日本代表は前半、なぜ誰も何もしなかったのか。アジアカップ決勝、最大の敗因とは?【西部の目】

2月2日(土)10時20分 フットボールチャンネル

最大の反省点は前半の「噛み合わせ」

AFCアジアカップ2019決勝は1日に行われ、日本代表はカタール代表に1-3と敗れた。今大会、相手の特徴や試合の流れに的確に対応して勝ち上がってきた日本だが、前半の45分間は修正することなく2点を失った。なぜ日本は決勝という大一番で後手を踏んだのだろうか。(取材・文:西部謙司【UAE】)

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 どんな試合でも敗因は1つではない。たった1つだけの理由で試合に負けるなどいうことはありえない。ただ、カタールとの決勝での最大の反省点は何かといえば、前半のマッチアップの不具合であることは衆目の一致するところだろう。

 日本のフォーメーションは不変の4-4-2。対するカタールは3-5-1-1ともいうべき形だった。中盤中央部の人数が日本の2(柴崎岳塩谷司)に対して、カタールは4である。サイドには日本がそれぞれ1人ずつの数的優位があるが、中盤中央部が完全な人数不足であるため、カタールがパスを回し始めるとボールの奪いどころを作れなかった。焦れて奪いにいこうとすればするほど、日本の守備ブロックにどんどん穴が開いてしまう状況になっていた。

 この噛み合わせの悪さを修正する間もなく、12分にアルモエズ・アリに見事なオーバーヘッドキックから先制されてしまう。さらに27分にはアブデル・アシシ・ハティムに狙いすましたミドルを食らって0-2。その後も日本は何の修正もないままハーフタイムを迎えた。

 34分にはペナルティーエリア内まで持ち込まれ、最後はハサン・アル・ハイドスのシュートがポストに当たっている。3点目を決められていたら、もうこの時点で試合が決まってしまうところだった。

なぜ、誰も何もしなかったのか?

 2010年南アフリカワールドカップ、このカタール戦とよく似た状況になった試合があった。グループリーグ最後のデンマーク戦だ。デンマークのパスワーク、当時はまだそういう言葉はなかったが、ポジショナル・プレーによって日本はボールの奪いどころをなくして制御不能になりかけていた。

 そのとき、遠藤保仁がベンチに向かって「このやり方ではダメ」という意味のことを言い、守備時の噛み合わせを変更している。後で見返してみると遠藤の修正案が必ずしも正解ともいえないのだが、とにもかくにも方針が定まったことで、それ以降は落ち着きを取り戻すことができた。明らかに状況が悪い、それを感知し、さらに修正案を出せる選手がいたのは大きかった。

 2018年ロシアワールドカップ、ベルギーに2-0でリードしたとき、長谷部誠西野朗監督に「どうするんですか?」と聞いた。残り時間はたっぷりある。攻めるのか守るのか。西野監督の答えは「このままでいい」だった。

 後にテレビ番組に出演した西野前監督は「何とも中途半端なことを言ってしまった」と後悔していたが、長谷部はチームの意思統一をする必要性を感じていたわけだ。こちらは状況が良すぎたために迷いが出たケースだった。

 カタール戦前半、明らかに状況は悪かった。噛み合わせに原因があることもわかっていたはずだ。ところが、誰も何もしなかった。「どうすんだ、これ」とベンチにSOSを出した選手もいたようには見えず、森保一監督が何か修正案を授けた形跡もない。

 対策としては前から1枚下げて噛み合わせてしまうのが簡単だが、それには原口元気か南野拓実のポジションを変えなければならない。その判断をピッチ上の選手で行うのは難しかったと思う。選手たちで何かできるとすれば、ディフェンスラインをペナルティーエリアまで下げての総退却ぐらいだろう。

 立ち位置を変えないならスペースを潰して嵐が過ぎ去るのを待つしかない。ベンチが動かなかったのは謎だ。動く前に2点目が入ってしまったのかもしれない。

力ずくの攻め込み

 カタールはリードを奪えば引く。これまでの試合と同じく堅守速攻モードへ切り替えた。2点ビハインドの日本は攻める。中央の噛み合わせで不利だった日本だが、攻め込むならサイドに数的優位がある。酒井宏樹、長友佑都の両サイドバックが進出すると、オマーンは後退を余儀なくされフォーメーションは5-4-1へ。日本の攻撃を防いでも、素早いハイプレスにカウンターもままならず自陣に釘付けとなった。

 日本の一方的な攻勢が続くが、スペースを埋められているためなかなかチャンスは作れない。もともと今大会の日本は、引いた相手に対する攻撃が不得手である。それでも強引に攻め続け、何度もCK、FKから圧力をかけシュートも放ったが、カタール守備陣は持ちこたえていた。南野が1点を返し、さらに攻め込む。カタールは消耗してきて陥落寸前にみえた。しかし、ここまで押し込んでしまうとカウンターの1つや2つは日本も覚悟しなければならない。

 後半34分のカウンターは何とかしのいだが、CKから吉田麻也にハンドがあったというVAR判定でPKに。残り10分を切っての2点差。選手交代と4-1-3-2への変更による総攻撃になるが、吉田と冨安をトップに上げて放り込むでもなく、漫然と攻め込んでは跳ね返されて試合終了となった。

 決勝までは、相手の特徴と試合の流れに適切に対応するプレーで勝ち上がってきた日本だったが、カタールの仕掛けた罠に対応しきれなかったのは痛恨といっていい。

 カタールには技術があり戦術があり、アルモエズ・アリという傑出したゴールゲッターがいた。敗因はもちろん1つではない。ただ、対応力が大きなテーマだった今大会の最後に大きな失敗をしてしまったのは反省の第一に違いない。

(取材・文:西部謙司【UAE】)

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