メッシの私生活を守る豪邸。スーパースターが欲しがる物件の条件は?

1月28日(火)6時0分 Sportiva

【サイモン・クーパーのフットボール・オンライン】
サッカー選手はどんな家に住んでいるのか(後編)

 移籍市場が開いている今、新しいクラブに移った選手は、どんな家をどんなふうに選んでいるのか。


バルセロナ郊外の山に囲まれた村で暮らすリオネル・メッシ(バルセロナ)一家 photo by AFP/AFLO

 クラブとしては選手たちを、彼らの仕事場(つまり練習場だ)に近い静かな町に落ち着かせたい。何年か前にマンチェスター・シティの練習場で、僕は受付カウンターのすぐ後ろの壁にマンチェスター周辺の地図が貼られているのを見つけた。通りすぎる選手の目に嫌でも入るようになっている。

 地図は選手が住むのにおすすめの8つの地域を目立つようにしていた。ナイトライフが充実しているマンチェスターの中心街は、当然ながらおすすめに入っていなかった。

 マンチェスターから150キロ圏内には、43のプロフットボールクラブがある。おそらく世界で最もフットボール選手の人口密度が高い地域だろう。

「このあたりでは、フットボール選手は同業者がいるエリアに家を持ちたがる。チームメイトが最近、家を買ったところだとか」と、不動産会社サビルズ・ウィルムスロウのアンドルー・ソープは言う。

 この地域では、フットボール選手が高級不動産市場をほぼ独占している。サビルズ・ウィルムスロウで賃貸物件を担当するトム・バークによれば、このエリアのファミリー向け物件の最高額は月5000ポンド(約70万円)程度。しかし、プレミアリーグの選手が相手なら、5000ポンドが最低額になるという。

「フットボール選手を狙って賃貸物件を建てる不動産業者もある。想定している賃料で借りられるのはフットボール選手くらい、という物件だ」

 賃料が問題になることは、ごくまれだ。バークが最近経験した例では、週給15万ポンド(約2000万円)を超える選手が、月2万ポンド(約280万円)の物件にいい顔をしなかった。理由は──選手の考えていた予算が月1万8000ポンド(約250万円)だったからだ。

 そうかと思えば、こんなゆるい交渉で、簡単に契約が決まることもあるという。

 選手「え、いくらだって?」

 バーク「月1万2500ポンド(約175万円)です」

 選手「それはすばらしい! 前の家は月1万8000ポンド(約250万円)だったからね」

 フットボール選手がどういう家を好むのか、不動産業者はよくわかっている。古くて伝統のある家はいらない。

「たいていの選手は、モダニズムの家が好きだ」と、ソープは言う。

「リノベーションが必要な家は欲しがらない。体ひとつで、すぐに住める家を求めている」

 ソープは最近、完璧な家具付きの物件をある選手に売った。

「引っ越しの日に、彼はスーツケースをひとつだけ持ち、シェフを連れてやって来た」

 セキュリティーやプライバシーの問題は、もちろん重要だ。フットボール選手の家は盗難に遭いやすい。住人が留守にしている日は世界中が知っているし、家に高級時計や宝石や現金が置かれていることも多い。ときにはクラブが自前のセキュリティー担当者を派遣して、選手の家のセキュリティーシステムを厳しくすることもある。

 不動産業者バートン・ワイアットで住宅販売を統括するスティーブン・ラブレイディは、フットボール選手は「いろんなおもちゃ」を欲しがると言う。

「ミニシアターやシミュレーションゴルフ、室内プールに大きなバスタブもお好みだ」

 ゲーム専用室も人気がある。元イングランド代表FWのピーター・クラウチは著書『フットボール選手になる方法』の中で、自宅にゲーム室を作りたがる選手が多いと書いている。

「プレイステーションでフットボールゲームの『FIFA』をひと晩中やったり、自宅にあるのだから儲かるわけでもないスロットマシンに夢中になったりする」

 さらにクラウチは、自宅に大きな水槽を置いて「本物のサメ」を飼っていたチームメイトがいたとも書いた。

 こんな選手たちを笑うのは簡単だが、忘れてはいけないことがひとつある。有名フットボール選手は、自分の家に閉じ込められている囚人のようなものだ。外に一歩出たが最後、ファンが殺到してきて、一緒に自撮りをしてほしいとせがまれる。フットボール選手にとって、家は自分を守る城なのだ。

 フランスの天才FWキリアン・エムバペ(パリ・サンジェルマン)も、おおむね家に引きこもって暮らしている。自分に子どもができて、若い頃のパパはどんなに楽しかったのと聞かれたら、「何も話すことはない」と、エムバペは言う。

 世界最高のフットボール選手であるリオネル・メッシ(バルセロナ)は、カタルーニャの山に囲まれた村で、家族と静かに暮らしている。家があるのは、バルセロナ郊外のカステルデフェルスという村。隣家を買い取るなどして拡張やリフォームを繰り返し、広い敷地に小さめのフットボールのフィールドまで造った。

 ヤシの木とブーゲンビリアの花と白い壁が、メッシのプライバシーを守っている。地中海を臨むリゾート地のシッチェスは車で20分ほどだが、そこのナイトライフとも縁がない。メッシは息子たちを学校に送り迎えし、近所に住む親友でチームメイトのルイス・スアレスとバーベキューをしたり、マテ茶を飲んだりしながら、子どもたちのことを話す。

 フットボール選手の家をまとめて見ることができるのが、マドリードの西郊にあるラ・フィンカ。セキュリティーのためにゲートが設けられている超高級住宅街だ。

 ラ・フィンカには昔も今も、マドリードを本拠地とするクラブの一流選手がたくさん暮らす。クリスティアーノ・ロナウド(現ユベントス)、アントワーヌ・グリーズマン(現バルセロナ)、ガレス・ベイル(レアル・マドリード)……。みんな高い塀の向こうにあるグレーのモダニズムの豪邸の主になった。


 この住宅街で動いているものといえば、ゆっくり巡回している警備の車くらい。マドリードの繁華街は、はるか遠くに思えてくる。

 選手たちは邸宅に落ち着くと、生活面のことは人まかせにしてしまいがちだ。代理人のミノ・ライオラは、クライアントであるマリオ・バロッテリ(当時マンチェスター・シティ)が電話をかけてきて、「家が燃えている!」と言ったときのことを忘れられない。「いいから早く消防車を呼べ!」と、ライオラは言った。

 ときには「部屋の明かりがつかないんだけど」と、クラブのスタッフに電話してくる選手がいる。たいていの原因は、電球が切れていることだ。現役を引退してクラブのサポートを得られなくなった選手は、生活面で不自由を感じることもある。

 しかし、そうなるころには若いスター選手が、引退した選手の住んでいた豪邸を買っているのだろう。若い選手にインテリアのセンスがあれば、サメの水槽が置かれていた場所は、ダンスフロアにリフォームされているかもしれない。

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