外資系への転職 TOEIC900点でも落ちる人、750点でも採用される人
ビジネス英語トレーナーそのはたちえこです。ビジネスパーソンに英語習得法や外国人とのビジネス上のコミュニケーションのコツをお伝えする仕事をしています。
もともと私は、外資系の精密機器メーカーでマーケティングやセールスの管理職として働いていました。外資系在籍16年のうち、10年以上にわたって累計で数百人を書類選考し、そのうち100人以上を面接してきました。
ここでは「採用する側」が、英語力が必須のポジションにおいて、求職者にどんな英語力を求めているのか、実際に応募書類のどこ見ているのかをお伝えします。(文:そのはた ちえこ)
「英語力だけ」で採用されることはまずない私のところに相談に来られる方たちの中にも、「TOEICって、何点取ったら転職に有利ですか?」「英語を使う仕事に就きたいですが、どうしたらいいですか?」という質問をされる方が多くいます。
外資系企業や、海外と取引のある日本企業に転職する場合であっても、大前提として「英語力だけ」で採用されることはまずありません。ポジションにもよりますが、仕事を進めるうえで必要なスキル、専門性、実績や経験を備えているかをまずチェックされます。
20代の若手であれば、転職後の「伸び代、ポテンシャル」も評価の対象になるかもしれません。そこをクリアした上で、英語力も問われるということです。
私が当時担当していたのは、主に「アメリカ本社や、世界各地の工場にいるプロダクトマネージャーやマーケティング担当者と直接やり取りすることが多いポジション」でした。つまり、メール、電話会議、海外出張などで英語を使って日常的にコミュニケーションをとることが必須のポジションです。ですので、応募の条件はそれらの目安となる「TOEIC730以上」としていました。
TOEICも点数だけを見ているわけではない1人の募集枠に対して、多いときは数十人の応募が来ることもありました。書類選考時には、業務を遂行する上で必要な経験や知識があるか等を見た上で、そのポジションに必要な英語力があるかを見ます。
その際に採用する側が見てわかりやすいのは、やはりTOEICのスコアや英検などの客観的な指標です。または留学など、実際に英語を使っていた経験があるかも見ます。それらが書かれていないと、採用する側としても判断ができません。
英語を使うポジションにつきたい、でも、英語力を証明するものを何も提出できない、となると採用する側としては「この人は大丈夫なのだろうか?英語以外のことも、準備ができない人、データを用意できない人なのでは?」と思ってしまうわけです。
つまり、「TOEICは何点なのか」だけではなく、「転職にあたってどのくらい準備ができているか、それをデータで示すことができるか」ということも見ているのです。
実際に外国人スタッフと話をしてもらうことも採用するのはもちろん、「スコアや資格があり、仕事で実際に英語を使っていた人」がベストではあります。しかし、「英語力必須のポジション」に応募してくる人は大体の場合、「スコアや資格はあるが、仕事であまり使ったことはない人」か、「スコアはそれほど高くないが、これまで実務で英語を使ってきた人」に分けられます。
そのため面接時には、「電話会議やミーティングでリアルタイムなコミュニケーションがとれるだけの力があるか?」を確認します。実際に、社内の外国人スタッフと話をしてもらったり、海外の担当マネージャと電話で話してもらったりして、その様子を見ることもありました。
たとえTOEICがハイスコアの人でも、話す態度がおどおどしていたり、英語でのコミュニケーションに不慣れな様子だったりすると、実務を任せることが難しいかもしれないと判断します。逆に、TOEICスコアがそれほど高くなく、英語が多少つたなかったとしても、態度が堂々としている、相手の目を見て話ができる、わからないことを聞き返すことができるなど、コミュニケーション力が高い方であれば、あえて採用にしたということもありました。
文法が多少間違っていても実務で必要な英語力があれば問題ない結局のところ、採用する側は、「仕事上、英語力でつまずかない人、英語の手助けが必要ない人」が欲しいのです。上司の立場からみたら、自分が同席しなくても安心して英語の業務を任せられる人です。決してネイティブ並みの流暢さは必要ありません。
スコアや級が高いに越したことはありませんが、そのポジションに必要な英語力があることが証明できれば、日本語発音の英語でも、文法や単語が多少間違っていても構いません。むしろ、外国人としっかりコミュニケーションを取れることを示すことができれば、そのほうがよほど「実務で役立つ英語力」であると言えます。
また、応募書類に書けることは限られていますが、英語力をアピールする際には、単にテストのスコアや級だけでなく、「日常的にメールの読み書きや電話会議での発言など、X年の実務経験があります」などと書き添えると、採用側はあなたの英語力を判断しやすくなり、書類選考も通りやすくなるでしょう。
【プロフィール】
そのはたちえこ
ビジネス英語トレーナー。外資系企業でのマネジメント経験を活かした、現場目線でのビジネス英語講座が好評。モットーは、「ビジネス英語は、"中学英語+αで十分!"」。2021年より株式会社マーケティングフルサポートにて「オンライン英語コーチの学校」の講師を担当。
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