桃田賢斗は東京五輪で金に最も近い。衝撃的な勝率は攻撃強化から生まれた

1月7日(火)6時10分 Sportiva

東京オリンピックで輝け!
最注目のヒーロー&ヒロイン
バドミントン 桃田賢斗 編

 4年間の想いをエネルギーに、東京五輪の金メダルロードを駆け抜ける。

 バドミントン男子シングルスの桃田賢斗(NTT東日本)は、東京五輪で日本勢で金メダル獲得を実現する可能性が最も高い選手と言える。2018年、19年の世界選手権を連覇。18年9月末から世界ランク1位をキープしており、19年はBWF(世界バドミントン連盟)の年間最優秀選手に選出された。


昨年12月のツアーファイナルズでも優勝した桃田賢斗

 なにしろ、他種目のトップ選手が主要な国際大会で挙げられる勝利が6〜8勝というところ、桃田は世界選手権を含めて11個のタイトルを獲得。1年間の国際大会の戦績が67勝6敗で、91.8%の勝率をマークしたのだから、当然だ。

 バドミントン界では、桃田が憧れるレジェンドプレーヤーのひとりで、過去五輪3大会で銀メダルを獲得したリー・チョンウェイ(マレーシア、19年夏に引退)が、2010年に10勝を達成している。だが、これを超える今回の桃田の活躍は、バドミントン界における新たなレジェンドの誕生を意味する衝撃的な内容で、本人も「記録的に彼を抜いたことは、本当にうれしい」と素直に喜んだ。

 東京五輪の金メダル候補となるまでの道のりには、あの失態がある。前回のリオデジャネイロ五輪を間近に控えた2016年4月に、国内で違法賭博店を利用していたことが発覚。無期限の出場停止処分を受け、世界ランク2位で金メダル候補であったにもかかわらず、リオ五輪出場は白紙となった。

 約1年後に処分が明けて戦列復帰したものの、当初は国内の大会でも勝てないほどに試合勘と自信を失っていた。17年末の全日本総合選手権では、準々決勝で敗退。タイトルに届かなかった。しかし、18年に日本代表に復帰すると、同年4月のアジア選手権で世界の強豪をことごとく破って優勝した。

 この時「復活というよりは、進化できるように頑張りたい」と話したが、その言葉のとおり、失態から約3年半を経た現在の桃田は、世界ランク1位に到達してもなお、進化を続けている。

 昨年末、12月11日〜15日に中国の広州で行なわれたBWFワールドツアーファイナルズは、年間成績上位8人しか出場できないハイレベルな大会だが、桃田は予選リーグから1試合も負けなかった。特筆すべきは、決勝戦の勝ち方だ。相手は、過去の対戦で何度も死闘を繰り広げている、好敵手のアンソニー・シニスカ・ギンティン(インドネシア)。スピードがあり、攻撃的な選手だ。互いに攻め合った第1ゲーム、桃田はギンティンに押し負けた。しかし、相手の土俵に踏み込むような戦いぶりこそ、この1年の桃田の進化だった。

 桃田は、ギンティンとは異なり、コントロールを生かしたレシーブ主体の戦い方を得意としてきたが、相手に対策を練られるようになった。前回大会では、世界ランク1位になっていたものの、当時世界ランク3位の石宇奇(シー・ユーチ=中国)に完敗。最初からトップギアを入れてきた相手に攻め切られ、レシーブ一辺倒だった桃田は、相手にプレッシャーをかけられずに敗れた。

 そこで、2019年はスピードアップと攻撃力の向上をテーマに取り組んできた。苦手分野だった攻撃力の強化と、ハイペースの打ち合いに耐え得る体力の増強により、桃田は、格下には打ち勝って早く試合を終わらせて体力をキープできるようになり、連戦でも結果を出し続けられるようになった。

 そして、攻撃の強化は、コントロール力を武器にする桃田の戦い方の幅を広げた。

 話を19年12月、ワールドツアーファイナルズ決勝のギンティン戦に戻す。桃田は、第2ゲームも「スマッシュを決められて、取れないなと思い、心が折れそうになった」と話した厳しい展開を強いられたが、終盤に戦い方を変えてゲームを制した。攻撃によるミスをなくす、本来の戦い方に戻すと、相手が攻め急いでミスをするようになった。1−1で迎えた最終の第3ゲームでも5−12と追い込まれてから、丁寧なラリーで7連続得点を奪って追いついた。最後は、足を痛めた相手を、高精度のラリーで四隅に振り回して、ついに主導権を掌握して2−1の逆転勝利に持ち込んだ。

 桃田のスマッシュは、相手にことごとく拾われており、攻め勝つ展開には至らなかったが、攻めに出る戦い方をできるようになったことで、終盤に疲弊した相手とのクオリティー勝負に持ち込むことができたのだ。

 優勝後の会見で桃田は「去年の決勝戦は、すごく簡単に負けた。今日はディフェンス主体ではなく、どんどん攻めていこうと、去年の試合のことも意識しながら試合をしたし、自然と自分のスピードに表れたと思う。そこが、自分が最後に粘れて、相手がバテた要因の一つかなと思う」と手応えを語った。

 いまや、全選手から研究され、追われる立場にある。12月17日に更新された世界ランクの上位10人を見てみると、25歳の桃田は上から4番目の年齢。16年リオデジャネイロ五輪の王者、諶龍(チェン・ロン=中国、30歳)、世界ランク2位の周天成(チョウ・ティエンチェン=台湾、29歳)といった年上の選手もいまだ強敵だが、今回のワールドツアーファイナルズで対戦したギンティン(23歳)らは、いずれも年下だ。桃田が憧れる、リー・チョンウェイや、五輪3大会金メダルの林丹(リン・ダン=中国)のように長くトップに輝き続けるためには、今後、力を伸ばしてくる後進も振り切らなければならない。

 桃田はファイナルズ優勝後に「相手が強くなると、攻撃の精度はまだまだ。ラウンド(上体を利き腕の反対側に曲げた状態)からのストレートスマッシュは、何度もアウトになった。スピードを上げた時のコントロールは、まだまだ。来年もスピードを上げて、コントロールをつけることをテーマに取り組みたい」とさらなる進化に意欲を示した。

 決勝戦でギンティンを破った桃田は、会場で日の丸を振って応援していた日本のファンを指差した。第2ゲームで心が折れそうになったと話した桃田の言葉の続きは「サポートしてくれている人たちを思い出して、ここで折れるわけにはいかないと思って踏ん張って、ファイナルゲームも(途中まで)負けていたけど、強い気持ちで制すことができたかなと思う」というものだった。

 出場停止の失態から、自身を見直し、あらゆるサポートを力に変えて、王者の座まで這い上がった。桃田は、歩みを止めずに進化し続ける。その先に、東京五輪の金メダルが必ずある。

Sportiva

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