中東のエキスパートも語る。日本代表が突くべきサウジアラビア代表の弱点とは?

1月21日(月)11時0分 フットボールチャンネル

いよいよ始まる「本当のアジアカップ」

日本代表は21日、AFCアジアカップ2019の決勝トーナメント1回戦でサウジアラビア代表と対戦する。ともにロシアワールドカップに出場した国同士で、日本にとっては厳しい戦いが予想される。そんな中で注目すべき点はどこにあるのか、サウジアラビアの弱点は何か。中東に精通する記者に取材し、実際に過去の試合で見られた現象とともに分析する。(取材・文:舩木渉【UAE】)

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 通算成績は9勝1分5敗。これは日本代表が21日にAFCアジアカップ2019の決勝トーナメント1回戦で対戦するサウジアラビアとの過去の激闘の記録である。一見すれば分がいい相手のように思えるが、最後の対戦だった2年前のロシアワールドカップ・アジア最終予選の最終戦は0-1で敗れた。

 ワールドカップに5度出場し、直近のロシア大会でもグループリーグで1勝2敗と健闘したサウジアラビアはアジア屈指の強豪国に違いない。森保一監督率いる日本代表にとって、中東の盟主に君臨する大国との一戦は大陸王座奪還に向けた大きな山だ。

 日本のキャプテン吉田麻也も「次からが本当のアジアカップが始まる」と気を引き締めていたが、決勝トーナメントは負けたら終わり。一瞬の隙も見せてはならない。サウジアラビアは4-1-4-1をベースにボールポゼッションを重視しながら前線のスピードを活かすサッカーでグループリーグは2勝1敗。第3戦でカタールに敗れたものの、ファン・アントニオ・ピッツィ監督の指揮の下、確かな実力を示して勝ち上がってきた。

 吉田はサウジアラビア戦に向けて「お互いに監督もチームも変わっていると思うので、前回の試合(2017年の敗戦)を比較材料にするのはちょっと難しい」と述べつつ、「組織的にしっかりしているし、前線にスピードのある選手たちがたくさんいて、裏への飛び出しというのが1つのポイントになる」と分析している。

 グループリーグで2得点を挙げているファハド・アル・ムワラッドが、まさに吉田の言う「スピードのある選手」。身長168cmと小柄ながら1トップとして攻撃陣をけん引している。

 だが、アル・ムワラッドが1トップとして起用されていることに懸念を示したのはシュアイブ・アフメッド記者だ。UAE生まれで中東サッカーに精通し、英語でサウジアラビアのサッカー情報を発信するウェブサイト『KSA Football Insider』を運営する同氏はサウジアラビア代表における「ストライカーの力不足」を指摘する。

「アル・ムワラッドは本来ウィングの選手。今回、ピッツィ監督が連れてきた純粋なストライカーはモハメッド・アル・サイアリのみで、彼は今大会前までA代表キャップの全くない、もう25歳の選手だ。しかし、彼はサウジアラビアリーグで同国人選手で最も得点を取っている選手。その状況は決して好ましいものではない」

難敵サウジアラビアのキーマンは?

 サウジアラビア代表は全員が自国リーグ所属選手で構成されている。ところがサウジ・プロフェッショナル・リーグの得点ランキング上位には元フランス代表のバフェティンビ・ゴミスをはじめ、外国人ばかりが名を連ねている。現在8得点のアル・サイアリは7位、7得点のアル・ムワラッドが8位タイと地元の選手たちの存在感は薄い。ロシアワールドカップで10番を背負ったベテランFWモハメッド・アル・サフラウィもリーグ戦での不振が響いてアジアカップ出場を逃した。

 とはいえ中盤にはピッツィ監督が標榜するテクニカルなサッカーを可能にする人材が揃っている。その中でも要注意なのは4-1-4-1のアンカーに入るアブドゥラー・オタイフ。グループリーグ3試合全てに先発起用された司令塔は、チーム最多の274本のパスを蹴った。そのうち半数以上の162本を敵陣内で記録している。それだけチームとして相手を押し込みながら戦えていたということであり、戦術的なキーマンであることに疑いはない。

 シュアイブ氏も「オタイフは間違いなくチームの出来を左右する選手」と太鼓判を押す。そしてもう1人の隠れたキーマンに挙げたのが、モハメッド・アル・ブライクだった。背番号2の右サイドバックについては「90分間アップダウンを繰り返せる驚異的な運動量が最大の特徴で、攻撃的に振る舞ってクロスやシュートに絡める。オタイフのパスと絡むことで大きな武器になる選手」と評していた。

 そしてサウジアラビアにはグループリーグ初戦で負傷したヤセル・アル・シャフラニが日本戦で復帰予定。「サウジのマルセロ」とも称されるクロスやカットインなど多彩な能力を持つ左サイドバックの帰還も追い風になりそうだ。

 ボールポゼッション時には強みを発揮でき、それを実現するための人材も揃っているサウジアラビアだが、不安材料もある。シュアイブ氏が最大の懸念点に挙げたのは「セットプレー守備の脆弱ぶり」だった。

 これは吉田も「ちょっと集中力を欠くシーンが多い」と指摘しており、日本側の分析とも合致する。敗れたグループリーグ最終戦のカタール戦ではコーナーキックからあっさりと失点しており、それ以外の試合でも危険な場面を何度も作られていた。

鍵になるコーナーキック

 日本は2017年の対戦でポゼッション率47:53と上回られ、ボールを握らせてもらえらなかった。21日の試合で同じような展開になることも想定できるだけに、勝つためにはセットプレーの攻略は重要なポイントになる。では、どのようにゴールへの道筋を見つけていくか。蹴るポイントが常に一定で比較しやすい左右のコーナーキックの場面を参考に紐解いていきたい。

 まず、サウジアラビアはコーナーキックの守備においてゾーンディフェンスとマンツーマンマーキングを併用している。ロシアワールドカップではマンツーマンディフェンスのみ、昨年11月16日のイエメン戦までは同様の形で守っていたが、同月20日のヨルダン戦から突然守備のアプローチを変えた。

 ただ、これはあまりうまくいっていないようだ。サウジアラビアのコーナーキック守備では、基本的には身長の高い3人ないし4人をゾーンディフェンス要員としてゴールエリア近辺に均等な間隔で配置し、1人をキッカーとゴールの間でコーナーフラッグにできるだけ近い位置にストーンとして1人、ボールが飛ぶであろうコース上に1人、ボールに近いサイドのペナルティアーク付近に1人を置く。残るフィールドプレーヤー3人は、飛び込んでくる相手の中で高さがあって危険そうな選手に優先して予防的にマークにつく。

 担当エリアを持つゾーンディフェンス要員とニアサイドのストーンを除けば、あとはキッカーの利き足やショートコーナーの可能性、ペナルティエリアに入ってくる相手の数、GKの前に妨害に入る選手の有無などで微妙に配置が変わっていく。GKを妨害しようとする選手にはしっかりとマークをつけて対処し、壁のように立つニアサイドの選手を1人削るといった具合だ。

 ここで守備が機能しない要因は、ゾーンディフェンスの選手たちが飛び込んでくる相手に気を取られて担当エリアをおろそかにしたり、無闇にスペースを空けてしまったりする現象が見られるところにある。カタール戦ではGKを妨害するようにニアサイドのゴールポスト近くに立っていた相手FWアルモエズ・アリを見失い、あっさり人と人の間に入られてフリーに近い状態でヘディングシュートを許した。

サウジアラビアが根本的に抱える大きな弱点とは

 もう1つ、サウジアラビアがセットプレー時に抱える弱点は平均身長の低さである。基本的に身長の高い選手から優先してゾーンディフェンス要員になるため、センターバックのアリ・ハジ・アル・ブライヒ(182cm)やモハメッド・アル・ファティル(180cm)などがゴール前に立つ。

 するとマンツーマンで相手の長身選手のマークにつくのが、アル・ムワラッド(165cm)やヤヒア・アル・シェフリ(165cm)、ハタン・バーブリ(170cm)といった小柄な選手たちになってしまう。これではマークしていないも同然だ。

 そもそもサウジアラビア代表には185cm台後半の選手がほとんどおらず、それこそがセットプレー時の守備の不安定さを招いている大きな要因にもなっている。日本戦で今大会は負傷によって欠場が続いていたキャプテンのオマル・ハウサウィが復帰し、この身長185cmを誇るベテランセンターバックが豊富な経験で守備に安定感をもたらすのではないかと期待されているが、高さで分が悪いのは変わらない。

 日本代表には吉田麻也(189cm)を筆頭に、冨安健洋(188cm)、酒井宏樹(183cm)といった長身選手が揃い、遠藤航(179cm)や武藤嘉紀(178cm)も空中戦を苦にしない。もし塩谷司(182cm)がボランチで起用される、あるいは大迫勇也(182cm)が復帰するといったことがあれば、高さではさらに優位に立てる。彼らが勢いよく飛び込んでいくことで、サウジアラビアの守備に混乱をもたらすことができるだろう。

 日本代表がグループリーグ初戦のトルクメニスタン戦や第2戦のオマーン戦を踏襲したメンバーでサウジアラビア戦に臨むとすれば、おそらくメインのキッカーは柴崎岳になる。そこに堂安律なども加えて変化をつけながら、精度の高いボールをゾーンディフェンスとマンツーマンディフェンスの間に供給できれば大きなチャンスが生まれるはず。

 今大会まだ一度も成功していないセットプレーからゴールを奪えることが証明できれば、準々決勝以降の戦いにおいても大きな武器になるのは間違いない。サウジアラビア戦はどちらのチームがボールを握って主導権を握るのか、そしてセットプレーでのゴール前の攻防に要注目だ。

(取材・文:舩木渉【UAE】)

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