「大胆なオーバーテイク」でレッドブルとの契約をつかんだローソン。“最後のチャンス”だった2019年の冬を振り返る
2025年1月19日(日)8時0分 AUTOSPORT web

一瞬ですべてが変わることがある。リアム・ローソンにとってその瞬間は、2019年初頭にニュージーランドで行われた冬のレースで訪れた。
このニュージーランド人の驚くべき物語の背景となったのは、トヨタ・レーシング・シリーズのラウンドだった。そこでローソンが行った大胆なオーバーテイクが、レッドブルのモータースポーツアドバイザーの目に留まった。6年が経った今、才能あふれる22歳のローソンは、F1でマックス・フェルスタッペンとともにレースをする準備をしている。
■背水の陣:決定的なウィンターシリーズ
2018年、ローソンのレースにおける将来には希望がないように見えた。10代だった彼はドイツF4選手権で2位につけたが、翌年のレース契約はなかった。資金もなく、ヨーロッパでのチャンスもなく、F3のシートもなかったローソンは、トヨタがサポートするジュニアシリーズに参加するために帰国したが、それは彼にとって最後のチャンスとなった。
ポッドキャスト『Pitstop』で、ローソンはその重要な選手権に臨んだときの心境を詳しく語った。
「僕の物語はクレイジーだ。若い頃からすべてがうまくいった。僕はものすごくラッキーだった」とローソンは語り、彼のキャリアの基礎となった瞬間がどのようなものだったか振り返った。
夏のニュージーランドで5週間にわたって集中的に開催されるトヨタ・レーシング・シリーズは、ランド・ノリスやランス・ストロールを含む多くのトップドライバーにとって、実力を証明する場となっていた。当時、それは16歳のローソンが印象を残す最後のチャンスだった。
「ニュージーランドでは夏に5週間連続で、F3にとても似たクルマでレースが行われる。ここ(ヨーロッパ)は真冬なので、ここでは誰も何もしていない。だからみんなそこに行って、5週間のテストプログラムとして利用し、選手権のレースに参加する」
しかしローソンにとって、それは単なる踏み台ではなく、運命を左右するものだった。
「2019年の計画はなく、F3に行くお金もなく、シートも残っていなかったので、これが本当に最後のチャンスだとわかっていた。だからこの選手権に出るにあたっては、『どうにかしてここから何かを勝ち取らなければならない』という気持ちだった」
ローソンの才能と決意はすぐに輝きを見せたが、注目を集めたのは、大胆かつ完璧に実行されたオーバーテイクだった。特に、注意深く見守っていたヘルムート・マルコの注意を引いたのだ。
「最初の週末が終わった後、レッドブルと契約を交わした」とローソンは明かした。
「それはオーバーテイクのおかげだった。文字通り、誰かを一度大胆にオーバーテイクしただけで、次の日には契約が成立した」
これは偶然の思いがけない幸運ではなかった。このシリーズでのローソンのチームメイトは、当時レッドブルのジュニアドライバーだったルーカス・アウアーだった。つまり、マルコはすでにこのシリーズのイベントを追っていたことになる。
「ルーカス・アウアーがそうだった。そして彼は当時レッドブルのジュニアだった」
「彼は僕のチームメイトだったので、第1ラウンドに到着したとき、彼のレッドブルのヘルメットがそこにあったのを見て、『オーマイゴッド、すごくクールだ。レッドブルのドライバーにレッドブルのヘルメットだ』と思ったのを覚えているよ」
「つまりルーカスがレースに参加していたので、(マルコは)観戦していたはずだ。だから彼はそれを見て、契約書を送ってきたんだ」
ローソンが不可能だと思っていた夢が、2019年2月にレッドブルのジュニアチームと契約したことで現実となった。そこから彼のキャリアは飛躍的に伸びていった。
■F1への昇格
レッドブルのジュニアチームに加入したことで、ローソンは驚くべき軌跡をたどることになった。彼はFIA F3、FIA F2、スーパーフォーミュラを経て、傑出した才能を持つドライバーとなった。ローソンはレースの任務と並行して、レッドブル・レーシングのテスト兼リザーブドライバーを務め、F1パドックで貴重な経験を積んだ。
ローソンのF1デビューは、2023年に負傷したダニエル・リカルドの代役という予想外の形で実現した。彼は5回のグランプリに出場し、有能で順応性のあるドライバーであることを証明した。
彼は、リカルドがチームを去った2024年にシートに復帰し、その一貫性とレーステクニックで引き続き強い印象を与え続けている。そして2025年、リアム・ローソンは、現世界チャンピオンのフェルスタッペンとともに、レッドブル・レーシングのフルタイムドライバーとしてレースをするという、究極の夢を実現することになる。
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