「長時間労働に利点はない。早く帰るのが不安というのは異常」 一部上場のIT創業社長がハードワークをやめた理由
IT企業の創業社長が長時間労働の弊害をツイッターで指摘し、話題を呼んでいる。2015年に東証一部上場を果たした、さくらインターネットの田中邦裕代表取締役社長は4月21日、自身のツイッターアカウントに次の内容を投稿。ネットでは賛同する声が相次いだ。
「『若い時の長時間労働で自分は成長した』と信じて疑わなかった私ですが、(中略)長時間労働に利点など無く、むしろ判断力を低下させ周囲に悪影響を与えると実感した。長時間働きハイになり周囲にも肯定的に強いる訳だから、正常な判断力な訳ない」
田中氏は、キャリコネニュースの取材に対し、「余裕があって仕事以外のことをすると普段とは異なる発想が生まれる」と話す。
「長時間働くのが快感、早く帰るのが不安という状態そのものが異常」
田中氏は、舞鶴工業高等専門学校の生徒だった1996年に同社を創業。当時は授業やクラブ活動をこなしてから仕事をするという生活を送っていたため、休日もなく、睡眠時間は1日わずか2〜3時間だったという。高専卒業後もハードワークが続いた。
「15年ほど前まではシステム開発を請け負っていたため、深夜まで残業したり、サービスリリース前に徹夜するのが当たり前でした。その後、システム開発をやめ、クラウドサービスに移行してからは月20〜30時間の残業で済むようになりました。それでも締め切り前は長時間働くのが当然という意識でしたし、長く働くことの悪影響についてもあまり気に留めていませんでした」
しかし昨年5月に1か月の休みを取ったことで考え方が大きく変わったという。休みの間は毎日7時間眠り、会社と連絡を取ることもなければ、社用のパソコンを開くこともほとんどなかった。
「長時間働いていた時を振り返ってみると、長く働くこと自体が快感で、早く帰るのが不安だったんです。その状態そのものが異常だと思います。長く働くことをやめて余裕が生まれると、家に早く帰ったり、趣味に時間を使ったり、勉強会に出席したりすることができます。そうした経験をすることで普段とは異なる発想が生まれます。仕事だけで人生を終わらせないことが大切です」
「社長や管理職が『残業して当然』という意識だと部下にも悪影響を及ぼす」
また、個人の長時間労働は、周囲にも悪影響を及ぼすという。
「長く働くことが正しいと刷り込まれていたので、周囲に対しても必要があれば残業して何とかしてほしいという感覚になっていました。しかし社長である私や管理職がそのような態度だと部下も付き合う羽目になってしまいますよね」
現在、同社の残業時間は平均して月7時間程度にすぎないが、売上高も従業員数も右肩上がりの成長を続けている。人によってはまだ残業の多い従業員もいるため、田中氏は今後も長時間労働の是正に取り組むという。
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