武藤嘉紀、1192日ぶりゴールが勝利の分岐点に。データが示した大迫勇也に匹敵する貢献度

1月18日(金)13時35分 フットボールチャンネル

指揮官が挙げたターニングポイント

 日本代表は17日、AFCアジアカップ2019のグループリーグ第3戦でウズベキスタン代表と対戦した。相手に先制を許しながら、逆転勝利を掴み取れた理由の1つが失点直後の同点ゴールにあった。そこで結果を残したFW武藤嘉紀の貢献は、大迫勇也が君臨してきた1トップに新たな競争を喚起するかもしれない。(取材・文:舩木渉【UAE】)

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 ようやく明るい兆しが見え始めた。17日にAFCアジアカップ2019のグループリーグ第3戦に臨んだ日本代表は、ウズベキスタン代表に2-1で逆転勝利を収めた。これでグループ首位での決勝トーナメント進出を決めるとともに、チーム内の競争はより激しさを増していくかもしれない。

 森保一監督は、前の試合から先発メンバーを10人入れ替えてウズベキスタン戦に挑んだ。すでに2戦2勝で決勝トーナメント進出が確定していることもあり、「できるだけ全ての選手を使いたい」という指揮官の思惑通りの采配である。

 ただ、これまで“レギュラー”と“サブ”を比較的固定しがちだったこともあって、ウズベキスタン戦に出場する“サブ”の選手たちの連係はぶっつけ本番。組織としての完成度に不安があったのは間違いない。だが、そういった懸念は無意味だったことは試合が始まってすぐに理解できた。

 40分に敵陣でのスローインから一気にボールを運ばれ、エルドル・ショムロドフに先制ゴールを許したものの、日本は直後の43分に武藤嘉紀のヘディングシュートで同点に追いつく。室屋成の果敢なデュエルと絶妙なクロスから生まれたこの同点弾を、両チームの指揮官はともに試合のターニングポイントに挙げていた。

 森保監督は試合後の記者会見で「1点取られた際に、そこで下を向いて頭と足を止めていたら、おそらく失点の直後に同点に追いつくことはできなかったと思いますし、時間帯にしても難しい戦いになっていたと思います。選手たちがしっかり顔を上げて、次の戦いに気持ちを切り替えて、継続してやってくれたことが後半の逆転につながったと思います」と述べていた。

 この発言の直前に指揮官が口にした「継続力」という言葉を象徴していたのが、まさに重要な同点ゴールを挙げた武藤だったことに疑いはない。「本当に長らくお待たせしましたという感じですし、まあ自分自身吹っ切れた部分もあるので、今日の1点というのは非常に自分にとっても大きいものなんじゃないかなと思います」と、背番号13のストライカーは晴れ晴れとした表情で語った。

1192日ぶりのゴール

 武藤は2014年9月に日本代表から初招集を受け、デビュー2戦目となった同9日のベネズエラ戦でA代表初ゴールを記録した。ところが翌2015年1月のアジアカップでは3トップの全てのポジションで起用されるなど存在感を発揮し始めるも無得点。日本代表での2得点目は2015年10月のシリア戦で、それを最後にゴールから遠ざかっていた。

 ロシアワールドカップ以来の招集となったアジアカップのグループリーグ第3戦、今回のゴールは武藤にとってずっと欲しくてたまらなかったA代表27キャップ目での3得点目。日本代表では実に1192日ぶり、3年半近い月日を経ての一発だったのである。

「なぜか代表に入ると点が取れないっていうのが本当に長く続いて、自分自身もやっぱり少し悩んだ時期もあったんですけど、今日、原口(元気)選手から試合前にも『お前らしさを全部出せば絶対決まるから』という言葉をもらって、すごく後押しになりましたし、本当に嬉しかったですね」

 原口が見ていた「武藤らしさ」は、確かにウズベキスタン戦のピッチ上で存分に発揮された。43分に生まれた同点ゴール直前の組み立ての場面で、武藤は左サイドよりの位置で一度ゴールに背を向けて青山敏弘からの縦パスを引き出した。バイタルエリアでストライカーが縦パスを引き出したことで、ウズベキスタンの陣形は全体的にゴール方向へ下がる。

 そして武藤はもらったボールを右に展開し、自らはペナルティエリア内へ。最後は北川航也がニアサイドに走って相手ディフェンスを引きつけたのを見て、少し遅れ気味にゴール前中央へ走り込んでマーカーの背後からヘディングシュートを叩き込んだ。

「スカウティングでもクロスの時に相手がかなり下がる傾向があるというのを監督もおっしゃっていましたし、そういった面で北川選手がニアサイドで潰れてくれて、自分はあそこに来るボールを待っていて、ドンピシャで素晴らしいボールが来たので、決めるだけでした」

 武藤は味方の献身を称える。とはいえスカウティングであぶり出した狙い通りのゴールによって、ウズベキスタンに傾きかけた試合の流れをつなぎとめ、日本が逆転していくきっかけを作ったのは背番号13の愚直なまでにゴールにこだわる姿勢だった。

「日本のために戦えるならどこでもやるつもり」と宣言していた武藤は、グループリーグ第2戦のオマーン戦に途中出場した後、不完全燃焼感を語るとともに「いい判断ができていなかったのは絶対に反省しなければいけない」と自らを戒めていた。

データで比較する大迫と武藤

 オマーン戦ではシュートに持ち込める場面でパスを選んでしまうなど本来の持ち味を出せなかった。だからこそ「2点目を取って試合を終わらせるべく入ってきたので、絶対に次のウズベキスタン戦の勝利に貢献するためにも、自分が点を取るであったり、僕らで勝利に導ければいい」。そして第3戦に向けて「そう簡単に勝てる相手ではないですし、きれいなプレーは本当に必要ないと思うので、チームのために走り続けたい」と決意も述べていた。

 そして迎えた大会初先発の機会で有言実行のプレーを見せたわけである。ここまで右でん部の痛みを抱える大迫勇也のバックアップに不安を抱えていた森保ジャパンに、新たな光明が見えた試合にもなった。これまで“サブ”でしかなかったストライカーの活躍がチーム全体の競争を刺激していくかもしれない。

 武藤の貢献度の高さが大迫に匹敵するのは、スタッツ上でも示されている。ウズベキスタン戦で85分に交代するまで、武藤は28本のパスのうち22本を成功させ(成功率78.6%)、相手陣内では17本のパスを通した(成功率77.3%)。デュエルは13回を記録し、勝率61.5%。ボールは10回失ったが、3回のリカバリーで奪い返した。

 一方、トルクメニスタン戦での大迫は24本のパスのうち17本成功(成功率70.8%)、相手陣内では14本(66.7%)を通した。デュエルは13回を記録し、勝率53.8%。ボールロストは同じく10回で、リカバリーは1回だった。

 シュートに関するデータでは武藤が85分間で2本放って、枠内に1本飛ばし、1得点を奪ったのに対し大迫は90分間で6本放って、うち2本を枠内に飛ばして2得点につなげている。似たような数値に見えがちだが、これらのデータを見る上で考慮しなければならないのは対戦相手との噛み合わせだ。

 大迫が出場したトルクメニスタン戦はボール支配率で日本が70%と相手を圧倒的に上回った試合で、総パス数673本、パス成功率88%、シュート21本が生まれた。他方で武藤が初先発を飾ったウズベキスタン戦はボール支配率で相手に上回られて43%。パス成功率は83%と大差なかったものの、当然ながら総パス数は426本にとどまった。シュート数も14本と初戦に比べて少なくなっている。2人のストライカーが同じような数字を残していても、前提となる試合全体の構図が全く違っているのである。

W杯での苦い経験「こういう思いはもう2度としたくない」

 そうした中で、武藤は前線で確かな存在感を放った。本人は「今日は下がってもらうことが多かったですけど、そこでも青山(敏弘)選手だったり、塩谷(司)選手がしっかりとボールを的確な場所につけてくれていた」と述べていたが、パスを引き出せる好ポジションを取れていたのは間違いない。前線を幅広く顔を出し、時に中盤の深い位置にも進出する大迫とはまた違った動きを見せていた。

 そこにむしろ下がりすぎという印象はなく、常にペナルティエリア付近に構え、カウンター時には誰よりも早くゴール前に到達してラストパスやこぼれ球に備えていたのが武藤だった。オマーン戦では中央の2列目に人が集中しすぎないよう前線に残るポジショニングを心がけていたと明かしていたが、「ボールが入ってくる回数が少ないけど、それで焦れずにやり続けないといけない」と、我慢して最前線の1トップとしての責務を果たしていた。

 ロシアワールドカップではグループリーグ3戦目のポーランド戦に出場したが、周囲と噛み合わないままモヤモヤの残る形で敗戦。その時ピッチに立っていた武藤は「負けてしまって、かなり非難されて、こういう思いはもう2度としたくないと思いましたし、だからこそ今日は内容云々よりも、何としても結果で応えなければいけないという思いはありました」と語る。

 そうやって結果にコミットする姿勢をこれまで以上に見せながら、チームの中で機能する1トップとして大迫との違いも示した武藤。これまでなかなかいい形でパスを受けられなかったが、ウズベキスタン戦では相手により長い時間ボールを持たれる中でも、積極的にプレーに関与できたことをパス数などのデータが表している。愚直な「継続力」が、約3年半ぶりのゴールと逆転勝利をもたらしたのである。

「今日は(チーム全体が)素晴らしいプレーをしていたと思いますし、やっぱりこういうのがチームにあるとチームとしての底上げにつながると思う。誰が出ても戦えるということを見せられたのは非常に大きかったんじゃないかなと思います。

(決勝トーナメントは)とにかく先を見過ぎず、一戦一戦100%を出し切って勝つこと。力を残して勝てる相手ではないと思う。僕自身もしっかりと準備して、今日はやっぱり90分近くプレーできたというのはコンディション的にもかなりプラスになると思うので、自分自身またゴールを決めて日本の勝利に貢献できればいいなと思います」

「とにかく走って戦える、そこだけでここまで来られた」と自覚する“雑草ストライカー”の泥臭さが、森保ジャパンのアジア制覇への道を切り開くか。次なる相手はサウジアラビア。大迫の状態次第では、さらなるチャンスも舞い込んでくるはずだ。

(取材・文:舩木渉【UAE】)

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