アジアカップ準決勝、イランを自滅に追い込んだ日本代表。それを可能にした唯一無二の存在【西部の目】

1月29日(火)12時10分 フットボールチャンネル

イランを「負けさせる」

日本代表は28日、AFCアジアカップ2019・準決勝でイラン代表と対戦。3-0で勝利し決勝へと駒を進めた。森保ジャパンは状況に合わせたプレーを披露し、イランが負ける形にはめ込んでいった。まだ課題は残るが、進歩を見せた部分もある。(取材・文:西部謙司【UAE】)

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 準決勝で今大会最強の相手と対戦した日本は、これまでで最高のプレーをして3-0と完勝してみせた。ただ、日本のアプローチはこれまでの試合と同じといっていい。

「イタリアは勝てないが、相手がイタリアに負けることはある」

 これはヨハン・クライフの言葉だが、今大会の日本も勝つというより相手に負けさせるチームであり、それはイラン戦でも変わらなかった。日本の3ゴールはいずれもイランの自滅であり、得点以外の試合展開も自滅を誘う形になっていた。

 ハイクロス、ロングスロー、フォアプレス、ミドルシュート。この4つが連続する展開になればイランのペースである。日本がそれを避けるには、ボールを保持して押し込んでしまったほうが良い。ただ、ポゼッション攻撃は今大会の日本の弱点であり、それ以前にボールを支配して押し込めるかどうかは微妙だった。

「なかなかボールを握るのは難しいと思っていました」と、森保一監督も語っている。「難しい」と考えていたボール支配が可能になったのは、大迫勇也の存在が大きかった。

 大迫が隙間受け、南野拓実は裏抜けと役割分担が明確になり、大迫への縦パスでイランの守備バランスを崩せていた。大迫がいなければ、イランを「負けさせる」展開にはできなかったと思う。

前半のポゼッション59%の意味

 前半、日本のポゼッションは59%だった。ただ保持率が上回っていただけでなく、大迫を経由したパスワークでイランのディフェンスライン裏への侵入ができるようになったことで、敵のカウンターを受けないまま、ポゼッション攻撃から得点する可能性が高まっていた。後方から冷静につなぐこともできていた。

 トルクメニスタン戦やベトナム戦がそうだったように、前半にボールを支配することで相手のスタミナを奪う狙いも明確にみえていた。たとえ得点できなくても、イランの長所を消すことができる。押し込んで足を使わせれば後半にパワーを残させないこともできる。

 唯一、この試合の課題をあげるとGKからのポゼッションができなかったことだ。GKからロングボールを使うケースがほとんどだった。

 大迫、南野が頑張って収めようとしていたが、それでもGKからのロングボールでは相手ボールになりやすい。もし、GKからもパスをつなぐことができていれば、前半の保持率は70%近くに上げられていたはず。それができていれば、10分間あまりイランのペースが続く時間帯は削り取れた。59%は悪い数字ではないが十分とはいえない。

ハイボール耐性と2-0からの展開

 後半も10分間ほどイランのリズムで推移した。しかし、押されながらも日本のDF陣はしっかりと跳ね返している。ロシアワールドカップではベルギーの「空爆」に耐えられなかったが、イランに対してはさほど危なげなかった。ベルギーとは比較にならないとはいえ、イランもパワーと高さはある。日本のハイボール耐性には進歩がみられた。

 先制点は、南野が倒れたときに勝手にプレーを止めてしまったイランのミスがきっかけだった。カルロス・ケイロス監督が「ナイーブなミス」と指摘したとおりである。2点目もイランは自陣でのパスミスから日本にPKを献上。

 2-0となった後、イランは4-4-2に変えて縦へのロングボール一辺倒の攻撃に傾く。最初からそうだったとはいえ、2点ビハインドなので4トップにして高い縦パスを打ち込んでいく。しかし、サイドからのクロスでも揺るがなかった吉田麻也、冨安健洋のコンビにこれが通用するわけもない。

 セカンドボールさえ拾ってしまえば、すでに疲労していたイランのMF2人を通過するのは造作もなく、日本はあと2、3点追加できそうな流れになっていた。ロスタイム、またもイランのパスミスをきっかけに原口元気が鮮やかなドリブルシュートを突き刺して3-0。

 2-0としてからの日本はロングボールカット、カバーリング、セカンドボールの回収もしくは再度のプレッシャーでイランに選択肢を与えず。落ち着いてイランが負ける形にはめ込んだ。ベルギーに2-0とした後にゲームを殺せなかったのとは違っていた。

 技術的なレベルアップの見られた今大会だが、試合運びは総じて上手くない。その中で、日本は最も状況に合わせたプレーができるチームであり、長年この大会に優勝できていないイランが墓穴を掘った、あるいはそうさせられた試合だった。

(取材・文:西部謙司【UAE】)

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