F1技術解説 フェラーリPU開発の軌跡(3):独自のダブルバッテリーシステムを採用。信頼性はメルセデスと互角

2019年1月7日(月)14時25分 AUTOSPORT web

 F1の開発はとどまるところをしらず、毎グランプリ、新しいパーツが導入されている。F1iのテクニカルエキスパート、ニコラス・カーペンティアーズが2018年に躍進したフェラーリのパワーユニットについて年代ごとに解説する。


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■フェラーリ独自の「ダブルバッテリーシステム」


 F1マシンに搭載されたバッテリーには、MGU-H(熱エネルギー回生システム)とMGU-K(運動エネルギー回生システム)の両ユニットが発電した電気が送られ、蓄電される。


現行規約では、1周あたり最大4メガジュールの電気を、バッテリーからMGU-Kに送ることができる(電力に直せば120kWに相当し、約33秒間の使用が可能な計算だ)。一方で1周最大2メガジュールしか、バッテリーは受け取ることができない。そこで重要になるのが、MGU-Hのサポートである。


 MGU-Hには、ふたつの役割がある。回生した電気エネルギーを、バッテリーに貯める(容量は無制限)。そしてバッテリーを介さずに、直接MGU-Kに電気エネルギーを送り込む(こちらも無制限)のふたつだ。

フェラーリとメルセデスの2018年仕様パワーユニットのERS


 一方でフェラーリのバッテリーは、ライバルたちとは少し異なった働きをしている。内部ををふたつに分け、違う役割を持たせているのだ。詳細は不明ながら、ひとつはMGU-Kに、もうひとつはMGU-Hに繋げているようだ。


 それによって一方が充電している間に、他方は放電することが可能である。つまりMGU-Kに電気を送ると同時に、MGU-Hからの電気を貯めているというわけだ。こうして平行してふたつのバッテリーを作動させることによって、フェラーリは1周4メガジュールの限度を超えたエネルギーを取り出していると言われる。


 ちなみにFIAが全マシンに設置しているセンサーでは、バッテリーがもしふたつに分かれていたとしても、そのうちのひとつしかモニターできない。そこでFIAはフェラーリだけに特別に、補助センサーを取り付けた。その上で最終的に、フェラーリのバッテリーは合法であると判断している。


■信頼性でも長足の進歩をはたした2018年


 2018年仕様の062型“エボ2”は、ライバルのパワーユニット同様シーズン中に2度のアップグレードを行った。スペック2は6月の第7戦カナダGPで、スペック3は8月末の第13戦ベルギーGPで投入された。それに合わせてシェルも、新仕様の燃料をデビューさせている。スパ仕様では新たに開発された添加剤によって、ノッキングの限界をさらに押し広げたといわれる。

ザウバーのマシンに搭載されたフェラーリ製パワーユニット


 シェルによれば2014年以降、燃料と潤滑油の進化が20%前後のパワーアップに貢献したという。ハンブルグにある研究所では、F1用の燃料と潤滑油の開発だけに約50名のエンジニアが従事している。


 2017年のフェラーリ製パワーユニットは、セバスチャン・ベッテルがマレーシアと日本で立て続けにトラブルに見舞われた。それが2018年は6名のフェラーリドライバーのうち、年間3基の制限を超えたのはマーカス・エリクソン(ザウバー)のみだった。バルテリ・ボッタスだけが4基目を使用したメルセデスPUと、信頼性の点でも互角だったと言っていいだろう。


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