Uberは「ゲーム感覚」出前館は「マジメ」......配達員が感じた「フーデリ2強」の違いとは?
写真:飯配達夫
フーデリ業界、2強といえばUberと出前館だ。利用者からは「どっちでもいい」かもしれないが、働く立場で見てみると意外と思いがけない違いがあるものだ。(文:飯配達夫)
配達員をうまく「煽ってくる」Uber
両社に登録をし、実際に配達をしている筆者としては、Uberのほうが「配達員の気持ち」を操るのがうまいように思える。
というのはUberにはゲーム的な楽しさがあるからだ。たとえば配達回数に応じた「回数インセンティブ」には、良い意味で射幸心を煽られる。配達すればするほどコスパが良くなるのは、よくできたシステムだと思う。
また、Uberではいったん配達員登録をすれば、47都道府県どこの仕事でも請け負える。その気になれば「ノマド配達員」として、仕事をしながら日本中を旅することだってできてしまうだろう。気分転換にはもってこいだ。ただし登録した都市以外の地域では、「ブースト(配達料の割り増し)は付くが回数インセがつかない」というハンデがあることに注意しておきたい。
一方、出前館は真面目な会社で、登録した拠点の管轄エリア内でしか稼働できない。もちろん、そのほうが安全で確実に稼げるのは間違いないのだが、そこは人間。いつもの町並みだけだと飽きてしまうのは否めない。
仕事を取るのも一苦労、早押し合戦で消耗
また、UberはAIが注文を自動差配してくれるが、出前館は「早押し合戦」に勝たなければ仕事を引き受けられないという違いもある。注文を逃さないためには、待機中いつ合図が鳴ってもいいように、ずっと画面を見ていなければならない。配達時間のみならず、待ち時間も気が休まらないのは地味につらい。
呼び出し音が頭から離れなくなる
もう1点、出前館の配達員は運転中も気が抜けない。新規注文が入ると呼び出し音が鳴るからだ。出前館の呼び出し音は「トゥルルル」という電話の呼び出し音のような音なのだが、これが配達中でも問答無用で鳴るのである。ピーク時間中だと、ひたすら鳴り続けるようなイメージで、一日やっていると呼び出し音が頭から離れなくなる。
出前館には「ゴング機能」というルーチン作業もある。配達員は店舗に到着する約10分前に、アプリで通知を出さないといけないのだ。これも「担当エリア」が決まっていて、そのあたりの地理・店舗を熟知しているのが前提の機能。初めて行く店に「あと10分で着くタイミング」なんて、わかるわけがない。
出前館のメリットは?
逆に、出前館のほうが優れているポイントも、もちろんある。
それは配達料金だ。Uberは配達距離に応じて報酬が違う。しかし、出前館の配達料は距離に関係なく一律なので、短い距離の配達をうまく引き受けられれば要領良く稼げる。
さらにUberでは同時に2件までしか取れない案件が、出前館では3件までとれる。配達コースをうまく組み立てれば、さらに効率良く稼ぐことができる。
既に終了したが、昨年の12月頃は「バブル」とも言えるほど配達料金を奮発し、嬉しい悲鳴が上がっていたのは記憶に新しい。「慣れるまで忍耐が必要でも、稼げれば問題ない」という層には、出前館は有力な選択肢になりうる。
出前館もシステム改変を予告
上記以外にも、出前館では「売り上げ金を現金で回収した場合、その日のうちに拠点で精算しなければならない」「金髪やヒゲの禁止、制帽の着用義務など身だしなみ関する規定がある」といった違いがあった。
というわけで、一言でまとめると「稼げるが楽しくない」というのが、僕から見た出前館の特徴だった。文字通り「仕事以外の何ものでもない」という感じだったのだ。
しかし状況は変わりつつある。6月下旬から出前館のシステムが大きく変わるという告知が出ていて、今後はUberのような自動配車になるという。呼び出し音に脳内を占領されずに済むというのは朗報だ。
システムの改変はすこしずつ進んでおり、アプリのUIが変更されたり、現金の精算がコンビニで出来るように変更されるなどしている。配達エリアの縛りも撤廃されるもよう。さて、出前館はどこまで「脱マジメ」に路線を変更するのだろうか。今後の展開が楽しみである。
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