【新車のツボ163】プジョー3008。超小径ステアリングホイールが走りの快感につながる

2月2日(日)6時20分 Sportiva

 2019年の自動車業界における世界最大のニュースといえば、年末ぎりぎりの同年12月18日に正式合意にいたったPSA(プジョー・シトロエン)とFCA(フィアット・クライスラー・オートモービルズ)の合併だろう。両グループは対等合併で、年間の販売台数は合計で870万台ほど。フォルクスワーゲングループ、ルノー・日産・三菱アライアンス、トヨタグループに次ぐ世界4位の規模になる。

 大手メディアの間には、この合併を”弱者連合”と上から目線で揶揄する論調もあるが、クルマ好き目線から見ると、このコンビはなかなか興味深いものがある。
 それは、とくにここ数年のPSAが過去最高のスピードで業績を伸ばしてきた勢いがあるからだ。2012年前後には倒産の危機までさけばれたPSAだが、14年にルノーから電撃移籍してきたカルロス・タバレスさんがCEOに就任すると、業績もV字回復。翌15年には黒字化に成功して、16年には米ゼネラルモーターズから欧州事業(=オペル/ヴォクスホール)を買収するまでになった。


 ちなみに、タバレスさんはルノー在籍時には日本の日産に赴任していた時期もあり、ルノーCEO時代にはルーテシアR.S(第66回参照)によるワンメイクレースに自身がドライバーとして参戦していたほどのカーガイだ。世界最大市場の中国を含めたアジアでの業績が上位3グループに及ばないのがPSA+FCA連合の弱点だが、彼ら本来の足場である欧米市場での存在感はちょっとスゴい。
 もともとPSAの勢いが目立っていた欧州では、プジョー、シトロエン、DS、オペル、ヴォクスホールといった旧PSA傘下ブランドに、フィアット、アルファロメオ、マセラティ、ランチアなどの旧FCAのそれが加わるわけで、欧州だけならシェアトップも見えてくる(?)ほどの充実ぶりだ。そして、世界で2番目に大きい北米市場は、もちろん、ジープ、ダッジ、クライスラーなどを抱える旧FCAの得意領域である。
 ただ、昨今の自動車産業がこぞって巨大グループ化する大きな理由のひとつが、”目に見えない基本骨格やメカニズム部分の共用による開発・製造コストの効率化”である。それを考えると「これだけ膨大なブランドを抱えて、ちゃんと作り分けできるの!?」という疑念がなくはない。しかし、それこそ新グループでも実質的な陣頭指揮役のCEOに就任するタバレスさんの得意とするところなのは、これまでのPSAの商品を見れば納得である。


 前置きがすっかり長くなってしまったが、タバレス指揮下でのPSA最大のヒット商品が、この2代目プジョー3008なのである。このクルマは本国で16年秋に発売されて、翌17年春に欧州カーオブザイヤーを獲得した。

 プジョーの販売は、日本でもここ数年ずっと前年比で110%超の右肩上がりに成長しているが、そこには17年3月に導入されて、一時はプジョー全体の3割以上の売り上げを占めた3008が果たした役割はすごく大きい。そういえば、ワタシが住んでいる東京でも街中で3008の姿がみるみる増えた気がするが、それが錯覚ではないことは数字からも明らかなのだ。
 3008を見ればわかるように、最新のプジョーはきらびやかで都会的なデザインがツボ。内装でも、驚くほど小径のステアリングホイールを中心に、工芸品を思わせる繊細なメッキ部品が目をひく。かと思えばダッシュボードにツイード風の布を張るなどの遊び心をのぞかせるのも独特でオシャレだ。いっぽうで、これと同時期に登場したシトロエンが3代目C3(第143回参照)である。ご覧のとおり、都会的なプジョーとは好対照に、最近流行のスポーツウェアを思わせるアウトドア風のデザイン性を売りとする。


 同じフランス企業だったシトロエンをプジョーが買収したのは1976年だった。以来、PSAは販売地域も価格帯もよく似た2つのブランドの作り分けにずっと苦慮してきた。そんな両ブランドに今ほど際立ったツボのちがいが感じられて、しかもそれぞれが成功しているのはPSA史上初では?……とすら思う。こういうむずかしい仕事を見事にやってのけたタバレスさんなら、FCAを含めた多ブランド戦略もうまくやってくれる気がする。

 それにしても、最新のプジョーを象徴する3008は1台のクルマとしてよくデキている。しかも、基本骨格やメカニズムをシトロエンと共用しながら、デザインだけでなく、乗り味の差別化にも成功している点は、うるさいクルマオタク筋も納得のツボである。
 その秘密のひとつが、プジョーにだけ使われる超小径ステアリングホイールだ。これが使われはじめたのは13年ころからで、当時は操作が過剰に速く大きくなりがちな超小径ステアリングとシャシーのバランスがよくなかったが、最新の3008はそのあたりの調律がドンピシャ。小さなステアリングを握る手首をくいッと動かすだけで、クルマの動きがフワピタと決まる瞬間は、それはもうプジョー乗りならではの快感のツボである。


【スペック】
プジョー3008GTライン
全長×全幅×全高:4450×1840×1630mm
ホイールベース:2675mm
車両重量:1480kg
エンジン:直列4気筒DOHCターボ・1598cc
最高出力:180ps/5500rpm
最大トルク:250Nm/1650rpm
変速機:8AT
WLTCモード燃費:13.4km/L
乗車定員:5名
車両本体価格:416万6000円

Sportiva

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