日本代表タイ戦、森保監督が答えた課題は。前半は戦術的不備を突けず

2024年1月2日(火)18時30分 FOOTBALL TRIBE

森保一監督 写真:Getty Images

サッカー国際親善試合、TOYO TIRES CUP 2024が1月1日に国立競技場(東京都新宿区)にて行われ、日本代表がタイ代表と対戦。最終スコア5-0で勝利した。


後半の5得点で面目を保ったものの、無得点に終わった前半のパフォーマンスは芳しくなかった日本代表。FIFAワールドカップへの出場歴が無く、言わば格下にあたるタイ代表の戦術面の不備を突けなかった。


日本代表が突くべきタイ代表の戦術面の不備とは、何だったのか。ここでは日本代表を率いる森保一監督の試合後コメントを紹介しながら、この点を中心に同代表のパフォーマンスを論評する。




田中碧 写真:Getty Images

日本代表vsタイ代表:試合展開


日本代表はMF伊東純也の右サイド突破、伊藤涼太郎と田中碧の両MFによるミドルシュートでタイ代表のゴールを脅かしたものの、言い換えれば彼ら頼みの攻撃を連発。チーム全体としての連動性は低く、ゆえに前半を無得点で終えた。


後半開始前に投入された堂安律と中村敬斗の両MFの躍動により、日本代表は本来持ち合わせていた攻撃の連動性を取り戻す。


迎えた後半5分、堂安が敵陣左サイドからサイドチェンジのパスを繰り出すと、伊東純也がペナルティエリア右隅でボールをコントロール。この直後の横パスを受けた田中がペナルティエリア内でシュートを放ち、先制ゴールを挙げた。


この1点で勢いづいた日本代表は、後半27分に中村とMF佐野海舟によるパス交換で敵陣左サイドを攻略。佐野の低弾道クロスに反応したMF南野拓実のシュートは相手GKに防がれたが、こぼれ球を中村が押し込んだ。


後半29分には、堂安のコーナーキックにFW細谷真大がヘディングで合わせ、このボールが相手DFエリアス・ドラーのオウンゴールを誘発。同37分にもDF菅原由勢の右サイドからのクロスに、この日がトップ代表デビュー戦となったMF川村拓夢がヘディングで合わせる。このシュートも相手GKに一度セーブされたが、川村自身がこぼれ球を物にした。


この大勝劇に華を添えたのは、後半27分のシュートや、同45分に迎えた相手GKとの1対1を物にできなかった南野だった。後半アディショナルタイムに、相手MFサーラット・ユーイェンがコントロールしきれなかったボールを敵陣ペナルティエリアで奪い、ゴールゲット。日本代表に5点目をもたらしている。




日本代表vsタイ代表、先発メンバー

タイ代表の問題点とは


[4-2-3-1]の基本布陣でこの試合に臨んだタイ代表は、キックオフ直後からGKパティワット・カマイや最終ラインから丁寧にパスを繋ごうとする。この際のタイ代表の選手たちの立ち位置には、大きな問題点があった。


タイ代表はGKや最終ラインからパスを回す際、スパナン・ブリーラットとニコラス・ミケルソンの両DF(両サイドバック)が自陣後方のタッチライン際、且つ相手サイドハーフの手前に立ってしまう場面がちらほら。サイドバックがこの位置でボールを受けた場合、自身の傍にはタッチラインがあるため、左右どちらかのパスコースが必然的に消える。そのうえ、サイドバック自身も相手サイドハーフの寄せ(プレッシング)をもろに浴びるほか、サイドバックから味方サイドハーフへの縦のパスコースも、相手のサイドハーフやサイドバックに塞がれやすい。


これらの理由から、GKや最終ラインからのパス回しの際に、サイドバックは自陣後方のタッチライン際且つ相手サイドハーフの手前に立たないほうが望ましいのだが、タイ代表のサイドバックの立ち位置は、前述の通り悪かった。


奥抜侃志 写真:Getty Images

詰めが甘かった日本代表の守備


タイ代表のサイドバック方面へパスを誘導し、タッチライン際でボールを受けるサイドバックやその周辺の相手選手を捕捉すれば日本代表はより多くのチャンスを作れたはずだが、特に前半はこの守備の段取りが徹底されておらず。ゆえにタイ代表にプレッシングを掻い潜られる場面があった。


この最たる例が、前半10分のタイ代表の攻撃シーン。この場面ではタイ代表の右サイドバック、スパナン・ブリーラットが自陣後方のタッチライン際でボールを受け、ここに基本布陣[4-2-3-1]の日本代表MF奥抜侃志(左サイドハーフ)が寄せたが、スパナンの左隣に立っていたMFウィーラテップ・ポンパーン(ボランチ)を捕捉する日本代表の選手がおらず。このためスパナンとウィーラテップによるパス交換を許し、タイ代表にボールを運ばれてしまった。スパナンのラストパスが繋がらなかったため日本代表は事なきを得たものの、相手のパス回しを片方のサイドへ追い込んだ後のプレッシングは、今後も磨き上げる必要があるだろう。




森保一監督 写真:Getty Images

「もっと良いスイッチと良い追い込み方を」


日本代表の森保監督は「言わば急造のチームで、(チームが)スムーズに機能するのは難しいと思っていた」と、試合後会見の冒頭で率直な思いを明かしている。そのうえで、同代表の守備に関する記者の質問に答えた。


ー日本代表の前半の守備についてお伺いします。これは私(記者)の感想ですが、もう少し高い位置(敵陣の深いところ)、日本代表にとって理想的な場所でボールを奪えそうなシーンがあったように見えました。先ほど「言わば急造チームで、機能性を高めるのが難しかった」と仰っていましたが、それを踏まえて、森保監督は今日の前半の守備にある程度納得されているのか。それとも、もう少し出来た部分があったのか。この点について率直なご感想をお伺いしたいです。


「(納得できた部分とそうでない部分の)両方ありますね。より高い位置でボールを奪おうと、選手たちは何度かトライしながらも、(プレッシングを)外される部分がありました。机上で考えるのは簡単ですけれども、相手も巧いですし、そんな簡単にいくものではないと思って観ていました」


「もっと良いスイッチ(攻守の切り替え)と良い追い込み方をすれば、ボールを奪えた場面は何個かあったかなと。それは仰る通りだと思いますので、そこは更に(レベルを)上げていけるようにしたいです」


「(最前線、中盤、最終ラインの3列が)間延びして、スペースを与えて、これによって相手の攻撃回数が増えて我々のペースが乱れる。(高い位置で)ボールを奪えないまでもこうしたシーンが無かったのは、選手たちが我慢強さを持ち合わせて、修正に繋げてくれたからだと思います。そこは評価したいです」


「より高い位置でボールを奪うというのは、相手を見ながらトライしていきたいと思います。でも(今月開幕の)アジアカップで勝っていこうとしたとき、世界のトップ・オブ・トップの相手に勝とうとしたときは、より我慢強く守備をしながら、ボールを奪いに行くことを磨いていかなければならない。今日の試合を観ていて、そう思いました」




久保建英(左)伊東純也(右)写真:Getty Images

守備の練度向上は急務


「相手も巧いですし、そんな簡単にいくものではない」と森保監督は説明していたが、タイ代表が不合理な選手配置で自陣からパスを回していた事実を踏まえると、この試合に関しては相手チームの隙を確実に突きたかったところ。相手の戦術面の不備を短時間で見抜き、自軍の戦い方に活かせなければ、今月12日に開幕するAFCアジアカップで優勝を逃しかねない。2026FIFAワールドカップ(W杯)で、男子の日本代表としては初となるW杯ベスト8入りを果たすことも叶わないだろう。


久保建英や伊東純也など、守備戦術の理解力と攻撃スキルの両方が高い選手たちが揃っている日本代表だが、先述のアジアカップ制覇や2026W杯でのベスト8進出を成し遂げるためには、誰が出場しても守備のクオリティーが下がらないようにしなければならない。今回のタイ代表戦の前半ではこれを充分に実践できなかったが、まずはアジアカップでこの問題が改善されることを期待したい。

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