浦和レッズのクラブW杯決勝T進出シミュレーション。格など関係なし!

2025年1月8日(水)18時0分 FOOTBALL TRIBE

浦和レッズ 写真:Getty Images

FIFAコンフェデレーション(FIFA連盟)全6カ国からの32クラブチームが激戦を繰り広げるFIFAクラブワールドカップ2025が、今年6月15日から7月13日にアメリカの12会場で開催される。


日本から唯一の参戦となる浦和レッズは、2022年のAFCチャンピオンズリーグ(ACL)優勝で出場資格を得た。組み合わせ抽選会の結果、ポット4の浦和はグループEでリーベル・プレート(アルゼンチン/ポット1)、インテル(イタリア/ポット2)、モンテレイ(メキシコ/ポット3)と対戦することが決定。当然のことながら、対戦する3チームは全て格上だ。


しかし思い出してほしい。2022年のFIFAワールドカップ(W杯)カタール大会でポット4だった日本代表は、ドイツ代表、スペイン代表を破り、グループ1位で決勝トーナメント進出を果たした。一方で、格的には劣らないと思われていたコスタリカ代表には0-1で完封負けを喫し、FIFAランキングがピッチ上では何の意味もないことを示した。


もちろん国を代表する選手の集合体である代表チームと、国籍を問わず好選手を集め日常的にトレーニングを積んでいるクラブチームでは、試合へのアプローチや戦術理解度は全く異なる上、試合数も段違いだ。しかし逆の視点から見れば、クラブチームは試合の数だけサンプルの数も多い。同組の強豪クラブが浦和の試合をスカウティングし対策を練ってくるかどうかは分からないが、浦和のスカウティングチームは、ひと泡吹かせようとありとあらゆる手段を使うだろう。


ここでは、FIFAクラブワールドカップ2025グループEで浦和を待ち受ける3クラブの特色、弱点を探り出し、浦和が番狂わせを起こす可能性を検証したい。




リーベル・プレート 写真:Getty Images

リーベル・プレート


アルゼンチン/クラブランキング上位/ポット1


アルゼンチンのリーベル・プレートは、同クラブのレジェンド、マルセロ・ガジャルド監督が率いる。現役時代には、欧州挑戦(モナコ/1999-2003、パリ・サンジェルマン/2007)や、2度のW杯で活躍できなかったものの、リーベル・プレートでの通算9シーズン(1992-1999、2008-2010)で137試合に出場。1996年には当時のラモン・ディアス監督の下、リベルタドーレス杯優勝にも貢献した。


ガジャルド監督は、アルゼンチン代表時代の恩師であり、「エル・ロコ(変人)」と呼ばれるほどの戦術マニアとして知られるマルセロ・ビエルサ監督(現ウルグアイ代表監督)から多くの影響を受けており、前からのプレッシングという南米的なサッカーの中に、縦への早い展開を基本的な戦術としている。


ビエルサ監督仕込みのシステマティックなプレスの掛け方から、縦に早いダイレクトプレーでゴールを目指す戦い方で、“ファンタジスタ”だった自身の現役時代からは想像もできないような泥臭いプレースタイルのチームだ。


手数を掛けて崩すよりも、DFラインの手前でマークのズレを生じさせ、空いたスペースの裏を取る攻撃スタイル。ポゼッションにこだわりはなく、タイトな守備から攻撃に転じる際にはロングボールも用い、アーリースローインも速攻の一環として多用する。とりあえずロングボールを蹴り、セカンドボールを拾った上で、そこから攻撃が開始されるイメージ。フォーメーションは【4-4-2】と【4-3-1-2】の併用だ。


急所を挙げるとすれば、相手カウンター時、サイドバックが突破を許しポケットに侵入されると、センターバックとボランチが1対1の守備を強いられ、相手の3列目あるいはDFからの飛び出しへの対応が間に合わないことが多い点だ。


浦和がリーベル・プレートに付け入るならばこの弱点だろう。キーマンには、昨2024シーズン途中加入で左サイドバックのレギュラーポジションを奪取し、攻撃面でも持ち味を発揮してJ1リーグで4得点を記録したDF長沼洋一を指名したい。




インテル 写真:Getty Images

インテル


イタリア/クラブランキング上位/ポット2


2024/25シーズン、セリエA第18節終了時点で3位ながら、総失点は首位ナポリに次ぐ最小の15。とにもかくにも点を取られないチーム、それがインテルだ。【3-5-2】のフォーメーションを敷き、堅守を誇る守備陣に加え、攻撃陣もリーグ1位の45得点。このスタッツだけを見ると、浦和がインテルに勝つ可能性はほとんどないようにも思える。


しかし、リーグ戦38試合で総失点が22で第35節まで無敗だった昨シーズンに比べると、失点数のペースが増しているインテル。手厳しいイタリアメディアからは、2021シーズンから監督に就任し4季目の指揮を執るシモーネ・インザーギ監督への批判が見られるようになってきた。


サウジアラビアで行われたイタリアスーパーカップでも1月3日の準決勝でアタランタを2-0で下したものの、7日の決勝ではミラン相手に2点差をひっくり返され2-3で敗れ、準優勝に終わった。実に在籍7シーズン目となるディフェンスリーダーでオランダ代表のDFステファン・デフライが32歳を迎え、衰えが指摘されているのに加え、セットプレーからの失点も目立つようになった。


攻撃陣は、トルコ代表MFハカン・チャルハノールを中盤の底に置き、そこからの配球を軸としている。しかし、得点ランキングトップタイの12得点を記録しているフランス代表FWマルクス・テュラムのスピードと、昨シーズンのセリエA得点王のアルゼンチン代表FWラウタロ・マルティネスのフィジカルとテクニック任せの部分が大きく、強敵相手に大勝したかと思えば、次戦では格下相手にゼロウノ(1-0)の辛勝という、調子の波が大きいことが首位に立てない要因となっている。


また、デフライを中心とした3バックが安定したパフォーマンスを維持できていない点も指摘されている。現在のところ、アレッサンドロ・バストーニとヤン・ビセックが脇を固めているが、この3人の1人でも欠けると、途端に組織的守備に綻びが生じるのだ。ベンジャマン・パバールやフランチェスコ・アチェルビをローテーション起用して凌いでいるものの、特にセットプレー時に弱さが顔を覗かせる。


浦和が勝利するとすれば、セットプレーに勝機を見い出すことが近道となる。もちろん0-0の時間帯を出来るだけ長く保ち、後半20〜30分以降にFKを得てワンチャンスをモノにしたい。そこまでは“ドン引き”と言われようが、相手2トップと球の出どころであるチャルハノールを徹底マークした上で膠着状態に持ち込み、相手をイライラさせることも重要だ。


そこから相手陣地深くでファールを得ようものならこっちのモノだ。ここでキーマンとなるのは、柏レイソルから完全移籍で獲得したMFマテウス・サヴィオだろう。昨2024シーズン残留争いに巻き込まれた柏の中でも独り気を吐き、9ゴール7アシストを記録してベストイレブンにも選出された。得点やアシスト、プレースキッカーのイメージが強いが、昨季のJ1リーグで総走行距離で391.3キロを記録し、リーグ7位に位置する“走って守れる”選手でもある。おそらくグループで最も強いであろうインテルを倒すには欠かせない武器となる。


モンテレイ 写真:Getty Images

モンテレイ


メキシコ/2021CONCACAFチャンピオンズリーグ優勝/ポット3


現フォーマットになる以前の同クラブW杯で、2度の3位入賞(2012年、2019年)を果たしているメキシコの名門モンテレイ。2021年のCONCACAFチャンピオンズリーグ決勝で同国のライバルであるクラブ・アメリカを破り、5度目の中南米王者に輝いて同大会出場を決めた。


しかしそれ以来タイトルから見放されているモンテレイ。国内リーグのリーガMXアペルトゥーラではリーグ戦5位からプレーオフ決勝に進出したものの、クラブ・アメリカに敗れタイトルを逃した。チームの現状は、ここ最近タイトルと縁のない浦和の現状に似ているかも知れない。


人口約568万人のモンテレイ都市圏唯一の1部所属クラブで、ホームスタジアムのエスタディオBBVA(エスタディオ・デ・フットボル・モンテレイ)を埋め尽くすだけではなく、アウェイにも熱いサポーターが大挙することでも知られており、この辺りも浦和に似通っている。


このチームを率いるのは、リーベル・プレートやバイエルン・ミュンヘン、マラガ、マンチェスター・シティで活躍した元アルゼンチン代表DFのマルティン・デミチェリス監督だ。


2017年に現役を退いたマラガで、ミチェル監督のアシスタントコーチとして指導者のキャリアをスタート。バイエルン・ミュンヘンのユースチーム、Bチームの監督を歴任し、2022年にはリーベル・プレートの監督に就任。就任1年目の2023シーズンに38度目のリーグ優勝をもたらし、スーペルコパなど計3つのタイトルを獲得したが、リベルタドーレス杯でベスト16敗退に終わり、さらに翌2024シーズンは国内リーグでも不振に陥ったことで途中解任された。


まだ44歳の青年監督だが、背番号10を背負う元スペイン代表MFセルヒオ・カナレスやアメリカ代表FWブランドン・バスケス、メキシコ代表FWヘルマン・ベルテラメといった好選手が揃い、30歳のMFオリベル・トーレス、同じく30歳のMFルーカス・オカンポス、31歳のFWヘスス・マヌエル・コロナ(登録名は「テカティート」)、36歳のDFエクトル・モレノら百戦錬磨のベテランも控えており、これらのタレントを生かした攻撃サッカーを志向している。


ポゼッションを重視し、中からもサイドからも攻めることが出来るチームだ。同グループで最も“フットボールらしいフットボール”をしてくるチームとも言える。しかも浦和と対戦するのはグループリーグ3戦目とあって、星勘定次第ではキックオフと同時に猛攻を仕掛けてくる可能性もあるだろう。


浦和が勝利を目指すためには、カウンターに徹するしかない。相手はテクニックに優れる選手ばかりだが、30代の選手も多く、大会3戦目であることを考慮すれば“スタミナ切れ”を起こすことも十分に考えられる。付け入る隙があるとすればそこだ。


浦和には幸い、連戦にも耐え得りそうな若い選手が揃っている。MF渡邊凌磨やMF松尾佑介、さらにはコルトレイクから完全移籍で加入したMF金子拓郎の突破力を生かし、仕上げはFWチアゴ・サンタナ、若しくはユース育ちながら関東リーグの東京ユナイテッドから這い上がり、ザスパ群馬、アルビレックス新潟を経て浦和帰還を果たしたFW長倉幹樹のフィジカルを生かし、得点を狙うのだ。


このモンテレイ戦の浦和のキーマンには、欧州再移籍の噂もあるが、ワールドクラスのフィジカルと決定力を持つFWチアゴ・サンタナを挙げておきたい。




マチェイ・スコルジャ監督 写真:Getty Images

浦和の「愛と意志と運」に期待


もちろんこれらは“机上の空論”でしかない。しかし何が起こるか分からないのがサッカーの面白さでもある。


2010年の南アフリカW杯での日本代表は、決勝トーナメント進出はおろか、3連敗するという大方の予想だった。しかし岡田武史監督の下、本職はMFである本田圭佑の1トップという大胆な選手起用が奏功し、初戦のカメルーン戦を1-0で勝利すると、決勝に進むことになるオランダには0-1で敗れたものの、3戦目のデンマーク戦で本田と遠藤保仁のFKなどで3-1と快勝し16強入り、下馬評を覆してみせた。


2014年のロシア大会W杯では、本戦直前にヴァイッド・ハリルホジッチ監督が解任され、技術委員長だった西野朗氏が新監督に就任するというドタバタ劇があった。にも関わらず、初戦のコロンビア戦の前半3分、相手DFカルロス・サンチェス・モレノがMF香川真司のシュートを手で止めてしまい一発退場。このPKを香川自身が決め、その後同点に追いつかれたもののFW大迫勇也の勝ち越しゴールで勝利を収め波に乗り、結果、W杯史上初となる「フェアプレーポイント」によって2位突破を果たした。


こうしたアクシデントが浦和に味方しないとは言い切れないはず。浦和のゴール裏の横断幕にあるように「愛と意志と運」が短期決戦には必要なのだ。


浦和のポーランド人指揮官、マチェイ・スコルジャ監督は、2022年に浦和をALC(AFCチャンピオンズリーグ)優勝に導いただけではなく、監督キャリアをスタートさせた母国のアミカ・ロンキでは2004/05シーズン、ポーランドのクラブとして初めてUEFAカップ(現UEFAヨーロッパリーグ)へと導き、その後、指揮したディスコボリア、ヴィスワ・クラクフ、レギア・ワルシャワ、レフ・ポズナンでもクラブにタイトルをもたらしている。中でもカップ戦での強さが目立つ印象だ。


お世辞にも表情豊かとは言えず、試合後も笑顔を見せることもないため、相手にとっては不気味な印象すら与えるスコルジャ監督。“策士”らしさを身に纏い、能面のような表情で佇むその姿に、相手ベンチは「一体、何を考えているのか…」と警戒してくるだろう。本人も52歳という、監督として脂の乗り切った年齢に差し掛かり、同大会を機に欧州へのステップアップを狙う野心を抱いていても不思議ではない。これは浦和イレブンにとっても同じだろう。


浦和はこのクラブW杯に出場するだけで、20億ユーロ(約32億円)を手にする予定だという。決勝トーナメント進出を決めれば、そこになんと5,000万ユーロ(約81億円)ものボーナスが加わるとされている。これは浦和の営業収入1年分に匹敵する金額だ。


この大会のために国内のJ1リーグ、ルヴァン杯、天皇杯を「捨てろ」などと無責任なことは言えないが、6月中旬をコンディションのピークに持ってくる必要はあるだろう。スコルジャ監督の下、世界的に有名なクラブをバッタバッタと倒していく姿を想像するだけでも、夢があるとは言えないだろうか。

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