南野拓実、未来へ繋げるべき決勝の一撃。苦悩と充実…新たなエースが挑んだアジアカップ

2月2日(土)10時0分 フットボールチャンネル

随所で好プレーも遠い1点

日本代表は1日、AFCアジアカップ2019決勝でカタール代表と対戦して1-3と敗戦。準優勝という結果に終わった。MF南野拓実は今大会、エースとして大きな期待を集めたが、初戦から準決勝まで無得点と苦しんだ。しかし、決勝では一時は1点差に詰め寄る得点を決めた。このゴールが未来へとつながる一撃となるはずだ。(取材・文:元川悦子【UAE】)

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 5-3-2の布陣を採り、徹底した日本対策を講じてきたカタール相手に前からのプレスがはまらず、ボールの奪いどころを見出せず、開始27分間で2点を失う苦戦を強いられた日本。

 8年ぶり5度目の優勝に王手をかけていたAFCアジアカップ2019の決勝で前半から予期せぬ劣勢を強いられたことは、チームに重くのしかかった。後半から反撃に転じ、敵を追い込んだが、今大会6戦無失点のカタール守備陣はどこまでも固い。選手たちからも焦燥感がにじみ出ていた。

 その堅牢な守備ブロックを打ち破るシーンが後半24分にようやく訪れる。酒井宏樹の横パスを塩谷司がタテに入れ、DFアルハジリを背負った大迫勇也がワンタッチで落とした瞬間、背番号9をつける男・南野拓実が鋭く反応。内向きに反転してGKアルシーブをうまく外しながら浮き球の右足シュートを蹴り込んだのだ。

 南野にとっては喉から手が出るほど欲しかった今大会初ゴール。28日の準決勝・イラン戦で3点をお膳立てするなど日本の勝利に貢献し続けてきたものの、自身のゴールだけは遠かった。

「ここまで苦しんでいたわけではない。チームが勝つことが一番だし、そこに貢献している自負はあった」とは言うものの、得点を決めていた大迫、堂安律、原口元気ら他のアタッカー陣に引け目を感じた部分も少なからずあっただろう。決勝での一撃は募らせてきた悔しさと不完全燃焼感を払拭するものになるはずだった。

「1点が入った時は時間帯も悪くなかったし、チーム後半の戦い方だったらチャンスはあるなと思った」と南野自身も逆転へ大いなる希望を抱いた。実際、そこからの猛攻は凄まく、堂安や途中出場の武藤嘉紀が貪欲に相手ゴールに詰め寄った。が、後半38分にVAR判定で吉田麻也のハンドを取られ、献上したPKで3点目を失った時点で、無情にも勝利の可能性は潰えた。

 結局、乾貴士との交代を強いられた南野はベンチでタイムアップの笛を聞くことになった。彼はただ1人、ピッチ上に膝を抱え込んで座り込み、しばらく動けなかった。

空砲に虚しさも…1点が持つ意味

 試合後のミックスゾーンでも「運も実力のうちはと言いますけど、悔しいですね」と失望感を露わにする。カタールに一矢報いた決勝での得点に関しても「あのゴールは意味、ないっすね。優勝しないと意味ないと僕は思ってたし、それにつながるゴールだったら自分にとって意味があったと思いますけど、勝利につながっていない。悔しいですね」と空砲になった虚しさを吐露した。

 それでも1点は1点だ。このゴールがなければ、南野がA代表の主力として初参戦したこの大会はもっと納得できないものになっていたに違いない。

 森保一監督体制発足後の2018年5戦で4得点を挙げた背番号9には、アジアカップでのゴールラッシュが大いに期待された。

「チームのために全力を尽くしたい。個人の賞とかはステップアップは優勝したうえでの話」と本人はあくまで慎重なスタンスを崩さなかったが、もともと上昇志向の強い男である。大仕事をして成り上がろうという野心は抱いていたはずだ。

 しかしながら、9日の初戦・トルクメニスタン戦からタイトなマークを受けて親善試合のような自由を与えてもらえず、ゴール前での余裕を失っていく。悪循環をより加速させたのが、13日の第2戦・オマーン戦だ。前半から鋭い動き出しで相手の背後を取るプレーを連発しながら、4度の決定機を逃したことで、点取り屋のリズムが狂った。

「自分としてはシュートまでの最後のファーストタッチも悪い感じはしていなくて、少しシュートを浮かせるとか、GKをギリギリまで見るとか、そのへんの余裕は少しなかったのかと。でも気持ち的には何も問題ないし、入るまでやってやろうと思ってるんで、次は改善していきたいです」

 こう語る本人は懸命に前を向こうとしたが、決勝トーナメント突入後も決めきれない時間が続く。21日のサウジアラビア戦では、後半立ち上がり早々にゴール前でフリーになった場面でボールコントロールがズレてハンドを取られ、24日のベトナム戦でも前半終了間際のGKとの1対1を防がれるなど、どうしてもゴールが遠いまま。

 かつて本田圭佑も「ゴールはケチャップみたいなもの。出ない時は出ないけど、出るときはドバドバ出る」と語ったことがあったが、南野も点取り屋特有のスランプに陥ったのは事実だろう。

香川真司も復活を期す。定位置争いは激化へ

 献身的な走りとハードワークで守備には確かに貢献していたが、トップ下の偉大な先輩・香川真司を超えようと思うなら、それだけでは足りない。もちろん本人は自分と香川との比較など一切しないないだろうが、日本代表トップ下の前任者と比べられるのはある意味、やむを得ないこと。その高い壁を乗り越えるためにも、目に見える結果がどうしてもほしかった。

 結果として日本はカタール戦で入りに失敗し、あと一歩のところでアジア王者の座を逃すことになった。南野もヒーローにはなり損ねたが、重圧のかかるファイナルでトンネルを抜け出し、一矢報いる得点を挙げたことは必ず前向きな未来につながる。そうしなければ、苦悩に苦悩を重ねた意味はないのだ。

「代表選手としてこういう大会を戦うのはすごく楽しかったし、サッカー選手として喜びを感じた。だからこそ、代表のユニフォームを着て、もっとプレーしたいと思った。その分、悔しさも大きい。この経験を自分の成長につなげて、いつかリベンジしたいです」と神妙な面持ちで語った24歳のアタッカーにとって重要なのはここから先だ。成長速度を引き上げていかなければ、大激戦のトップ下のポジションでは生き残れないからだ。

 トルコ移籍で復活を期している香川もまだまだ健在だし、鎌田大地や安部裕葵ら若いタレントも追い上げてくるだろう。幼少期からの夢であるワールドカップ出場を現実にしようと思うなら、ライバルたちより点の取れる選手であることを実証しなければならない。

 アジアカップでは非凡なゴールセンスを出し切ることはできなかったが、ファイナルでの1点は自信にしていい。この一撃が今後の南野拓実にどのような影響をもたらすのか。彼の変貌に期待するしかない。

(取材・文:元川悦子【UAE】)

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