元F1王者ニコが率いるチーム・ロズベルグ、モータースポーツ活動から実質撤退か
2025年1月30日(木)10時58分 AUTOSPORT web
2016年にF1世界選手権でシリーズタイトルを獲得したと同時に、F1ドライバーとして現役を終え、実業家やF1中継のレポーター業をこなすニコ・ロズベルグ。
かつてDTMドイツ・ツーリングカー選手権等で活躍したチーム・ロズベルグの今季の活動の動向が気になるところだが、現在ニコが率いる組織ではモータースポーツ以外の業務に集約という意外な展開が行われているようで、驚きが隠せない。
今年初頭からニコは、チーム・ロズベルグ・エンジニアリングGmbH(TRE)の完全な経営権を引き継いでいる。
TREは、チーム・ロズベルグの子会社として1997年に設立されたシャシー開発を専門に行うエンジニアリング会社で、ドイツの大手自動車メーカー5社のうち4社が長年の顧客だという。2008年から2024年末までTREは、チーム・ロズベルグとIAV GmbHの合弁事業だったが、今年からはIAVが撤退し、完全にニコが経営権を持つ。
「長年に渡る貴重なパートナーであるIAV社に感謝し、TREを新たな時代へと導くことを誇りに思う」とニコはコメントしている。
「この度の独立は、新しい市場やパートナーシップにおいてTREの革新力を高める新たな機会となる。我々の目標はプレミアムセグメントにおけるエンジニアリングサービスのブティックプロバイダーとしてTREを強化し、成長を続けることで、長年に渡って追及してきた卓越性を顧客のみなさまに提供することだ」
■“F1エンジニア”がクラス1を担当していた時期も
そもそもチーム・ロズベルグは、ニコの父親であるケケが1995年に独自に立ち上げたもの。当初ケケはチームオーナー兼ドライバーとしてオペル・カリブラV6 4×4でDTMへ参戦。後にADACフォーミュラマスターズやF3を経て、アウディのワークスのひとつとして長年活躍をしてきた。2009年には山本左近がチーム・ロズベルグへ所属し、アウディR8でADAC GTマスターズへシリーズ参戦を果たしている。
フランス国境にも近いドイツの中央西に位置するノイブルグ・アン・デア・ヴァインシュトラーセという小さな町にそのファクトリーがあり、ホッケンハイムリンクから30分程の距離とアクセスも良く、長年DTM部隊の活動拠点となっていた。
その町の名の通り、チーム・ロズベルグのファクトリーがあるのはワインの産地で、ブドウ畑に囲まれた風光明媚で自然豊かな町だ。
ロズベルグ・エンジニアリングはチーム・ロズベルグの敷地内に別棟として建っており、地域の雇用促進と経済活性化を目的のひとつとして、ニコが以前から投資をしていた企業でもあった。
クラス1の規定共通化により、日本のスーパーGTと日独交流戦が計画され両国がそれに向けて盛り上がっていた頃、ニコは父のケケからチーム・ロズベルグの経営を引き継ぎ、実質的なチームオーナーとなっていた。また、メルセデスAMG・ペトロナスF1時代にニコを担当していたエンジニアたちがこのロズベルグに転職し、クラス1のマシンを担当していたこともあった。
クラス1終焉後、チーム・ロズベルグはアウディR8 GT3を駆りDTMに参戦していたが、2022年のシーズンをもってDTMから撤退。アウディのGT3の活動の後には、BMWとM4 GT3についての交渉を行ったが決裂したとされ、BMWでのレース活動は叶わなかったと言われている。
彼らは2021年に誕生したエクストリームEへと活動をスイッチし、2021、2023年と2度のシリーズチャンピオンを獲得するも、2024年のシーズンをもってエクストリームEの活動が終了。チーム・ロズベルグの今後の活動に注目が集まっていた。
過去、このチーム・ロズベルグの本館はモータースポーツのロゴが飾られ、ファクトリーとして使用されていたが、現在ではTREのロゴに変わっている。また、アウディR8 GT3でのDTM活動終了以降は、大半のクルーがチームを離れていた。今後のモータースポーツ活動が気になるところだが、実質的に『チーム仕舞い』となった感が否めないのは非常に残念であり、いつの日か再びモータースポーツの世界にカムバックしてくれることを望むばかりだ。
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