トヨタGR、ダカールラリーの折り返しで3台がトップ10圏内を走行。最上位は総合3番手のモラエス

2024年1月15日(月)20時50分 AUTOSPORT web

 計5台のトヨタGRダカールハイラックス・エボT1UでW2RC世界ラリーレイド選手権の開幕ラウンド『第46回ダカールラリー2024』に参戦しているTOYOTA GAZOO Racingは、1月13日(土)の休息日を経て、翌14日(日)よりラリー後半の戦い開始した。この日行われた“ステージ7”を終えた時点での各ペアの順位は、ルーカス・モラエス/アルマンド・モンレオン組が総合3番手、ジニエル・ド・ヴィリエール/デニス・マーフィ組が総合5番手、ガイ・ボッテリル/ブレット・カミングス組が総合9番手で、これら3台のGRダカールハイラックスがトップ10圏内を走行中だ。


 一方、サオード・ヴァリアワ/フランソワ・カザレ組は総合21番手、トラブルで大きく遅れたセス・キンテロ/デニス・センツ組は同41番手となっている。


 1月9日(火)に実施されたステージ4から後半戦のオープニングとなったステージ7まで、各ステージのレポートは以下のとおりだ。


* * * * * * *


【ステージ4】


 1月9日(火)の第4ステージはアルサラミヤから東部のアルホフフへ。セミマラソンステージの2日目となる第4ステージとして、わずか2時間のサービスを終え、アルサラミヤの人里離れたリモートビバークで一夜を過ごしたあとスタート。競技区間は比較的短い299kmながら、岩場と砂丘のトリッキーで尖った岩や埃が多いステージとなりました。


 ステージ3で優勝したモラエス/モンレオン組はトップスタートとなり、コースを切り拓いていく役目を強いられましたが、それでも11番手でフィニッシュ。総合ではトップから19分31秒差の4番手を守りました。
ド・ヴィリエール/マーフィ組はステージ中盤でパンク。かわされた車両の巻き上げる砂埃で視界を遮られ、大きくタイムロス。23分26秒遅れの18番手でフィニッシュしました。
一方、初のT1車両で注目の集まる期待の若手、セス・キンテロ/デニス・センツ組は68km地点でストップ。メカニカルトラブルで油圧が低下、トラブルが深刻であることを認識し、アシスタンストラックを待つことになり、大きくタイムロス。前日までトップ10を伺う位置にいた総合での上位争いからは脱落することとなってしまいました。しかし、キンテロ/センツ組はW2RCのシーズンとしても戦っているため、翌ステージ5以降でラリーに復帰し、各ステージでのポイント獲得を目指すとともに、チームメイトのサポートも可能な位置で走行を続けます。


 ボッテリル/カミングス組は、ステージ4でも好調。2回のパンクに見舞われるも17分29秒差の16番手でフィニッシュし、総合12番手へ5つポジションアップを果たしました。


 初ダカールの18歳、サオード・ヴァリアワとフランソワ・カザレ組は苦戦。スタートしてまもなくエンジンの出力低下に見舞われ、1時間以上のタイムを失い49番手、総合25番手への後退を余儀なくされてしまいました。

サオード・ヴァリアワ/フランソワ・カザレ(トヨタGRダカールハイラックス・エボT1U) ダカールラリー2024


【ステージ5】


 1月10日(水)のステージ5は、アルホフフからシュバイタへ、500kmを越える長い移動区間を経て、サウジアラビア東部、ルブアルハリ砂漠の“エンプティ・クォーター”地帯へ。この日は競技区間118kmと短いものの、柔らかい砂丘での、過酷なステージとなりました。


 砂丘のみで構成されたこのステージ5は、総合でTGR勢最上位の4番手を走行していたモラエス/モンレオン組にとって試練の一日となりました。延々と続く砂丘越えで、モラエスが車酔いに悩まされペースを落とし、またその砂丘越えで判断ミスにより横転。車両にダメージはなかったものの、後続車に引き起こして貰うため待機せざるを得ず、タイムを失うこととなりました。


 モラエスと同郷のブラジル人ドライバー、マーカス・バウムガート(X RALLY)の助けにより戦線に復帰しましたが、この短いステージは37分16秒遅れの51番手でのフィニッシュとなり、僅差で争っている総合順位争いでも4番手から10番手へと後退を余儀なくされてしまいました。


 このステージでTGR勢最上位フィニッシュを果たしたのはベテランのド・ヴィリエール/マーフィ組。トップから4分20秒差の6番手でフィニッシュし、総合順位は11番手をキープ。ダカール初出場のボッテリル/カミングス組にとって初めての砂丘でのフルステージとなりましたが、トップから11分55秒遅れにとどめ、27番手。


 同じくルーキーのヴァリアワ/カザレ組は、前ステージで遅れたことにより、後方からのスタートを余儀なくされたため苦戦を強いられ、38番手でフィニッシュ。フィニッシュしたときにはすでにビバークは闇に包まれていましたが、それでも総合26番手につけています。


 キンテロ/センツ組は、ステージ4でウェイポイントを通過できず、フィニッシュできなかったため20時間のペナルティを受け、総合上位争いからは脱落。加えて、エンジン交換による20時間のペナルティがこのステージ5の結果に追加されることとなり、リザルトではこのステージ67番手という結果となりましたが、実際のフィニッシュタイムは首位から2分52秒差の実質5番手という速さを見せました。

ジニエル・ド・ヴィリエール/デニス・マーフィ(トヨタGRダカールハイラックス・エボT1U) ダカールラリー2024


【ステージ6】


 1月11日(木)今大会前半戦のハイライトとなる、2日間にわたるステージ6の“48時間クロノ”がスタートしました。シュバイタ近郊のビバークをスタートし、砂丘をループで走破しシュバイタへと戻る、競技区間は549kmながら、エンプティ・クォーターでの終わりの見えない砂丘との戦いが繰り広げられました。この“48時間クロノ”は、メカニックによる整備や部品補給なしで2日間を走破する必要があり、1日目は、16時になった時点で7箇所に用意されたビバークのうちもっとも近い場所に強制ストップ。サービスなしの一夜を過ごすことになります。翌朝7時から走行は再開され、ふたたびシュバイタでゴールを迎えます。


 1日目、TGRクルーはトラブルフリーで5台ともにビバークに到着。5台のうち最上位はモラエス/モンレオン組で、4番手でビバークDに到着。キンテロ/センツ組は1日目8番手、ド・ヴィリエール/マーフィ組が11番手、ボッテリル/カミングス組は16番手で、この4台は同じビバークDで一夜を過ごすこととなりました。


 一方、ヴァリアワ/カザレ組はトランスミッショントラブルで序盤苦戦を強いられるもすぐに回復。しかし、エンプティ・クォーター特有の、延々と続く砂丘での車酔いに苦しめられ、36番手スタートから大きく順位を落とし、ビバークCで翌日のスタートを待つこととなりました。


 また、このステージ6前半では、プライベーターとしてトヨタ・ハイラックス・エボで参戦し、ここまで総合首位につけていた、ヤジード・アル・ラジ/ティモ・ゴットシャルク組(オーバードライブ・レーシング)が転倒を喫し、痛恨のリタイアとなってしまいました。


 翌1月12日(金)は、難しい砂丘地帯でベテラン勢が本領発揮。モラエス/モンレオン組はその素晴らしい走りでトップと22分45秒差の4番手でフィニッシュし、総合順位でも首位から1時間4秒遅れの4番手へと復帰しました。ド・ヴィリエール/マーフィ組にとっても良いステージとなり、トップから37分4秒遅れの7番手でゴール。総合順位も6番手へと浮上しました。


 キンテロ/センツ組はトップから49分5秒遅れの9番手でフィニッシュ。ボッテリル/カミングス組は、キンテロ/センツ組から1分28秒差の10番手で続き、砂丘での経験は少ないながらも、そのポテンシャルを示しました。この結果総合順位も8番手へ浮上。初出場のダカールラリーで、トップ10圏内で前半を折り返すという期待以上の速さを見せています。


 ヴァリアワ/カザレ組は、ステージ6序盤でギアトラブルに見舞われるも、トラブル解消後はペースを上げ、乗り物酔いに苦しみながらも2時間9分42秒遅れの25番手。ダカール史上最年少ワークスドライバーの一人である18歳の南アフリカ人ドライバーは、初めてのダカールラリーで着実な学びを続けています。

ガイ・ボッテリル/ブレット・カミングス(トヨタGRダカールハイラックス・エボT1U) ダカールラリー2024


【休息日】


 TGRのGRダカールハイラックス・エボT1Uは、5台揃ってダカールラリー史上もっとも過酷なステージのひとつとなったステージ6の48時間クロノを無事走り切りました。ステージ6終了後、シュバイタ近郊のビバークへと戻って来たすべての車両はトランスポータートラックでリヤドへ。


 ドライバー/コドライバーやライダーらは飛行機でリヤドへと移動。1月13日(土)はサウジアラビアの首都リヤドで恒例の休息日を迎え、ドライバー/コドライバーやライダーは、つかの間の休息で後半戦に向けての英気を養いました。一方でメカニックは忙しい一日を過ごし、前半戦を戦ってきた車両を完全に整備し直し、後半戦への備えを整えました。


【ステージ7】


 休息日を経てラリーは2週目、後半戦に入りました。後半戦初日のステージ7は、リヤドからアルダワディミへと西へ向かうルートで、483kmの競技区間は岩場や砂丘を越えていく、クルー曰く「非常にトリッキーでタフ」なコースでした。しかし、TGRのモラエス/モンレオン組はこのステージでも好調さを見せ、トップから僅か7分06秒遅れの2番手でステージを終えました。


 モラエス/モンレオン組は、ステージ終盤スローパンクチャーに見舞われたことで優勝こそ逃したものの、それ以外はノートラブルで走り切りました。タイヤを交換することなく走り続けたことで、フィニッシュ付近ではタイヤがリムから外れていましたが、なんとかゴール。この好走により、モラエス/モンレオン組は総合順位で首位と1時間0分35秒差の3番手へと浮上しました。


 キンテロ/センツ組はステージ序盤の難しいナビゲーションでタイムをロスし、終盤にはオルタネータのトラブルにも見舞われましたが、首位と17分16秒差の9番手でフィニッシュ。総合では上位争いからは脱落したものの、41番手まで順位を上げました。


 ド・ヴィリエール/マーフィ組は、ステージの大半をチームメイトのキンテロ/センツ組とともに走行。このため、同じようにナビゲーションで苦戦するも、キンテロ/センツ組から8分ほど遅れての11番手でフィニッシュ。総合順位では首位から1時間40分07秒遅れの5番手と好位置につけています。


 ダカール初挑戦のボッテリルは、経験豊かなコドライバー、カミングスの助けもあって目覚ましい走りを見せ、前半戦を終えた時点で総合トップ10をキープ。このステージ7では幾つかのマイナートラブルに見舞われて苦戦。しかし、車両電気系統への対応をうまくこなし、この日は首位から32分16秒遅れの16番手でフィニッシュ。総合9番手は変わらず、8番手車両との差も僅差であり、さらに上位を目指します。


 ヴァリアワ/カザレ組はステージ7でリアディファレンシャルギアのトラブルに見舞われました。一旦停止しオイルを追加しましたが、その後パンクに見舞われ、また、エンジン出力低下にも苦しめられました。なんとか首位から1時間20分5秒遅れでステージをフィニッシュしたものの、総合順位では21番手に後退。それでもこの若きドライバーは将来への経験のためにラリーを戦い、来たるステージを楽しみにしています。


 ラリーは北上しながら西へ向かい、スタート地点のアルウラへと戻った後、西海岸のヤンブー付近でループの2ステージを経て、1月19日(金)長い戦いのゴールを迎えます。

TOYOTA GAZOO Racing勢最高位の総合3番手につけているルーカス・モラエス


■ダカールラリー2024 ステージ7終了時点の総合結果


































順位ドライバー/コドライバー総合首位との差
3番手#206 ルーカス・モラエス/アルマンド・モンレオン+1h00’35
5番手#209 ジニエル・ド・ヴィリエール/デニス・マーフィ+1h40’07
9番手#243 ガイ・ボッテリル/ブレット・カミングス+2h11’16
21番手#226 サオード・ヴァリアワ/フランソワ・カザレ+5h30’40
41番手#216 セス・キンテロ/デニス・センツ+41h03’18


■ステージ7終了時のコメント


●シャミア・ヴァリアワ(SVR:シャミア・ヴァリアワ・レーシング代表)


「非常にエキサイティングな一日だったと思う。ルーカス(・モラエス)は素晴らしい走りで、総合順位をひとつ上げた。スローパンクチャーに見舞われたのは残念だが、それも想定の範囲内だ。彼には残りのラリーも冷静に走り続けて欲しいと思う」


「私としては『まだ終わっていない』と言い続けるだけだ。ラリーはまだ5日間あり、やるべきことに集中する。好結果を期待しよう」


●アラン・デュハディン(TGR W2RCチーム代表)


「ステージ7でも、我がチームは貴重なW2RCポイントを獲得することができた。ここダカールラリー2024でポイントを獲得し続けてくれるルーカス(・モラエス)とセス(・キンテロ)に感謝している。彼らは全力で戦い続けており、今日も多くのポイントを獲得してくれた」


「同時に、ルーカスとアルマンド(・モンレオン/コドライバー)は総合順位で表彰台圏内の3位に浮上した。また、総合トップ10にトヨタ・ハイラックスが6台も入っている(プライベーター含む)のを見るのは嬉しいし、そのタフさと信頼性が証明されていると思う」


「今日のステージでのTGR勢の活躍は、休息日に素晴らしい働きでクルマを整備し直してくれた技術スタッフやメカニックのおかげでもあり、彼らにも感謝する」


●ルーカス・モラエス 206号車


「ステージ序盤から(チーム・アウディスポーツのカルロス・)サインツと(バーレーン・レイド・エクストリームのセバスチャン・)ローブとともに好ペースで走ることができ、素晴らしい一日だった」


「スタート直後は非常にトリッキーなコースだったが、アルマンドが素晴らしいナビゲーションをしてくれた。そのおかげでサインツと同じペースで走れたのは大きかった」


「終盤、恐らく残り40kmほどのところでスローパンクチャーに見舞われてしまったが、空気はゆっくり抜けていたので、そのまま走り続けることを決断した。しかし、残り5kmほどのところでついにタイヤがリムから外れ、ペースを落としてフィニッシュせざるを得なかったが、我々は今日の走りで総合3番手に浮上することができた。これまでも表彰台を目指して戦ってきたが、まだ残りは長い。チームが用意してくれた素晴らしいクルマに満足しているよ」


●セス・キンテロ 216号車


「今日は本当に楽しい一日だった。序盤は燃料を節約しようと思ったのもあって、ややペースが遅かったけど、一日をとおして上位を走れたと思う。その後、オルタネータに若干のトラブルが出て、パワーが落ちてタイムを失ってしまった」


「ウェイポイントでも行き過ぎて少し戻ったりもしたけれど、それ以外は素晴らしい一日だったし、チームがすべて直してくれた。あと5日間、まだまだ楽しめるだろう」


●ジニエル・ド・ヴィリエール 209号車


「長く、ナビゲーションが非常に難しい一日だった。上位勢がどんな走りをしたのかわからないが、彼らは信じられないほど速かったよ。我々はやや苦戦し、今日ずっと一緒に走っていたセス(・キンテロ)とともに、何度もコースを見失った」


「正しいコースを見つけるのに、同じ場所で10分以上タイムをロスしたと思う。序盤もコースがトリッキーで、コースを見失うなど、ナビゲーションに苦しんでタイムを失ったステージだった。少なくともまだ我々はラリーを続けており、明日も戦い続けるだけだ」


●ガイ・ボッテリル 243号車


「難しいステージだったね。前半はとても順調だったが、折り返しを過ぎた直後にホイールが緩み、また、電圧が低下するトラブルにも見舞われて警告灯が点灯した。クルマを停めてバッテリを交換し、修復できたと思ったのだけど、その直後にクルマの温度が上がり、油圧や冷却水の圧力が下がってしまった。そのため、以降は慎重な走りが求められたが、不運にも暑い砂丘に入るところで、冷えた状態に保つのは困難だった」


「そんなこともあり、最後までベストな走りができたとは言えない一日だったよ。一方で、中盤のパフォーマンスには満足している。良い日があれば悪い日もある。今日は我々の日ではなかったと言うことだ。まだ我々はラリーを走っているし、明日も戦える」

セス・キンテロ/デニス・センツ(トヨタGRダカールハイラックス・エボT1U) ダカールラリー2024

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