シリア戦、カタール戦は、森保一監督続投か否かを判断する試合になる

1月11日(土)13時49分 Sportiva

 アジアU‐23選手権。初戦の対サウジアラビア戦で、U‐23日本代表は、バックパスのミスからPKを許し、1−2で敗れた。森保一監督は試合後、通常ではあり得ないミスが起きたことを悔やんだ。

 五輪開催国の特権で、五輪本大会への出場が決まっている日本はこの大会に、オブザーバー的な、他国とは異なる立ち位置で臨んでいる。自ずと、メディアの関心は五輪代表選手選考レースに集まりがちだ。この試合で言うならば、ミスを犯した当該選手の問題として処理される向きがある。

 しかしサッカーはチームスポーツだ。その視点ではチームとしての問題が矮小化されかねない。実際、この失点シーンから、森保サッカーの負の側面を掘り下げていくことは十分可能なのである。


サウジアラビア戦で選手に指示を与える森保一監督

 この試合、日本の攻勢は食野亮太郎(ハーツ)の同点弾を機に加速していった。支配率は上昇。攻める日本、守るサウジアラビアという構図が鮮明化した。サウジアラビアの攻撃は自ずとカウンター主体になる。日本の最終ラインは、試合を優勢に進めていたにもかかわらず、局所的に緊張感に包まれることになった。

 サウジアラビアは通常、オーソドックスな4バック(4−4−2あるいは4−2−3−1)を敷く。個人技、パスワークを駆使し、中盤を大切にするつなぐサッカーをする。言ってみれば、日本人好みのサッカーをする。

 ところがこの日のサウジアラビアは、日本の布陣を意識したのか、日本と同じ3−4−2−1で臨んできた。ピッチの各所にズレが起きにくい、がっぷり四つのミラーゲームを挑んできたかに見えた。にもかかわらず、両者は(とくに後半)、なぜピッチに大きく異なる絵を描くことになったのか。 

 両者が敷いた3−4−2−1は、うっかりしていると5バックになりやすい守備的と言われても仕方のない布陣だ。後ろが重たいサッカー。守る位置は低い。ボールを奪う位置も当然、低くなる。そこからボールをつないでいこうとすれば、相手ゴールまでの距離は長いので、奪われる危険は増す。リスクを避けようとすれば、攻撃の選択肢は必然、縦に速いカウンター的なものになる。

 サウジアラビアは中盤をつなぐ本来のスタイルをやめ、布陣本来の特性に基づくサッカーを展開した。後ろを固め、中盤を省略し、少ない人数で攻めた。3−4−「2−1」の前の3人にお任せ、と言わんばかりのその少々荒っぽいサッカーは、しかし、思いのほか効果を発揮した。日本の最終ラインにダメージを与えていた。3人のアタッカーの能力が高かったからだ。その高い能力が、むしろシンプルかつストレートに反映されることになったのだ。
 
 サウジアラビアに、布陣の特性を最大限に活かすサッカーを展開されたところに、日本の最終ラインにミスが生じた一番の原因がある。

 日本が描いた絵はまさにその逆だった。3−4−2−1でつなぐサッカーをした。してしまった、と言うべきだろう。

「賢く器用にプレーできる中盤選手が攻守に絡むことが日本の特徴。そうしたよさを活かしながら、いろんなオプションを試していきたい」とは、森保監督がE−1選手権(昨年12月)のメンバー発表記者会見で述べた台詞だが、その言葉から読み解くことができるのは、中盤重視のサッカーだ。サウジアラビアが本来、追求しているものと相違ないことになる。

 にもかかわらず、布陣は3−4−2−1を採用する。守りを固め、カウンターから前線の突破力に期待するサッカーをしたいのなら、それでいい。日本の1トップ2シャドーの3人が、サウジアラビアの前線の3人のように強力ならば、言い換えれば、そこが日本のストロングポイントがなら、布陣と目指すサッカーとが合致することになる。

 だが現実には、そこは日本のウィークポイントだ。森保監督自ら口にするように、強みは中盤にある。それでもなぜ3−4−2−1にするのか。

 その4列表記からもわかるとおり、選手の配置は前に行くほど先細りになる。2シャドーは4−2−3−1の3の両サイドより、5mから10m、内で構える。両ウイングバックと絡み、サイドでコンビネーションを発揮する機会はほとんどない。その結果、攻撃のルートは真ん中に偏る。相手の3バックに正面から向かっていくことになる。カウンターではなく遅攻で。

 サイド攻撃はどうかと言えば、1試合に何度か、大外を単騎で駆け上がったウイングバックが、ゴール前に放り込む程度だ。その質は限りなく低い。よって、決定機の象徴と言うべき、ゴールライン際から距離の短いマイナスの折り返しがゴール前に送られてくる機会はほとんどない。

 サウジアラビア戦のとくに後半、試合を優勢に進めた日本だが、構築できた決定的チャンスはどれほどあっただろうか。日本のGK大迫敬介(サンフレッチェ広島)がこの試合で2度にわたり披露した美技を、相手GKに幾度させたかと言えば、ゼロだった。決定的なチャンスでも日本はサウジアラビアに上回られていた。

 3−4−2−1上で展開される、真ん中攻撃中心のパスサッカーの非効率性が、白日のもとに晒された試合。その姿は、ジーコジャパン、第2期岡田ジャパン(W杯本大会は除く)と瓜ふたつだった。これでは行き着く先は見えている。これはいま初めて鳴らす警鐘ではない。就任直後から十分予想できたことが、そのまま現実になっているに過ぎない。

 岡田武史監督は、最後に間違いに気づき、南アフリカW杯で従来とまったくコンセプトの異なるサッカーを展開した。土壇場になって賢明な選択をした結果、日本をベスト16に導いた。森保監督はどうなのか。五輪まで半年。このまま突き進めば、金メダルどころかベスト4も怪しくなる。

 シリア戦、カタール戦。残るグループリーグの2試合は、選手選考レースというより、監督続投か否かを判断する試合になる。見られているのは選手ではなく森保監督。選手のミスを残念がるのではなく、自分を心配する時を迎えている。賢明な判断ができるか。優しく、いい人そうな顔をしている森保監督だが、頑固そうな一面を垣間見ることもできるだけに心配だ。

Sportiva

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