「自分は下手だ」と思っている渋野日向子は今季、まだまだ強くなる

1月1日(水)6時0分 Sportiva

昨季、一躍女子ゴルフ界のスターとなり、国民的なヒロインとなった渋野日向子。2020年、彼女はさらなる活躍が見込めるのか。そして、注目の東京五輪でのメダル獲得の可能性はあるのか。ゴルフジャーナリストの三田村昌鳳氏が考察する——。

2020年シーズン、さらなる活躍が期待される渋野日向子
 2019年シーズン、目覚ましい活躍を見せた渋野日向子ですが、もちろん今後に向けての課題はあります。
 まずは、アプローチ。これは、青木翔コーチのみならず、岡本綾子プロがテレビ解説などでも「彼女はアプローチが下手」と公言しています。
 ただ、アプローチの問題も、そのほかの課題も、渋野なら乗り越えられるのではないでしょうか。それは、彼女自身が「自分は下手だ」と思っているからです。
 普通、試合に勝つと、結果オーライで勝った事実だけを重視して、ラウンド中にどれだけラッキーがあったか、どれだけミスショットがあったか、なかなか顧みません。大きな試合に勝ったとなったら、なおさらです。
 しかし、渋野は「まだまだ足りない」「自分は下手だ」としっかり認識しています。だから、勝った試合からでも、反省点を探しています。そうやって、自らが下手であると自覚していることが、モチベーションを保つ、ひとつの要因になっていると思います。
 しかも、彼女は”自分が下手”ということを、マイナス発想で考えていません。「今より下はない」「上がっていくしかない」「(練習を)やればやるだけうまくなれるんだ」と思えるプラス思考を持っているので、落ち込むことが少ないのです。 
 それでも、経験を積み、知識や技術を身につけて成長するにつれ、思い切りのよさがなくなってしまわないか、という懸念はあります。
 今の渋野のよさは、あまり物事を複雑に考えない思い切りのよさにあります。パッティングでショートすることが極めて少ないことからもわかるように、彼女はまさに”Never up never in(届かなければ入らない)”という格言を実践し、その思い切りのよさが好結果につながっています。

 一方で、経験を積んだプロの場合、パターを打つ際にも、少なくとも20種類ぐらいの事を瞬時に考えます。オーバーしたらどうするか。ショートしたらどうするか。強く打てば限りなくストレートに近いが、合わせにいったらこう曲がる。その中間なら、こうだろう。これを外すと、トップと何打差になるが、次のホールでバーディーを取れる確率は? その次のホールはどうか? だったら、このパットは入れないとまずい……などなど。
 しかし、結局は(パットが)入るか、入らないか、2つに1つ。そう居直れるのが、渋野の強さです。
 渋野を見ていると、プレーが早いことに気づくと思います。「あそこを狙って、こう打つ」と決めたら、迷わない。それは、「思い切りがいい」と表現できますが、言い換えれば「未熟だから」と言えなくもありません。
 全英女子オープンで迷わずにプレーできたのも、世間を、メジャーという世界を、海外という世界を、”知らなかったから”という一面もあります。普通なら、「ミスしたら、どうしよう」とブレーキがかかります。メジャーの優勝がかかった場面ではなおさらです。
 彼女がこれから多くの経験を積んでもなお、今のような思い切りのよさが消えないか。それが今後、彼女にとっては、大きな課題となるかもしれません。
 米ツアー参戦のタイミングも、渋野の今後のキャリアを左右する、大きな決断となると思います。彼女は今季からの参戦を回避して、2021年から参戦予定であることを表明しました。
 この決断は、さまざまなメリット、デメリットがあるでしょう。
 個人的な見解では、思い切って今季から参戦してもよかったのではないか、と思っています。それは、アメリカに行ったほうが、現在の喧騒から免れ、メディアから追いかけられることも減って、とにかくトレーニングだけに集中し、時間を使うことができるからです。
 また、米ツアーという実戦の場で、いろいろな芝を経験し、慣れることが、今後世界で戦っていくうえでは必須になるからです。アメリカの多種多様の芝を早くから経験することは、プラスになることはあれ、マイナスになることはありません。

 たしかに、米ツアー参戦を果たし、ホームシックにかかって調子を崩す選手もいます。男子プロが、25、26歳で渡米して、スランプに陥り、復調までに数年を要して、一番脂の乗り切っている時期を棒に振ってしまう——そうした例がないわけではありません。
 しかし、渋野は今21歳。失敗しても、立ち直れる時間的な猶予は十分にあります。だから、できるだけ早くアメリカに挑戦すべきだ、と個人的には思います。
 翻(ひるがえ)って、今年はオリンピックイヤーなので、もし米ツアーに参戦した場合、どこまで世界ランキングのポイントを稼げるのか、という不安と背中合わせになるリスクがありました。その点は、米ツアー回避のメリットと言えるかもしれません。オリンピック強化選手となった渋野は、舞台となる霞ヶ関カンツリー倶楽部で、いつでも練習できるという権利も持っていますしね。
 東京五輪に向けて改修された霞ヶ関CCは、バンカーや池が多く、どちらかというと、アメリカのフロリダにあるコースに似ていると言われています。我慢するゴルフではなく、渋野は彼女らしいバーディーを積み重ねていくゴルフを展開し、それがうまくかみ合えば、好結果を出せるコースだと思います。国内で戦うことを選択した今、そのコースでの練習を重ねて、国内に残ったメリットを有効に活用してほしいものです。
 東京五輪におけるメダル争いを考えると、今は韓国人選手以外では、飛び抜けて強い選手はいません。欧州各国が何年も前から力を入れているとはいえ、日本人選手にもメダル獲得のチャンスはあるでしょう。もちろん、その中に渋野は入っていると思います。
 普段どおりのプレーができれば、3位以内に入れる力はあります。金メダルの可能性だって、決してゼロではありません。

Sportiva

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