J2リーグ2025シーズン新監督4名の期待度

2025年1月13日(月)18時0分 FOOTBALL TRIBE

小菊昭雄監督(左)ジョン・ハッチンソン監督(中)岩政大樹監督(右)写真:Getty Images

2025シーズン、J1リーグでは8クラブで新監督を迎えたものの、J2リーグでは4クラブと動きが少なかった印象だ。うち3クラブが1年でのJ1復帰を目指す降格クラブ。もう1クラブはJ3から昇格したにも関わらず、さらなる飛躍を目指しあえて指揮官交代に踏み切った初昇格クラブだ。


J2リーグは、上位2クラブが自動昇格、6位以上で昇格プレーオフ進出、下位2クラブにはJ3降格が待っており、“沼”にも例えられる厳しいリーグだ。ここでは、J2クラブが迎えた4人の新指揮官の特長とともに、チームの展望を検証したい。


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岩政大樹監督 写真:Getty Images

北海道コンサドーレ札幌:岩政大樹監督


期待度:★★★☆☆


実に7シーズンもの長き間、北海道コンサドーレ札幌を率い、2024シーズン限りで勇退したミハイロ・ペトロヴィッチ前監督。サンフレッチェ広島の監督として2006年に来日し6シーズン指揮し、2012年に浦和レッズに移籍し6シーズン指揮し、日本での生活は19年にも及ぶ。もちろんこれは外国人監督としてはJ最長だ。その監督キャリアの最終年にチームをJ2に降格させてしまったものの、「ミシャ」と親しまれ、Jリーグへの貢献は計り知れない。


再スタートを図る札幌を率いるのは岩政大樹新監督だ。2022シーズン途中、鹿島アントラーズでレネ・ヴァイラー監督解任により、コーチから昇格する形で監督に就任した。チームを立て直し4位にまで引き上げ、翌2023シーズンも5位に食い込んだものの、無冠に終わったことで退任となった。


2024年1月には、ベトナム1部リーグのハノイFCの監督に就いた岩政監督。就任時点で8位だったが立て直しに成功し、10勝3分5敗という成績で最終的には3位にまで引き上げた。ベトナムカップでも準優勝に導いた。ハノイは岩政監督に続投オファーを提示したものの、本人の強い希望により、半年でベトナムから帰国。その後は解説業と並行して、母校の東京学芸大学のコーチを務めた。


プロクラブの監督経験は通算約2年とあって、明確なスタイルを確立しているわけではないが、現役時代は2013年に鹿島退団後、タイリーグのテロ・サーサナ(現ポリス・テロ)やJ2ファジアーノ岡山、JFL東京ユナイテッドでのプレーも経験。コーチとしては、前述の東京学芸大以外にも東京大学や上武大学サッカー部を指導し、上武大では准教授も経験した。


降格チームの宿命だが、札幌は“草刈り場”と化し、FW鈴木武蔵やFW菅大輝、DF岡村大八らの主力が引き抜かれた。一方でベルギー1部のコルトレイクからMF高嶺朋樹が3シーズンぶりに復帰し、FW中島大嘉もレンタル先の水戸ホーリーホックから復帰するなど、J2を戦う上で必要最低限の戦力は整えた。


オーナー企業の石屋製菓が6億円の追加出資を決定するなど、降格を機にクラブを立て直そうとする本気度が伺える。J2クラブとしては比較的多い32人もの選手を抱え、激しい競争を促している岩政監督。「ミシャサッカーを継承し、攻撃サッカーを目指す」と述べたが、まずはメンバー選びに頭を悩ませることになりそうだ。




ジョン・ハッチンソン監督 写真:Getty Images

ジュビロ磐田:ジョン・ハッチンソン監督


期待度:★★☆☆☆


すっかりエレベータークラブとなり、再び1年でJ2に戻ってきたジュビロ磐田。横内昭展前監督は退陣となり、新監督に横浜F・マリノスの暫定監督だったジョン・ハッチンソン監督を招聘した。


しかし磐田は元々外国人監督とは相性が悪いクラブで、成功と呼べるのはJ参入当初のハンス・オフト監督(1994-1996)と、バウミール監督(1998)くらいで、パルメイラスの監督に就任するため辞任したルイス・フェリペ・スコラーリ監督(1997)を除けば、ギョキッツァ・ハジェヴスキー監督(2000)、アジウソン監督(2006-2007)、ペリクレス・シャムスカ監督(2014)、フェルナンド・フベロ監督(2019-2020)はすべて途中解任されている。


昨2024シーズン、19得点のエースFWジャーメイン良をサンフレッチェ広島に引き抜かれたにも関わらず、その穴を埋めるのが名古屋グランパスからの期限付き移籍で獲得したFW倍井謙と、アビスパ福岡から獲得したFW佐藤凌我、筑波大卒のルーキーのMF角昂志郎では心もとない。


藤田俊哉SD(スポーツダイレクター)は目標を「アクションフットボールを実現した上でのJ2優勝」としたが、新体制の顔触れを見ると、その仕事ぶりには物足りなさが残る。


昨シーズンのJ2を見ても、“反則級”と呼ばれるほどの選手層を誇らなければ、優勝はおろか昇格などおぼつかないことは明白だ。J1クラスの強烈な攻撃力を持つブラジル人選手を揃えたV・ファーレン長崎でさえも、プレーオフの末に敗れ去った。少々、J2を侮っている節が感じられる。


このままの体制では、エレベーターどころかJ2定着も現実になりかねない。ハッチンソン監督は優秀な指揮官だが、魔法使いではない。この陣容では監督が志向する攻撃サッカーを形にすることにも苦しむのではないだろうか。


FC今治 サポーター 写真:Getty Images

FC今治:倉石圭二監督


期待度:★★☆☆☆


ついにJ2の舞台にまで上り詰めたFC今治。2012年に愛媛FCから独立する形で発足して四国リーグに参戦し、2014年に元日本代表監督の岡田武史氏がオーナーに就いてから11年が経った。昨2024シーズン、J3リーグ2位で初昇格に導いた功労者の服部年宏監督を退任させる驚きの人事を発表。新監督に就任したのは、V・ファーレン長崎のコーチを務めていた倉石圭二監督だ。


倉石監督は、生まれ故郷の宮崎日本大学高校で指導者キャリアをスタートさせ、当時JFLのテゲバジャーロ宮崎(2018-2020)での監督経験はあるものの、S級コーチライセンスを取得したのは横浜FCのコーチを務めていた2023年。当然ながら、Jクラブの監督は初めてとなる。実績らしい実績は、長崎のコーチとして昨シーズンJ2で3位に食い込み、プレーオフに進出(準決勝でベガルタ仙台に敗退)したことくらいだろうか。


選手としても、元日本代表FW大久保嘉人(2021年引退)を擁し高校3冠(インターハイ・国体・全国高校サッカー)を果たした長崎県立国見高校を経て、専修大学に進んだもののJ入りは果たせず。JFLと九州リーグを行ったり来たりしていたホンダロックSC(現ミネベアミツミFC)での5シーズン(2005-2009)の実績しかない。


矢野将文社長はこの人事について「J1を目指すため」と説明したが、逆の見方をすれば「服部監督では無理」と言っているようなものだ。後任が新米監督だったことも含め、服部監督はプライドを大いに傷付けられたことだろう。すぐさま古巣のジュビロ磐田に請われ、ジュニアユースの監督に就いたことがせめてもの救いだ。


今治は、2017年のJFL昇格以来、毎年のように指揮官交代を繰り返しており、9シーズン目で倉石監督が10人目となる。2019シーズンもJFL3位でJ3昇格に導いた小野剛元監督を退任させ、スペイン人のリュイス・プラナグマ・ラモス監督(現エミレーツ・クラブ監督)を招聘している。


岡田オーナーと矢野社長が何を求めて倉石監督を抜擢したのかは不明のままだ。FWマルクス・ヴィニシウスの残留を成功させ、FC岐阜からFW藤岡浩介を獲得し、昨シーズンJ3得点王の2人を揃えた(ともに19得点)。この2人の決定力を生かした攻撃サッカーを志向するのだと思われる。


しかしチームが不調に陥ると、会長職にありながら、現場に口出ししていたという岡田オーナー。このクラブで監督を務めるということは、中間管理職的な能力を求められ、結果を出してもクビの恐怖と闘わなければならない。これはなかなか難しい仕事と言っていいだろう。




小菊昭雄監督 写真:Getty Images

サガン鳥栖:小菊昭雄監督


期待度:★★★★☆


サガン鳥栖の小菊昭雄新監督は、兵庫県のサッカーの名門滝川第二高校出身だが、出場機会がほとんどないまま卒業し、愛知学院大学卒業を前にした1998年2月からセレッソ大阪下部組織のコーチにアルバイトとして指導者キャリアをスタートさせた異色の指揮官だ。


3度にわたりC大阪の指揮を執ったレヴィー・クルピ監督(2007-2011、2012-2013、2021)の後任として、コーチから昇格する形でC大阪の監督に就任。当初は“つなぎ”と思われていたものの、ルヴァン杯2年連続準優勝(2021、2022)や、天皇杯4強(2021)と8強(2022)、J1リーグでも1桁順位が続いたことで、3年半もの間その座に就いていたが、昨2024シーズンは不振に終わり勇退となった。


下部組織のコーチのみならず強化部の経験もあり、コーチ時代にはJ2も経験していることから、鳥栖の1年でのJ1復帰に向けては打って付けの人選といえるだろう。また、前監督の木谷公亮氏をヘッドコーチとして残し、昨シーズン限りで引退したOBの藤田直之氏もアシスタントコーチに任命している。


また、実に22人もの選手を移籍や引退で失いながらも、ボタフォゴからブラジル人FWジョーや、レノファ山口からFW酒井宣福、清水エスパルスからMF西澤健太、いわきFCからMF西川潤といった即戦力を補強。2011年以来、14シーズンぶりのJ1へ向け、万全の体制で挑む。


鳥栖は、2022年の川井健太監督就任以来低迷が続き、金明輝元監督(2018-2021)が積み上げた貯金も使い果たした上でJ2に降格してしまった。しかし、この体制ならプレーオフ圏内はおろか自動昇格圏の2位以上も狙えるだろう。

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