山崎光さんが選ぶ「避難所×プレイスメイキングを楽しむ本5冊」
「避難所」と一言で言っても、どの種類の災害から逃れるかによって、避難先や、その場所のつくり方は異なります。避難所へ向かわず、家にとどまる「在宅避難」を選択すべきケースもあります。的確に避難をするには、まずは災害の知識、そして防災や災害への備えについて知ることが必要です。
避難所を考えるための礎として、災害と向き合うことの参考になる本が、『いつ大災害が起きても家族で生き延びる』です。まず知っておくべき防災の心構えと、災害ごとの避難方法を段階的に、そして楽しく読めるようにまとめられています。住んでいる地域の地図をつくって災害時に危険が及ぶ場所を知っておく、日頃から周辺の人とのつながりをつくるなど、自治体の指定避難所だけを把握しておくのではなく、避難所を地域全体で広く捉え、事前に確認しておくべき内容がわかります。また、勤務先のオフィス内やリビング、キッチン、寝室などの家の中といった、日常的に生活する空間で、安全を確保するためには何に気をつければいいのかも書かれていて、さまざまな場所で、安全に配慮した場所づくりの参考になります。
またこの本は、避難する際の心情として、「大切な人のために生き延びる」という意思をもつよう、気づかせてくれます。「避難しなくても大丈夫だろう」と、自宅に居残った家族を助けに行こうとした家族が、途中で被災してしまうケースもあります。避難は自分のためだけでなく、家族など大切な人のためにもするものだと知ることが重要です。
『保存版 新しい防災のきほん事典』はコロナ禍の中で出版された、感染症対策にも触れた本です。自治体の指定避難所のほか、知人や親戚の家に避難する縁故避難、車中泊、在宅避難など、密にならないための「分散避難」について、最新の情勢に基づいて詳しく書かれています。
避難所の運営は、避難者の自主運営が基本となります。避難所をどう運営しながら、避難者として過ごしたらいいのかが具体的に説明されています。さまざまな立場の人が利用する避難所では、例えばトイレのルールや、プライバシーの確保など、予期せぬ課題に遭遇します。この本でできるだけ予習して、不測の事態に陥ったときにすぐに役立てるといいでしょう。そのほかにも災害・防災全般についての基礎知識が広範囲にわたって書かれているため、必要な情報を必要なときに調べることができる、頼もしい一冊です。
『やろうよ! こどもぼうさい』代表/『Mitakaみんなの防災』理事•山崎光さんの選書
photographs by Hiroshi Takaoka & Yuichi Maruya text by Sumika Hayakawa
記事は雑誌ソトコト2022年11月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。
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