【M-1決勝】「ボケてない。生きてるだけ」錦鯉の漫才が今ウケる理由とは(インタビュー)
昨年『M-1グランプリ2020』で決勝に進み、「史上最年長ファイナリスト」として話題になったお笑いコンビ・錦鯉。彼らは、今年の『M-1グランプリ 2021』でも2年連続ファイナリストとなり、本日の決勝戦を目前に控えている。
そんな彼らが11月17日に初めての著書『くすぶり中年の逆襲』(新潮社)を出版した。2人の生い立ちや芸人としての歩みを振り返る内容になっている。現在50歳の長谷川雅紀と43歳の渡辺隆は、これからどのようにお笑い界を生き抜いていこうとしているのか? 全4回にわたるインタビューの第3回では『M-1』の決勝に進んだときのことを語ってもらった。
・ インタビュー第1回:錦鯉・長谷川雅紀が「他人の目を意識しない」本当の理由
・ インタビュー第2回:「ずっとダラダラしていた」2人がブレイクできた経緯
■昨年のM-1「悔しかった」
――2020年についに『M-1』の決勝に進出されたわけですが、決勝に出た感想はいかがでしたか?
長谷川雅紀(以下、長谷川) 決勝が決まったときに、いろんな人から連絡が来たんですよ。その中には「一世一代の勝負の場所だから気合入れていかなきゃダメだぞ」みたいなメッセージがあったんです。でも、タカトシのタカとか、ハリウッドザコシショウからは「楽しめよ」みたいな気軽な一言が来て、僕はそっちの方が良かったですね。
それで『M-1』の当日も普段のライブの気持ちで出て行ったんです。でも、実際に出たら今までにないぐらい口の中が乾いていて、体は緊張してたんだなと思いました。口はカラッカラだし、歯はないし、何言ってるわからない、みたいな。
渡辺隆(以下、渡辺) わかんなかったね。隣にいてもわからなかったですから。
――「レーズンパンは見た目で損してる」の「レーズンパン」が聞き取れなかったという意見が多かったみたいですね。
長谷川 そう、一番大事なところなのに。
渡辺 「あのおじいちゃん、なんつったの?」って。
――そこが聞き取れなかったらギャグの意味がわからないですよね。
長谷川 意味わかんない。ハッハッハ!
――渡辺さんは昨年の『M-1』の決勝に出た感想は?
渡辺 決勝が決まったときは本当に嬉しくて、出てみたらいい感じでできたかなとは思ったんですけど、負けてしまって。最後にマヂカルラブリーの優勝の瞬間を舞台の後ろの方から見ていたときに「すげえなあ」と思いつつも、めちゃくちゃ悔しくなりました。
正直、決勝に出ちゃえばそれで満足できるんだろうなと思ってたんですけど、そんなことなかったですね。悔しいから今年も出たみたいところもありますし。満足してたらたぶん出てないんだろうな、っていう。
■ボケてない。生きてるだけ。
――お2人のコンビとしての転機は、雅紀さんがハリウッドザコシショウさんに「お前はバカなんだから、もっとバカを前に出していけ」って言われたことだそうですね。それ以前はあんまりそういう部分を出していなかったんでしょうか?
渡辺 そうですね、普通にやってました。動きもそんなに大きくなかった気がする。ネタの中身も、バカはバカですけど、普通の会話形式のネタもやっていましたし。今の方がバカですね。
――今のネタではあんまり会話らしい会話をしてないですもんね。
渡辺 今はしてないですね。バカは会話できないもんだ、みたいのがありますから。僕もツッコミでもないんですよね。ダメだよって注意してるだけですから。いじりとも違うんですよ。
――以前、渡辺さんは「雅紀さんはボケてない」とおっしゃっていたそうですね。
渡辺 雅紀さんはボケてないです。生きてるだけです。(笑)
――ただ間違えてるだけなんですよね。
渡辺 間違えてるだけです。間違いを僕が注意して、それが雅紀さんだから成立しているだけで、ほかの人がやったら全然面白くないネタだと思います。
――たしかに。「こんにちは」と大きい声で言っただけでウケるわけですからね。
渡辺 挨拶してるだけですからね。
――雅紀さんも「こんにちは」でウケたときにビックリしたそうですね。
長谷川 そういうのはいっぱいあって。隆に「これ言ってみて」とか「やってみて」って言われたときに、僕は「これ、ウケるのかな?」とか思うんですよ。実際にお客さんの前でやって、ウケたりスベったりしてみないとわからない人間なんですよね。
でも、隆は頭の中でシミュレーションできるというか、ビジョンが浮かぶんだなあと思って。普通の言葉を僕が感情を込めて言ってウケると「あ、これウケるんだ」とか思ったりして。
渡辺 主観と客観の違いもありますからね。自分だとわかんないんじゃないの。
長谷川 わかんない。「こんにちは」って言った後に、僕が自分の頭を指差して「空っぽだよ」っていうツカミがあるんですけど、自分で自分のことを「空っぽだよ」ってなんかおかしくないですか? こっち(渡辺)が「お前、空っぽだね」って言って、「そんなことないよ!」って言うならわかりますけど、自分で自慢げに言うのは変じゃないですか。でも、言ってみたらそれでウケるから、最初は意味がわかんなかったです。
――ツカミの一言だと「弟は42歳だよ」とかもありましたね。
長谷川 それも、普通に楽屋で話していたときに、弟の話になって。何歳なのか聞かれたから「42歳だよ」って答えたら、「なんだよ、それ」ってみんなが笑って。
渡辺 弟42歳は衝撃的ですよね。
長谷川 実際の話じゃないですか。
渡辺 実際の話だけど、小学生のトーンでしゃべってたから。
――雅紀さんを見ていると時間の縮尺がおかしくなるんですよね。「バイトを始めて30年だよ!」とか。20代の芸人が生まれる前からバイトしてるっていう。
渡辺 たしかにそうなんですよね。
■壮絶借金エピソード
――あと、雅紀さんが借金に追われていた時期があって、それで集中力がなくなって仕事にも支障が出ていたっていう話を聞いたんですけど。それは錦鯉を組んでからのことですか?
渡辺 組んでからです。
長谷川 どうしようもなかったですね。バイトをフルでやってたんですけど、ギャンブルで借金をこさえていたんですよね。
渡辺 財布の中に札が入ってることがなかったもんね。小銭しか入ってなかった。
長谷川 これもはたから見たら「そんなわけないだろ」って言われるんですけど、ギャンブルやるからなんですよ。最後の千円まで「奇跡が起こるかな」と思って使っちゃうから、結局小銭しか残らないんです。それで後輩に「帰りの交通費だけ貸して」って300円だけ借りたりとか。
当時、立川に住んでいて、立川で電車を降りなきゃなんないのに寝過ごして八王子まで行ってしまって。終電で帰れなくなって財布の中見たら40円しかなかったから、八王子から歩いて帰ったこともあります。そのときでも40歳ぐらいだったから、ちょっと大人としてどうなんだみたいなのはありましたね。
――ギャンブルは今もやるんですか?
長谷川 今はもうやらないです。
――行きたくもならないですか?
長谷川 今は行きたくもならないですね。不思議なもので。
■知られざるプライベート
――今はプライベートでは何が楽しいですか?
長谷川 この間、人生で初めてテレビを買ったんですよ。今まで買ったことなくて。今のテレビってYouTubeとかAmazonプライムとかTVerも見られるじゃないですか。それでテレビを楽しんでます。
渡辺 「やっとテレビが家に来た」って、いつの時代の人なんだよ。「やったー、街頭テレビじゃない、力道山が家で見られる」って。
――今はテレビのお仕事も増えていると思いますが、手応えはありますか?
長谷川 本当に難しいですね。毎回収録が終わるたびに「あれ、大丈夫なのかな?」「正解はどっちだったんだろう?」とか考えちゃいます。終わってから「よっしゃ、今日は良かったな」みたいなのって1回もないです。でも、実際オンエア見たら面白くなっていたりして。正解がわかんないですよね。
渡辺 正解はわかんないよね。でもテレビの仕事は本当に楽しいですね。ありがたいです。
長谷川 いまだに勉強中です。番組の最後とかにMCの方に「今日の収録どうだった?」みたいに振られたら、「いやあ、面白かったですね!」みたいなのしか言えなくて。「もっとほかにあるだろ!」って怒られたりします。
渡辺 でも、この人だとそれでも成立しちゃうんですよね。そこでみんながツッコんでくれるから。すごいなと思います。
長谷川 でも、これからはちょっと考えて臨みたいと思います。
――渡辺さん、これってどうなんですか? 雅紀さんが自分で考え始めると持ち味が失われるんじゃないでしょうか。
渡辺 いや、事前に考えるって言ってもたぶん考えないと思います。やるって言ったことをやったのを見たことがないので。だから大丈夫だと思います。どうせ考えないので。
長谷川 性格って直らないというか、これで50年やって来たから。このまま行くしかないですよね。
渡辺 ほら、変わる気がないでしょ?(笑)
~つづく~
・ インタビュー第1回:錦鯉・長谷川雅紀が「他人の目を意識しない」本当の理由
・ インタビュー第2回:「ずっとダラダラしていた」2人がブレイクできた経緯
※錦鯉・長谷川雅紀のオカルト体験が壮絶すぎる! 不吉な予言も語られるインタビュー第4回(20日18時に公開予定)はコチラ!
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