バーミンガム三好康児が激白! ルーニー監督電撃解任の裏側【現地取材】

2024年1月16日(火)18時0分 FOOTBALL TRIBE

バーミンガム・シティ MF三好康児 写真:Shun Ide

イングランド2部(英2部)のチャンピオンシップ第27節が日本時間1月14日に行われ、MF三好康児が所属するバーミンガム・シティはホームでスウォンジー・シティと対戦した。バーミンガムはマンチェスター・ユナイテッドのレジェンドでもあるウェイン・ルーニー氏を今月2日に解任しており、8日に就任したトニー・モウブレイ新監督の初陣となった。


20位に沈むバーミンガムは、スウォンジーに2度リードされるも後半アディショナルタイムに同点弾を決め、初のモウブレイ体制下で勝ち点1をもぎ取ることに成功した。この記事では、三好選手と現地イギリス人記者へのインタビューを通して、わずか約3ヶ月の短命に終わったルーニー政権の裏側とモウブレイ新政権について解説していく。




三好康児(左)ウェイン・ルーニー監督(右)写真:Getty Images

ルーニー監督就任から解任まで


2023年10月9日、バーミンガムはそれまでチームを率いていたジョン・ユースタス監督を解任。翌11日にウェイン・ルーニー氏の監督就任が発表された。この時点でバーミンガムは、プレミア昇格プレーオフ枠の6位に位置しており良好な成績を残していると思われていただけに、ユースタス氏の解任は現地サポーターやメディアの間でも驚きを持って報じられ、引き継ぐルーニー氏に対して懐疑的な声も小さくなかった。


ルーニー氏は就任時、バーミンガムに「勝利のカルチャーを根付かせる」と宣言し、パス重視のポゼッションサッカーへの移行を試みたものの、チームは突然のスタイル変更から不調に陥ってしまった。結局、ルーニー政権下では15試合中2勝9敗4分と成績が振るわず、順位も20位にまで急降下した。今年1月1日に行われたチャンピオンシップ第26節で、リーズ・ユナイテッドを相手にアウェイで0-3と完敗。これが決定打となり、翌2日にルーニー監督の解任が発表される展開となった。3年半の契約で就任していたことから、クラブはルーニー氏に長期的な指揮をさせるのではと予想されていた。しかし、首脳陣がたった3ヶ月で同氏との決別を決めたのは、想定以上の成績悪化だったとも考えられる。


現地紙『バーミンガム・ライブ』でシニア・フットボール・ライターを務め、長年バーミンガムをはじめ英2部のサッカーを取材しているアレックス・ディケンズ記者は「まさかこのタイミングで解任するとは思わなかった」と驚きを隠さなかった。「就任から9敗を喫しての解任は歴代でも最悪の成績ではある。サポーターなどからの批判も当然理解できるが、正月のリーズ戦で高まったサポーターの不満で、翌日に解任したのは非常に早い展開でびっくりだ。首脳陣はできるだけ延命させて様子を見るのだろうと思っていたが、たった15試合での解任には驚かされたよ。しかし、ルーニー監督のもとではこれ以上改善されないと判断したことについては、いい兆しだったと思う」と述べた。




バーミンガム・シティ MF三好康児 写真:Getty Images

「時間の問題だと感じていた」


14日のスウォンジー戦後、ルーニー解任について三好本人に単刀直入に聞いてみた。一言目に返ってきた「時間の問題だという感じはしていた」という言葉に少し驚かされた。


ルーニー監督が2日に解任されましたが?


三好:チーム全体の雰囲気としてあまりいい状態ではなかったです。なにか変化が必要なタイミングだったのかなという感じは全体的にあったので。チーム全体として負ける試合だったり、勝てる試合を引き分けにもっていかれて、上手くいかないことが続いて全体的に自信をなくしていた感じもありましたし、そういう状況になると少しずつみんな誰かのせいにし始めて。チームの状態も良くなかったですし、立て直す雰囲気も出てこなかったかなというのが僕の感覚的にはあります。


ルーニー監督とのコミュニケーションは?


三好:僕の感覚的にはそんなに喋るタイミングがなかったと言うか。監督から話しかけてくるタイプでなければ、僕自身そんなに話しに行く感じでもないので。イングランド人同士で喋ることは多かったのかなとは思いますが、僕は外国人としての立ち位置なので。別に僕だからというわけではなく、あまりコミュニケーションは取りやすかったわけではないかな。


ウェイン・ルーニー監督 写真:Getty Images

データから見えるルーニー政権の問題点


15戦9敗という結果以外にも、データを通して見るとルーニー・サッカーの問題点が浮かび上がる。現地メディアのスカイ・スポーツが行った前ユースタス政権とルーニー政権の比較では、平均ゴール数が1.2だったユースタス時に対し、ルーニー時は1だった。また、平均シュート数も前者の12.6に対し後者は12.06と僅差しかない。さらに決定機の割合を比較すると、前者が0.9で後者が0.93とルーニー指揮下の方が上回っていることがわかる。攻撃面で大きな差はなかった両政権だが、結果に差が出た要因として守備面での問題がある。ユースタス時には平均失点数が1だったのに対し、ルーニー監督下では2とその差は2倍だった。


前出のディケンズ記者は、ルーニー・サッカーについて「スタイルが適していなかった。あまりに早急にスタイルを変えたことで最初の3試合で大量失点し、それ以降守備が脆くなり肝心のポゼッションができなくなった」と指摘した。三好自身も「ちょっとミスが重なるとどんどんボールを後ろに下げちゃって、前に行きたい自分たちと守りたい守備陣とチーム全体として目的が定まらなかった。センターバックやボランチの選手はあまりボール扱いが得意ではない。なかなか前を見てくれる選手たちではないので、結局ボールを裏に蹴っちゃう」と振り返っている。


昨年10月のルーニー監督就任時「自分としてはポゼッションサッカーが楽しみ」とも話してた三好だが、ルーニー氏の描いていたスタイルを実現することは予想以上に難しかったようだ。これらのことから、ルーニーサッカーがバーミンガムで大成できなかった大きな要因として、目指すスタイルと実際にプレーする選手との特性の間でミスマッチがあったことが挙げられるだろう。また、三好が語ったように連敗の中でチームを立て直す雰囲気やコミュニケーションが活発にならなかったことも、ルーニー氏が監督としてチームをマネジメントするうえで欠けていた部分なのかもしれない。




トニー・モウブレイ監督 写真:Getty Images

トニー・モウブレイ新監督とは?


新監督に就任したトニー・モウブレイ氏について、現地ではチャンピオンシップで経験豊かな知将と評価されている。現地紙のディケンズ記者は、モウブレイ監督が2006年から2009年に率いていたウェスト・ブロムウィチ・アルビオン(WBA)について「当時もっともワクワクさせるチームだった」と振り返っており、モウブレイ監督のスタイルはバーミンガムにとって最適だと見ている。ポゼッション重視のアタッキング・フットボールを掲げるモウブレイ監督にとって三好は「最適なピース」だとディケンズ記者は太鼓判を押す。


14日に行われた初陣のスウォンジー戦では、選手がバックパスをするとモウブレイ監督が手を大きく振って前線にパスを出すように要求。「コージ!」と三好にパスを出すよう求めるなどビルドアップについて熱く指導する姿が見られた。


バーミンガムは第27節終了時点で勝ち点27の20位に沈み、プレーオフ昇格枠の6位までは勝ち点差11となっている。だが、全46節もの試合数があるチャンピオンシップはまだシーズンの半分を折り返したばかり。ここからチームのスタイルを確立することができれば、望みはまだ残っている。少なくとも三好は、プレーオフ昇格を諦めていない。

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