日本代表、イラン戦勝利の鍵は“塩試合”? アジアカップ準決勝、試されるチームとしての総合力

1月28日(月)13時47分 フットボールチャンネル

イランが狙う一瞬の隙

 日本代表は28日、AFCアジアカップ2019の準決勝でイラン代表と対戦する。おそらく今大会最も実力のあるチームとの対戦は、森保一監督が率いるサムライブルーにとって非常に重要な大一番。決勝進出の権利を手にするために必要なこととは。(取材・文:舩木渉【UAE】)

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 後ろ向きになった瞬間、喰われる。体の向きだけでなく、メンタル的にも、ただ視線を向けただけでも…彼らはその一瞬を狙っている。

 イラン代表はAFCアジアカップ2019の準決勝まで、圧倒的な強さを見せつけて勝ち上がってきた。5試合で12得点無失点。グループリーグ初戦で多くの強豪が苦しむ中、イエメン代表を全く寄せつけず5-0で粉砕した試合だけでも、今大会最強クラスのチームであることは明らかだった。

 その後も大会が進むにつれて、彼らが他のチームとは段違いの領域にいるという考えが推測から確信に変わっていった。8年目を迎えたカルロス・ケイロス体制も今大会で終わり。ロシアワールドカップ出場メンバーの大半が残っているチームは、その集大成を披露すべく、闘争心むき出しでピッチを駆け回っていた。

 イランのゴールにはいくつかのパターンがある。1つは準々決勝の中国戦の1点目のような、相手DFの処理ミスに対して猛然とプレッシャーをかけてボールを奪い、そのままゴールを陥れる形。3-0で勝利した中国戦は、全てのゴールがほとんど同じような流れで生まれた。

 最終ラインからロングボールが蹴られると、自陣ゴール方向を見て下がりながらの対応でもたつく相手DFにプレッシャーをかけてボールを奪い、ゴールに一直線。中国の守備陣は18分、31分、91分と3度にわたってズタズタに引き裂かれた。

 これには日本代表のDF吉田麻也も「中国戦なんかは特にそうですけど、相手の隙を突いたり、相手の隙を見逃さなかったり、フィフティフィフティのボールに対して自信を持っている感じはあるので、そこの処理を確実にこなしていかないといけない」と危機感を持っている。

 中国だけでなく、ラウンド16で対峙したオマーンもこの形で猛獣たちの餌食になった。もちろん1つだけでなく、彼らはセットプレーからもゴールを生み出すことができ、流れるようなパスワークで相手の陣形を崩してゴールネットを揺らすこともできる。実に多彩な攻撃パターンを持っているのだ。

 日本代表が準々決勝で苦戦を強いられたベトナムにも、イランはグループリーグで対戦した際に地上戦を挑んで粉砕した。ここまでの対戦相手は、イランの圧倒的な力を前にただただひれ伏すしかなかった。

日本代表は「守備的」!?

 そして28日には、準決勝の日本代表戦を迎える。森保一監督が率いるチームは、このイランに対してどうやって勝ち筋を見つけていくのか。指揮官は「まずはしっかり球際でバトルするところ、相手のプレスを回避できるように、攻撃でボールを握れるようにチャレンジしていければ」と語っていたが、どんな展開になっても常に危険に晒され続けるのは間違いない。

 もし日本がボール支配率を高めて主導権を握っているように見える展開になったとしても、イランは一発のカウンターで状況をひっくり返すだけの力を持っているし、逆にボールを渡してしまえば一方的に殴られるサンドバック状態になってもおかしくない。

 GK権田修一は「(準々決勝の)中国との試合を見ても、オーストラリアとUAEの試合を見ても、ディフェンスの選手の処理のミスで(失点する)というのは、最近目につく。逆にああいうのがうちじゃない試合で出てくれている分、みんなで『細心の注意を払っていこう』という話は逆にできている」と語り、やはり取り返しのつかない事態を招きかねない重大なミスを警戒していた。

 日本代表にとっては自分たちである程度ボールを握りながら極力リスクを避けつつ、終盤の1点勝負に持ち込む展開が理想的だろうか。とはいってもイランは常に危険な存在であり続けるが、今大会これまで森保ジャパンが見せてきた、いわゆる“塩試合”が最も勝利の可能性が高い戦い方になるような気もしている。

 27日の記者会見では、海外の記者から現在の日本代表をEURO2004で下馬評を覆して優勝したギリシャ代表に例える質問が出た。5試合全てが1点差で、ここ2試合は1-0が連続していることもあって、それが「守備的」と捉えられているようだ。

 確かに他の海外の記者からも「今の日本代表はなぜこれまでと違い『守備的』なのか?」と尋ねられたことが何度かあった。ただ、当時のギリシャ代表はタレント力で他国に劣る分、極端に守備的な戦いで「ゴールを守ること」に重きを置いたチームで、決して「守ること」に特化していない日本代表とはアプローチが違う。


倒さなければならない壁、いかに立ち向かうか

 遠藤航もイラン戦に向けて「僕らはしっかり僕らのサッカーをするということを第一に考えてプレーしたいと思いますし、チャレンジする気持ちを忘れずにプレーしたい」と述べ、まずは自分たちでボールを握る展開を目指す意思を示していた。

 もちろん「難しい時間帯や自分たちのペースで試合を進められない時に、いかに選手たちがピッチ上で臨機応変に考えながらプレーできるかをやっているので、それを継続してやっていければ」と厳しい展開も予想している。それでも「攻撃的に」挑戦する価値は十分にある。

 イランとて弱点がないわけではない。攻守において局面で個のクオリティに頼る傾向があり、特に守備では素早くボールを動かされたり、1人が剥がされた時にチャレンジ&カバーが追いつかないままゴールを許してしまうこともある。

 攻撃面では個人突破が失敗すると守備への切り替えが若干遅くなる場面も見られた。当然ながら今大会無失点、この4年間の公式戦で敗れたのはロシアワールドカップのスペイン戦のみという事実を踏まえれば、イランからゴールを奪うことが至難の業なのは事実だが、チャンスは必ず転がってくる。

 権田は「諦めずに最後までしっかりボールにいくとか、チャレンジの後にしっかりカバーに入るとか、最後まで体格差のある相手にも体を寄せるとか、そういうことをみんなが丁寧にできるのが日本人の良さであり、今の日本代表の選手はそういうことができている」と組織力と献身性への自信を語っていた。

 まずはチームとしての一体感をもって、怯まずに戦いを挑むこと。そうすれば日本代表にも勝機はある。吉田が言うように「ヨーロッパの選手もJリーグの選手も自分のキャリアのリスクを背負って来ている」大会の、「決勝のつもりで戦わないといけない」試合がイラン戦。メンタル面でも戦術面でも後ろ向きにならず、これまでと変わらない“助け合い”“支え合い”の精神で、決勝への切符を掴み取りたいところだ。

(取材・文:舩木渉【UAE】)

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