完勝の浦和レッズレディース。猶本光が語った世界レベル守備の極意【皇后杯】

2024年1月15日(月)14時0分 FOOTBALL TRIBE

三菱重工浦和レッズレディース MF猶本光 写真:Getty Images

皇后杯JFA第45回全日本女子サッカー選手権大会準々決勝の全4試合のうち2試合が、カンセキスタジアムとちぎにて行われた。同会場での第2試合で、三菱重工浦和レッズレディースとジェフユナイテッド市原・千葉レディースが対戦。最終スコア2-0で浦和が勝利している。


2023/24シーズンのWEリーグで2位につけている浦和が、同リーグ現7位の千葉を相手に順当に勝利したこの試合。2022/23シーズンのWEリーグとWEリーグカップを制し、今2023/24シーズンもタイトル獲得の可能性を残す浦和の成熟が窺える一戦でもあった。


今回の皇后杯準々決勝における、浦和の最大の勝因は何だったのか。ここでは同試合を振り返るとともに、浦和の安藤梢と猶本光の両MFの試合後コメントを紹介。そのうえで同クラブの勝因や戦いぶりを論評する。




浦和レッズレディースvsジェフユナイテッド市原・千葉レディース、先発メンバー

守備でリズムを掴んだ浦和


キックオフ直後の千葉のサイド攻撃を凌いだ浦和は、前線の選手を起点とする鋭い守備で、試合の主導権を手繰り寄せる。


[4-2-3-1]の基本布陣でこの試合に臨んだ浦和は、トップ下の猶本が守備時に前線へ上がり、[4-4-2]の隊形に移行。FW菅澤優衣香と猶本の2トップで、千葉の2センターバックによる縦パスを封じたほか、同クラブMF岸川奈津希へのパスコースも遮断。相手のパス回しをタッチライン際へ追いやったうえで、ハイプレスを仕掛けていた。


この浦和の組織的な守備が功を奏し、千葉のGKや最終ラインからのパス回しは手詰まりに。千葉は[4-4-2]の守備隊形から岸川、小林ひなた、城和怜奈のMF陣、及びFW登録の大澤春花と小川由姫が目まぐるしく立ち位置を変えて攻撃を仕掛けたが、浦和を混乱させるには至らなかった。




ジェフユナイテッド市原・千葉レディース DF藤代真帆 写真:Getty Images

千葉はサイドバックの立ち位置を修正できず


千葉が浦和のハイプレスを掻い潜れなかった最大の原因は、田中真理子と藤代真帆の両DF(両サイドバック)の立ち位置にある。


千葉はGKや最終ラインからパスを回すとき、サイドバックが自陣後方のタッチライン際、且つ相手サイドハーフの手前に立ってしまう場面がしばしば。この位置でボールを受けたサイドバックが、浦和のサイドハーフのプレスをもろに浴びる形となり、効果的な配球ができなかった。


また、同じく自陣からパスを回す際に2センターバック(蓮輪真琴と林香奈絵の両DF)が横に開きすぎることで、サイドバックとタッチライン際で同居してしまう場面も。浦和としては、この縦のパスコースを塞ぎさえすれば、千葉の攻撃を抑えることができた。


今回の試合は、これらの千葉の攻撃配置の不備を突いた浦和の作戦勝ちと言える。安藤梢と清家貴子の両MF(浦和の両サイドハーフ)による、相手サイドバックへの寄せも鋭かった。


三菱重工浦和レッズレディース MF安藤梢 写真:Getty Images

活かされた安藤梢の予測力


試合の主導権を握りながら無得点と、浦和にとって嫌な展開になりかけたが、前半終了間際にビッグチャンスが唐突におとずれる。


同42分、浦和のGK池田咲紀子による自陣からのフリーキックに、FW菅澤がヘディングで反応する。菅澤と千葉の選手の競り合いの末、ボールが相手最終ラインの背後にこぼれると、これを予期していた安藤がダッシュ。同選手が敵陣ペナルティエリアでシュートを放ち、浦和に先制ゴールをもたらした。


「1点目は(菅澤)優衣香のところにボールが来たのですが、彼女にはああいうところでしっかりとボールを後ろに逸らしてくれるという信頼があります。それを予測してあのスペースに走り込んで、ラッキーな形でしたがボールが来て、あとは気持ちで決めました」


41歳のMF安藤の試合後コメントから窺えたのは、豊富な経験に裏打ちされた予測力。これが活かされたゴールだった。


後半開始直後にも浦和が猛攻を仕掛け、同5分に安藤が敵陣左サイドを突破。同選手が放ったペナルティエリア左隅からのクロスが、そのままゴールマウスに吸い込まれた。


安藤の2ゴールで優位に立った浦和は、その後も攻守両面の強度を緩めず。危なげない試合運びで、皇后杯準決勝に駒を進めている。




三菱重工浦和レッズレディース MF猶本光 写真提供:WEリーグ

猶本「先手を取るようにしていた」


先述した浦和の守備のコンセプトは、同クラブMF猶本のコメントからも窺える。試合後の囲み取材(質疑応答)で、同選手は自軍の守備への手応えを口にしていた。


ー千葉の選手たちによるポジションチェンジが激しく、相手のビルドアップを止めるのは難しかったと思います。前線からの守備で気をつけていたことを教えてください。


「後ろの選手(浦和の中盤や最終ライン)がボールの奪いどころを作れるよう、(相手のパスコースを)限定できればいいなと思っていました。相手のGKと2センターバック、アンカー(中盤の底。千葉のMF岸川)を前線の2人で見ていました」


単に(漫然と)ボール保持者に寄るのではなく、ボールの周辺状況を察知して、相手のパスの選択肢を奪うような寄せ方をしていた、猶本選手の好プレーが光っていたと思います。やはりこの点は心がけていましたか。


「そうですね。ボールの移動中であったり、バックパスやクリアボール直後に相手がポジションをとるのが遅かったりする場面では、こちらがプレスをかければ相手の(パスの)選択肢が無くなります。(守備面で)先手を取るようにしていました」


千葉のパス回しを、片方のサイドへ追いやった後の浦和の守備の強度は高かったと思います。これは猶本選手だけでなく、安藤選手をはじめとする他の選手にも言えることで、これが浦和が主導権を握れた要因だと思います。この点について、猶本選手はどう感じていらっしゃいますか。


「そうですね。先週のリーグ戦から引き続き、その部分は表現できていると思います。選手交代をしても、(チーム全体として)守備の強度を落とさずプレーできているので、そこは自分たちの良さとして続けていきたいです」




WEリーグ初優勝(2022/23)三菱重工浦和レッズレディース 写真提供:WEリーグ

ソリッドな浦和に漂う連覇の予感


千葉の攻撃配置の不備に助けられた感もあるが、前後半ともに浦和の守備の強度や練度は高く、特に猶本と安藤が同クラブのハイプレスを牽引。2人ともボール保持者の選択肢を奪うような寄せ方が秀逸だった。知性が伴う激しいプレス。これこそ世界レベルの守備の極意だろう。


昨年12月24日に行われたWEリーグ第6節AC長野パルセイロレディース戦でも、相手GKに対する猶本のプレスから浦和に先制点がもたらされている(3-1で浦和が勝利)。前半7分のこのシーンでも、浦和は猶本を含む2トップが中央のパスコースを封鎖。そのうえで猶本が相手センターバックやGKに寄せたことで、ボール奪取に成功している。パスコース探しに手間取った相手GKからボールを奪った猶本が、そのまま得点を挙げてみせた。


ソリッドな守備を武器に白星を重ね、2023/24シーズンのWEリーグで2位につけている浦和から、同リーグ連覇や皇后杯優勝の予感が漂っている。

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