高校サッカー選手権を振り返る。大会傑出選手4名とPK戦について
2023年1月14日(土)18時0分 FOOTBALL TRIBE

2022年12月28日から1月9日まで繰り広げられた第101回全国高校サッカー選手権大会。全都道府県から参加した高校生による熱い戦いは、岡山学芸館高校(岡山)の初優勝で幕を閉じた。
ここでは、全国高体連サッカー部技術委員会(高体連)が大会終了後に発表した大会優秀選手36名の中から、特に良かった選手1名をポジションごとに紹介。また、FIFAワールドカップカタール(カタールW杯)同様に、改めて重要性が認識されたPK戦について考察したい。

第101回全国高校サッカー選手権大会傑出選手
高体連による大会優秀選手36名の中から、特に良かった選手1名をポジションごとに選出した。
GK:平塚仁:岡山学芸館(岡山)
2年生ながらのシュートストップもさることながら、キックによるカウンターを演出した岡山学芸館のGK平塚仁。184センチのサイズを活かした空中戦での強さも際立った。同大会は次の日本代表候補が誕生した瞬間であった。選手権連覇の夢はもう始まっている。
DF:多久島良紀:青森山田(青森)
1年生時から選手権に出場するなど、期待が大きかった青森山田のDF多久島良紀。昨年、膝前十字靭帯断裂の大怪我で苦しい時間を過ごしたが、今年カムバック。4月より、大学サッカー関東1部王者の明治大学へ進学する。対人の強さとロングフィードに磨きをかけ、大学からプロ入りを目指す。

MF:徳永涼:前橋育英(群馬)
前橋育英のエースナンバー14を背負ったキャプテンMF徳永涼。U18日本代表でもキャプテンを務める。プレーは、元日本代表のMF遠藤保仁とDF長谷部誠を足して2で割ったような選手。プレーと言動でチームを落ち着かせ、相手の攻撃の芽を摘む。将来、サムライブル—の中盤の底は徳永が構えるに違いない。筑波大学へ進学し、即プロで活躍するための準備をする。
FW:森重陽介:日大藤沢(神奈川)
今大会得点王の1人である日大藤沢のFW森重陽介。198センチの巨漢が空を舞ったかと思えば、柔らかいボールタッチを披露。今までいなかったタイプの大型フォワードとして期待がかかる。特に3回戦の対神村学園(鹿児島)戦で見せたヘディングシュートは、未完の大器を感じさせる迫力があった。清水エスパルスへの加入が内定しており、まず目指すはプロ初得点である。

勝負を分けたPK戦
今選手権大会では、全47試合のうち、PK戦による決着が10試合であった。去るカタールW杯でもPK戦が多くの勝負を分けたように、改めてPK戦の重要性が認識される大会となった。優勝した岡山学芸館、準優勝した東山(京都)の両校は、ともにPK戦を2度制した。岡山学芸館のPK戦キック成功率は、なんと100%を記録した。
PK戦は「運要素が強い」といった認識があるかもしれないが、それを私は否定する。青森山田の黒田剛前監督はPK戦について「気持ちで勝つものではない、技術が大事だ」と選手たちに語っている。特に連戦が続き、PK戦まで戦った選手の疲労はかなりのものだ。そのような疲労感の中でも狙ったところにボールを蹴ることができるか。これは間違いなく、そのシチュエーションを練習してきたかどうかが出る場面である。
また、PK戦勝利には、GKによるシュートストップが欠かせない。岡山学芸館には、平塚仁。東山には、佐藤瑞起という素晴らしいGKがそれぞれいた。シュートストップできるGKは、味方キッカーに対して勇気を与えることができ、PKストップ自体以上に重要な存在である。
様々な進路へ進む者たち
プロへ進む者、大学へ進学する者、来年も選手権を目指す者、ここでサッカーを一区切りとする者。様々な選択が各選手たちにある。熱き戦いをみせてくれた選手たちへ拍手を送りたい。サッカー小僧たちの未来と、日本サッカーの未来が明るいことを感じさせてくれた大会であった。