侍ジャパン井端コーチが説く。東京五輪金メダルのためにやるべきこと

1月14日(火)6時30分 Sportiva

井端弘和「イバらの道の野球論」(13)前回の記事はこちら

 昨年11月に行なわれた「プレミア12」。東京五輪前の最後の国際大会で、日本代表は10年ぶりに世界一に輝いたが、楽に勝利できた試合はひとつもなかった。侍ジャパンの内野守備走塁コーチを務める井端弘和氏は、その戦いをどう見ていたのか。金メダル獲得のための改善点などと併せて聞いた。


昨年のプレミア12を制した侍ジャパン

──あらためて、プレミア12を振り返っていかがですか?

「勝敗のルールには悩まされましたね。(12チームが3組に分かれて戦った)オープニングラウンドは、負けても2位以内で次のスーパーラウンドに出場できたんですが、どの国と一緒に勝ち上がるかわからないので、結局は負けが許されない。また、決勝のカードが日本と韓国に決まったあとの、スーパーラウンドでの韓国戦は”練習試合”のようになり、どういった位置づけで試合に臨めばいいかなど、考えることが多かったです」

──難しい大会だったと思うのですが、初戦のベネズエラ戦も7回まで4−2でリードされる苦しい展開でしたね。

「あの試合は、『四球を選んだ』というよりも『四球をプレゼントしてもらった』形で勝利できました。日本の選手もそうでしたが、相手も相当なプレッシャーの中で戦っている印象がありましたね。どの参加国も”即席チーム”の難しさが出ていたと思います。3試合目の台湾戦(8−1)は序盤からリードできましたけど、あれは互いにスーパーラウンド進出を決めていましたからね。とにかく楽な試合はありませんでした」

──韓国との1戦目はいかがでしたか?

「翌日も同カードでの試合だったので、”駆け引き”の様相が強かったですね。日本はそれまでのレギュラー陣をスタメンにして控えの選手たちを途中から起用していきましたが、韓国は逆。両チームのキャッチャーは打者の特徴を探っていたでしょうけど、攻撃の際に日本側のベンチからサインが出ることは少なかったです」

──その試合は10−8で勝ちましたが、翌日の試合への弾みになったのでは?

「いえ、『明日も勝てるのか?』という気持ち悪さは残りました。もちろん負けていたら2連敗する怖さが出てくるんですが、勝った場合も『明日勝たないと意味がない』という気持ちが生まれてしまう。国際大会で同じ相手と何度も戦う難しさでしょうし、韓国は勝負どころで豹変するチームという認識もありましたから。

 今回の韓国は、五輪の出場権を手にすることが第一目標だったでしょうから、今までのWBCの時のような”ガツガツ感”はありませんでしたが、東京五輪の本番ではまた変わってくるでしょう。それはほかの国も一緒だと思うので、今回の結果に満足はしていられません」

──大会のMVPには広島の鈴木誠也選手が選ばれましたが、井端さんが個人的に選ぶとしたら?

「4番を担った誠也はMVPにふさわしい活躍をしてくれましたが、もうひとり挙げるとしたら5番の浅村(栄斗/楽天)でしょう。彼が誠也のうしろにいたのは心強かったですね。本人がどのくらい意識していたかはわかりませんが、勝負に徹して反対方向(ライト)にキッチリ打って、次につないだり貴重な追加点を取ってくれました。

 韓国との決勝の7回裏に出たタイムリーもそうでしたね。4−3で迎えたチャンスでライト前に運び、2点差としたことでチームに勇気を持たせてくれた。浅村は、松田(宣浩/ソフトバンク)のように感情を表に出してチームを盛り上げるタイプではないですが、内に強い闘志を秘めている選手でしたね」

── 一方で、相手投手のツーシーム系のボールに苦労していた印象もあります。東京五輪でもそこの攻略がカギになると思いますが。

「自分の国際大会の経験からも言えることですが、『強引にいかないこと』でしょうか。強く芯でとらえようとすると、それがファールになってカウントを稼がれてしまう場面も多かったですから、詰まってもいいから外野の前に落とすようなバッティングが効果的なのかなと思います。ただ、それを意識しすぎるとスライダーなどに反応できなくなるリスクもありますから、状況に合わせてですね」

──攻撃面では、ソフトバンクの周東佑京選手が走塁で存在感を示しましたね。

「タイプ的には、西武や巨人で活躍した片岡(治大/現巨人二軍コーチ)に近いでしょうか。片岡は、僕が現役時代にショートを守っていた時もスタートが抜群に速く、周東もそれとカブるところがありました。スライディングの技術などは、まだ片岡の域には達していませんが、中間走に関しては引けを取っていません。これから技術を磨いていけば、盗塁王を4度獲得した片岡と同じ、もしかしたらそれを凌駕する”足のスペシャリスト”になるかもしれませんね」

──試合で周東選手が出てくると、盗塁を期待する大歓声が起きていました。

「それは喜ばしいことなんですけど、周東が塁に出た時のバッターにとっては悩ましいかもしれません。ストレート系の球が多くなりやすく、狙いを絞りやすくはなるのですが……。周東の盗塁を期待する歓声が上がる中で、『初球に手を出して打ち損じてしまうのはいけない』など、縮こまった打撃になってしまう可能性が出てきます。とくに”一発勝負”の国際大会では戦略的にも判断が難しいところですね。首脳陣や選手間で話し合っておく必要があると思います」

──投手陣や守備面についてはいかがですか?

「投手陣はバランスが取れていたと思います。とくに中継ぎ陣は点を取られることは感じませんでした。シーズンでは先発を担っている大野(雄大/中日)や山岡(泰輔/オリックス)は第2先発で苦しんだ場面もありますけど、慣れていない役割をよくこなしてくれたと思います。

 守備もすごくよかったですね。ほかのチームに比べてエラー数も少なかったですし。『日本=足を絡める野球』というイメージが強いと思いますけど、投手の四球の少なさもそうですが、そういった守備力が日本野球の最大の特徴であり、他国に勝る部分だと思っています」

──最後に東京五輪での目標を聞かせください。

「金メダルしかありません。どんな泥臭い試合であろうが、勝てばいい。五輪を目指してやってきているわけですから、他の色のメダルは考えられませんね。選手たちはそれぞれレギュラーシーズンを戦いますが、その意識は共通して持っていると思いますし、日本のファンの方々と喜びを分かち合えるように頑張りたいです」

Sportiva

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