長期熟成のウイスキーが高いのはなぜ? その理由が一目で分かる写真がこちら
「天使の分け前」をご存じだろうか?
ウイスキーやブランデー、ラム酒などの一部の蒸留酒は、蒸留後、木製の樽の中で熟成される。
熟成期間は数年から数十年とかなり長いのだが、この過程で樽の中の原酒は徐々に蒸発してしまう。つまり、熟成を終えたころには樽の中の酒の量は減ってしまっているのだ。
この減ってしまった分を、「天使の分け前」と呼ぶらしい。
2020年8月2日、次のような写真がツイッターに投稿され、話題となっている。
写真は、「ニッカウヰスキー北海道工場余市蒸溜所」(北海道余市町)で撮影されたもの。
展示用に底面が透明になっていて、中身を見られるようになった樽が置かれている。
映っているのは、写真左から蒸留したばかりの原酒、5年貯蔵した原酒、15年貯蔵した原酒の3種類。熟成を経ることで、原酒にどんな変化が起こるのかを知ることができる展示のようだ。
色は透明から琥珀色に変化し、量はほぼ満タン状態から、半分までに減っている。
これを見た投稿者とよたせりか(@tunagiradio)さんは、「天使の分け前は割とエグい量持っていく...」とつぶやいた。このツイートには、7万7000件を超える「いいね」が付けられ、拡散中だ(8月5日夕現在)。
投稿には、さまざまな声が寄せられている。
「15年で半分くらい無くなるということは... 30年経つと......?」
「15年で50%近く持っていくなんて、分け前通り越して、もはや暴利ですわ」
「0年目の天使『少しだけ持っていきますね』、 5年目の天使『もうちょっとだけ。。。もうちょっとだけ......』 15年目の天使『うぃーっす。半分寄越せや』、......」
しかし天使の仕業だけに、文句のつけようもない。
天使が飲んでいった後のウイスキーを楽しんだ人からは、こんな感想も届いていた。
「私の好きな銘柄で、12年、18年、25年と飲んだことがありますけど、どれも素晴らしかったですよ」
天使を「ま、許してやってもいいか」という気になったのだろうか。天使が毎年味を見たくなるのも納得のおいしさだったのかもしれない。
「20年とかだと半分以下?」
投稿者・とよたせりかさんは7月25日に余市を訪れた。蒸留所のほかにも、ニッカウヰスキーに関する場所をいくつか訪ねたそう。
「余市はやはりウヰスキーの町というイメージが強いので、今回は駅併設のエルラプラザというところでレンタサイクルを借りて、竹鶴さんのお墓や、家の跡など訪れてみました」
話題になった「天使の分け前」の樽の展示は、蒸留所内の「ウイスキー博物館」の中にあるという。
Jタウンネット編集部は、この蒸留所を運営するアサヒグループホールディングスに詳しい話を聞くことにした。
「天使の分け前」について、同社の広報担当者に確認すると、現地に問い合わせた上、余市蒸留所のガイドツアーでは、ガイドから貯蔵庫で次のように説明しているそうです、と答えてくれた。
「樽の中の原酒は木目を通して呼吸して少しずつ熟成すると共に、大気中へと逃げていきます。
1年で約2〜3%蒸発し10年でおよそ3分の1、20年でおよそ半分ほどが減ってしまいます。
こちらの現象を『エンジェル・シェア』『天使の分け前』と申しております」
そんなにたくさんの原酒が蒸発してしまうとは驚きだ。大気中に逃げるということは、周りはかなりウイスキーの香りがするのだろうか?
蒸留所で貯蔵庫を訪れたとよたせりかさんは、こうつぶやいている。
「見学コース用に一棟入れる貯蔵庫ありますけど、中はめっちゃアルコール漂ってました 弱い人は奥行っただけでヤバそう」
また、アサヒグループホールディングスの広報担当者からは、こんなコメントも返ってきた。
「新型コロナウイルス感染拡大防止対策として、現在各種の制限をしつつ、ガイドツアーのみの完全予約制で、新しい見学スタイルで皆様をお迎えしています。
現在のガイドツアーの所要時間は30分と短いお時間とはなりますが、『天使の分け前』の雰囲気を感じられる貯蔵庫もご案内していますので、ウイスキーのロマンを感じていただけると思います」
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