤシの葉っぱや実を食べているからだ」ということがわかったんです。そして、そのノコギリヤシの葉っぱの中から発見されたのが「フィナステリド」という、現在のプロペシアの主成分だったんです。
最初は前立腺肥大の治療薬として飲んだのに、結果として禿げも一緒に治ったという経緯があったのですが、要するに、髪の毛と前立腺という男性ならではの特徴に機能する成分だったんですね。フィナステリドが発見されたのがだいたい20年くらい前で、治療薬として商品化されたのが約10年前ですが、そこから一気にAGA治療は前進することになりました。
――それまでAGAは治らないとされていたんですか?
それまでは「育毛剤」というデタラメな治療しかなくて、禿げたら諦めるしかなかったのが実情でした。今では治療薬を飲めばちゃんとコントロールできるという状況になりましたが、ある程度進行してしまったものは治りません。
だから、AGA予防という観点で治療薬を飲むのが理想的なのですが、禿げる前に飲む人はなかなかいませんよね。現在は、禿げを治療するためにまずは治療薬を飲んで、それでもまだ満足な結果が得られていないと感じる人が自毛植毛に進むというのが一般的な流れとなっています。
――プロペシアの副作用などがあれば教えてください。
副作用としては、性欲が落ちたり、EDになったりすることがあると言われていますが、実際に副作用が起きるのは1%程度で、ほとんどは起きません。しかし、1%だとしてもそういう話があるというだけでやっぱり抵抗感は生まれてしまいますよね。
――プロペシア以外の治療薬もあるんですか?
「ミノキシジル」が主成分のリアップという塗り薬もあります。もともとは降圧剤として開発されたのですが、こちらも飲んでいるうちに髪の毛が生えてきたという経緯があります。これが口コミで広がったのですが、副作用としてはむくんだり、心臓に影響があったりするので、公式に飲み薬としては認められていません。あくまで塗り薬として使わなければいけないのですが、飲んだほうが効果があるということで、飲んでしまっている人も少なくないのが現状です。
――プロペシアとの併用もできるんですか?
プロペシアを飲みながらリアップを塗るというのは一般的な治療法ですね。やはり両方使ったほうが効果は高いのですが、そのぶん費用もかかります。
――薬以外では、他にどんな治療法があるんですか?
「幹細胞培養上清液療法」といって、幹細胞から培養した上澄液を注射したり、点滴で入れたりするという治療もあります。頭に直接注入できるので効果も高いのですが、まだすべてを国が認めているわけではありません。
あとはLEDの光を照射するという治療法もありますね。お手軽ですし費用もそんなに高くなく、副作用もないのですが、実施している病院はそんなに多くなく、劇的な変化も望めません。
――最後に、それぞれの費用感について教えてください。
飲み薬のプロペシアは月々数千円のレベルですが、今はジェネリックもあるので、オンライン診療なら月々1,000〜3,000円くらい。リアップで大体5,000〜6,000円、幹細胞培養上清液療法は5~10万円くらい。自毛植毛は治療する部分の面積によって変わりますが、100〜300万円くらいはかかることが多いかと思います。
幹細胞培養上清液療法は2023年に始まったばかりの治療法ですが、これからのAGA治療の主流になってくると思います。品質を改善して、もっと髪の毛にとっていい成分をブレンドできれば、もっともっといい治療になっていくポテンシャルがありますね。
次回は、半永久的な効果が期待できる「自毛植毛」にマイナビニュース社員がチャレンジ!
そこで今回は、『AGA治療革命 飲む発毛剤から自毛植毛、そして毛髪培養へ』の著者で、湘南AGAクリニック新宿南口院の院長を務める笠井敬一郎氏に「AGA治療」の実態を聞いた。
■なぜ「禿げる人」と「禿げない人」がいるのか
――そもそも「AGA」とは何か、改めて教えてください。
まず、男性と女性では事情が違いますし、感染症や放射線による影響で禿げる場合もありますが、今回はそういった特殊な病気を除いた、一般的な男性型脱毛症(AGA)についてお話します。
AGAという言葉はこの10年で広く知られるようになりました。なぜかというと、禿げに効く治療薬が見つかったからです。それまで薄毛は老化現象の一種だと見られていて、それはある意味で間違いではないのですが、治療薬が開発されたことで、「禿げるのは病気だからで、薬を飲めば治るんだ」だということがわかったんです。
――なぜAGAになる人とそうでない人がいるんですか?
AGAの8割は遺伝で決まってしまうと言われています。まだ詳しい遺伝のメカニズムはわかっていないのですが、「X染色体」に原因があるんじゃないかと考えられています。
男性の場合、X染色体は母からもらうものなので、実はAGAは母方の遺伝の影響が強いんですね。一般的に「父が禿げているから自分も禿げる」と考えられがちですが、そうではなく、本当はお母さんのほうのお祖父ちゃんや従兄弟の遺伝子系統を見るべきなんです。
――それは意外ですね……。
AGAが発症するかどうかは遺伝の影響が大きいのですが、そこには男性ホルモンが大きく関わってきます。「テストステロン」という男性ホルモンが、「DHT(ジヒドロテストステロン)」に変化することで、髪の毛の成長を止める原因となってしまうんです。
DHTのレセプター(受容体)が毛根にあって、その感受性は人によって違うのですが、感受性が強い人は髪の毛の生成が止まってしまいます。テストステロンがDHTに変化しないようにし、AGAの進行を止めるのがAGA治療薬「プロペシア」です。
■飲み薬、塗り薬、植毛……多様化するAGAの治療法
――やはりAGA治療薬「プロペシア」の開発は画期的なことだったんですか?
画期的でした。もともと、アメリカ・インディアンは禿げないうえに前立腺も肥大しないという特徴に着目し、その原因を研究していくうちに、「ノコギリヤシの葉っぱや実を食べているからだ」ということがわかったんです。そして、そのノコギリヤシの葉っぱの中から発見されたのが「フィナステリド」という、現在のプロペシアの主成分だったんです。
最初は前立腺肥大の治療薬として飲んだのに、結果として禿げも一緒に治ったという経緯があったのですが、要するに、髪の毛と前立腺という男性ならではの特徴に機能する成分だったんですね。フィナステリドが発見されたのがだいたい20年くらい前で、治療薬として商品化されたのが約10年前ですが、そこから一気にAGA治療は前進することになりました。
――それまでAGAは治らないとされていたんですか?
それまでは「育毛剤」というデタラメな治療しかなくて、禿げたら諦めるしかなかったのが実情でした。今では治療薬を飲めばちゃんとコントロールできるという状況になりましたが、ある程度進行してしまったものは治りません。
だから、AGA予防という観点で治療薬を飲むのが理想的なのですが、禿げる前に飲む人はなかなかいませんよね。現在は、禿げを治療するためにまずは治療薬を飲んで、それでもまだ満足な結果が得られていないと感じる人が自毛植毛に進むというのが一般的な流れとなっています。
――プロペシアの副作用などがあれば教えてください。
副作用としては、性欲が落ちたり、EDになったりすることがあると言われていますが、実際に副作用が起きるのは1%程度で、ほとんどは起きません。しかし、1%だとしてもそういう話があるというだけでやっぱり抵抗感は生まれてしまいますよね。
――プロペシア以外の治療薬もあるんですか?
「ミノキシジル」が主成分のリアップという塗り薬もあります。もともとは降圧剤として開発されたのですが、こちらも飲んでいるうちに髪の毛が生えてきたという経緯があります。これが口コミで広がったのですが、副作用としてはむくんだり、心臓に影響があったりするので、公式に飲み薬としては認められていません。あくまで塗り薬として使わなければいけないのですが、飲んだほうが効果があるということで、飲んでしまっている人も少なくないのが現状です。
――プロペシアとの併用もできるんですか?
プロペシアを飲みながらリアップを塗るというのは一般的な治療法ですね。やはり両方使ったほうが効果は高いのですが、そのぶん費用もかかります。
――薬以外では、他にどんな治療法があるんですか?
「幹細胞培養上清液療法」といって、幹細胞から培養した上澄液を注射したり、点滴で入れたりするという治療もあります。頭に直接注入できるので効果も高いのですが、まだすべてを国が認めているわけではありません。
あとはLEDの光を照射するという治療法もありますね。お手軽ですし費用もそんなに高くなく、副作用もないのですが、実施している病院はそんなに多くなく、劇的な変化も望めません。
――最後に、それぞれの費用感について教えてください。
飲み薬のプロペシアは月々数千円のレベルですが、今はジェネリックもあるので、オンライン診療なら月々1,000〜3,000円くらい。リアップで大体5,000〜6,000円、幹細胞培養上清液療法は5~10万円くらい。自毛植毛は治療する部分の面積によって変わりますが、100〜300万円くらいはかかることが多いかと思います。
幹細胞培養上清液療法は2023年に始まったばかりの治療法ですが、これからのAGA治療の主流になってくると思います。品質を改善して、もっと髪の毛にとっていい成分をブレンドできれば、もっともっといい治療になっていくポテンシャルがありますね。
次回は、半永久的な効果が期待できる「自毛植毛」にマイナビニュース社員がチャレンジ!
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