田中碧の一発退場は妥当か? U-23日本代表、カタール戦の不可解判定を検証【AFC U-23選手権】

1月16日(木)7時0分 フットボールチャンネル

【U-23日本代表 1-1 U-23カタール代表 U-23アジア選手権・グループB第3節】

 サッカーU-23日本代表は15日、AFC U-23選手権(東京五輪アジア最終予選)のグループリーグ第3節でU-23カタール代表と対戦し1-1の引き分けに終わった。

 試合の大きなターニングポイントの1つとなったのは、前半アディショナルタイムの48分に下されたMF田中碧への一発退場判定だった。シンガポール国籍の担当主審、ムハンマド・タキ氏はVAR(ビデオアシスタントレフェリー)の助言を受けて田中のプレーについてピッチ脇のモニターで確認し、レッドカードを提示した。

 46分、相手のプレッシャーを受けてずれた味方からのパスを失わないよう、田中が右足を伸ばした。すると後方から走りこんできた別の相手選手と交錯する形になり、カタールのFWユスフ・アブドゥリサグがピッチに倒れ込んだ。

 世界中で運用されている2019/20シーズン最新版のサッカー競技規則(日本語版は日本サッカー協会公式HP内を参照)の中で、VARが介入する基準は「得点か得点でないか」「ペナルティーキック(PK)かペナルティーキックでないか」「退場」「(警告や退場の)人違い」のみと定められている。また、明らかな判定ミスの可能性がなければVARは介入してはならない。

 これらの条件と実際のピッチ上での現象を考慮すると、田中に退場が宣告された場面で問われたのは「退場」かそうでないかだ。

 では、「退場」の条件とはいかなるものだろうか。競技規則の中では以下のように定められている。

・ハンドの反則を犯し、相手チームの得点または決定的な得点の機会を阻止する
・フリーキックで罰せられる反則を犯し、全体的にその反則を犯した競技者のゴールに向かって動いている相手競技者の得点、または、決定的な得点の機会を阻止する
・著しく不正なプレーを犯す
・人をかむ、または人につばを吐く
・乱暴な行為を犯す
・攻撃的な、侮辱的な、または下品な発言や身振りをする
・同じ試合の中で2つ目の警告を受ける
・ビデオオペレーションルーム(VOR)に入る

「乱暴な行為」は、ボール周辺から離れた局面でのいわゆる暴力行為を指しているため、田中のレッドカードの場面では「著しく不正なプレーを犯」したかどうかが問われたと見られる。

 競技規則の中で「著しく不正なプレー」は「相手競技者の安全を脅かすタックルまたは挑むこと、また過剰な力や粗暴な行為を加えた場合、著しく不正なプレーを犯したことで罰せられなければならない。いかなる競技者もボールに挑むときに、過剰な力や相手競技者の安全を脅かす方法で、相手競技者に対し片足もしくは両足を使って前、横、あるいは後ろから突進した場合、著しく不正なプレーを犯したことになる」と定義されている。

 田中の動きを見ると、タックルではなくボールを確保するためのアクションであることがわかる。そして右足を伸ばして、相手よりも先にボールに触れている。だがこの時、田中の右足がボールの上を滑る形になり、勢い余って後ろから突っ込んできたアブドゥリサグの右足首を捉えてしまった。

「相手競技者の安全を脅かすタックル」ではなく、あくまで目の前のボールを失わないよう咄嗟のアクションで、田中の視線はボールに向いており、アブドゥリサグの姿は視界の外で、右足首を故意に傷つけようとした意図はなさそうだ。

 一方で主審のポジションからは、プレースピードの速さもあって、田中がタックルを仕掛けたと見えてもおかしくない。近年、足首に対するタックルには厳しい判定が下される傾向が強くなっており、レッドカードが検討される余地はあった。

 ただ、タキ主審は一度流してプレーを続けさせている。田中がすぐにボールを確保し、日本のポゼッションで試合は続いた。ここで退場のきっかけとなったプレーはそもそもファウルの反則とすら見られていなかったのである。

 そして映像で一連の流れを確認したうえでのレッドカードである。「足首を捉えた」という事実はあれど、直前の流れと接触した両選手の動きを見れば、故意のタックルではなく、流れの中で避けられなかった接触であったことも理解できたはず。にもかかわらずタキ主審は自身の判定を覆し、田中にレッドカードを提示。この判定の妥当性は低いのではないだろうか。

 カタール戦で試合の流れを大きく変えることになった田中への一発退場判定は、審判のクオリティのみならず、VARの存在意義や競技規則の運用、判定基準などにも疑念を抱かざるを得ないものだった。

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