高津臣吾・ヤクルト二軍監督 「叱らない」育成哲学

1月27日(日)16時0分 NEWSポストセブン

二軍監督の仕事術とは(撮影/小笠原亜人矛)

写真を拡大

 ペナントレースで常に結果を求められる一軍の監督・コーチと、新人選手の育成や調整中のベテランの再起を託される二軍監督では、同じ指導者であっても求められるものが違う。ヤクルト二軍監督・高津臣吾氏の著書『二軍監督の仕事』(光文社新書)がベストセラーになっているのは、ビジネスマンにも通じる若手の育成法、組織の運営法が詰まっているからだ。春季キャンプを目前に控えた高津氏に、二軍監督としての心構えを訊いた。


 * * *

 二軍監督に就任して3年目のシーズンを迎えました。高卒の選手は、高校までエースで4番だった人が多いですが、プロに入ると一番下っ端です。指導者として「ゼロから教える」という心構えでやっていますが、一番気をつけているのは「野球に関しては叱らない」ということです。


 叱って学んでくれればいいと思いがちですが、失敗から成功へ導くためには、何がダメだったのかを説明して、選手からも意見を聞くことで、本人が納得して次のプレーに準備できるほうがいい。技術面で叱るのは二軍コーチに任せていて、僕の役割はヒントを与えることだと思っています。


 僕が叱るとしたら、野球以外のことだけ。選手がSNSに書いたことで問題が起きたり、門限を破るなどチームのルールを守らないときは厳しく叱ります。


 監督やコーチにアピールするために練習する“見せ練”に励む若手もいますが、僕はそれが一番嫌い。それは前向きな練習とはいえない。常に「うまくなりたい」という欲を持って練習してほしいと話しています。


◆「一軍の要望」が最優先



 昨年は、ドラフト1位で入団した村上宗隆(18)が一軍に昇格して初打席初本塁打を放ったり、2016年ドラフト3位の投手・梅野雄吾(20)が8月に一軍に昇格してから26試合投げたりと、成長を見せてくれました。この瞬間が、二軍監督の醍醐味だと思います。


 球団の将来を担う選手を育てるには、きちんとした育成プランが必要です。そのために、ヤクルトには「強化指定選手」という仕組みがあります。


 強化指定選手は一軍や球団のスタッフたちと協議して決めます。指定された選手は、調子が悪くても二軍の試合で使い続けます。「この投手は何日間に1回は登板させないといけない」など、開幕前に球団が育成方針を固めるのです。


 僕たち二軍は、どんなに結果が出なくても一軍の方針に従って起用し続けます。


 一軍で将来8番を任されるタイプの選手は、二軍でも8番で起用するようにもしています。捕手の古賀優大(20)は、どんなにバッティングの調子が良くても8番から打順を上げません。一軍では間違いなく8番を打つからです。次の打者が投手であることを意識しながら打席に入るように指導しています。


 最も優先されるのは、一軍が何を望んでいるのか。二軍に調整にきた一軍の先発投手を、3週間後に一軍で投げさせたいというのであれば、逆算して二軍の試合で優先的に投げさせることもあります。


 一軍から「いま状態がいい左投手はいるか?」と問い合わせがあったら、僕たちから推薦する。一軍とのやり取りは、毎日密に行なっています。


“親会社”の経営方針や要求を的確に把握し、それに合った材料(人材)を整えて、送り出す。二軍監督は、下請け会社の社長みたいなものでしょうか。


◆「失敗の翌日」が大事



〈二軍には18歳の新人から、ケガで調整する30代、40代のベテラン選手もいる。そうした選手のモチベーションを保つのも、二軍監督の仕事だ〉


 二軍キャンプでのスタートが決まったベテラン選手は、「一軍からお呼びがかからなかった」と感じます。「開幕まで何日ある」とか「オープン戦で結果を出そう」と声をかけますが、気持ちが乗っていかない選手も出てきます。ケガで調整中だったり、リハビリ中で野球ができない選手を見ると、若い選手と同じ態度で接してはいけないと感じます。


 例えば、「頑張れ」という言葉ひとつでも、18歳とベテランでは受け取り方が違います。リハビリ中の選手には重い言葉になるかもしれない。そういった一つの言葉を使い分けるようになりました。


 一軍から二軍に落ちてくる選手は、年齢関係なく精神的に傷ついている選手が多い。そこからもう一度尻を叩いてやらせるのは難しいので、まず長い時間をかけて話します。


 他にも気をつけているのは、「臆病になったり、躊躇してミスしたらすぐに交代させること」と、「そうやって交代させた選手は、翌日に必ずスタメンで使うこと」です。そういうミスをした選手は、コーチが指導して復習しているので、それを披露する場を作ってやる必要がある。翌日に試合に出ると、プレーが何か変わっていることが多いですね。


 二軍では、試合に負けても、選手が学んでうまくなってくれればいい。常に勝たなければいけないのは一軍の勝負。二軍では、負けることで悔しさや苦しさを感じ、勝ちに対する貪欲さを身につけてほしいと思っています。


※週刊ポスト2019年2月8日号

NEWSポストセブン

「高津臣吾」をもっと詳しく

「高津臣吾」のニュース

トピックス

BIGLOBE
トップへ