“長友佑都の代表外し”は絶対反対? その理由とは…。ピッチ内外で示す存在価値【日本代表熟練記者の眼】

2月6日(水)11時19分 フットボールチャンネル

今大会未招集の有望株も

日本代表はAFCアジアカップ2019で目標だった優勝を遂げることはできなかったが、若き新戦力の台頭という収穫を得た。森保一監督はこの先も様々な選手を試す可能性があるが、日本代表を長く取材する記者は長友佑都を世代交代の対象とすることは絶対反対だという。その理由とは?(取材・文:元川悦子【UAE】)

——————————

 1日のファイナル・カタール戦で1-3の苦杯を喫し、AFCアジアカップ2019での戴冠はならなかった新生ジャパン。

 しかし、同大会3度目の長友佑都が「収穫は若い選手の成長。負ければ終わりという重圧の中で、彼らが経験を積んでくれたことは大きかった」と話したように、20歳の堂安律と冨安健洋、大会中に24歳になった南野拓実らが初めてA代表の主力として重圧のかかるビッグトーナメントを戦い抜いたことは1つの財産になった。

 昨年8月の就任時に「世代交代を進めていく」と語った森保一監督にとっても前向きな成果と言っていい。

 日本代表は今後、3月と6月に国内での親善試合4戦を行って、コパ・アメリカに参戦。秋からは2022年カタールワールドカップ・アジア予選に挑む予定になっている。そのメンバーがどうなっていくかは不透明だが、一層の若返りが進むという見方もある。

 今回のメンバーには青山敏弘、東口順昭、長友、槙野智章吉田麻也、乾貴士、塩谷司という7人の30代選手が含まれていた。ただ、青山や塩谷のボランチであれば、軸を担った柴崎岳と遠藤航という軸に加えて、ケガで離脱した守田英正、招集見送りとなった三竿健斗という両若手がいる。

 1月に欧州へ赴いた2020年東京五輪世代の板倉滉と中山雄太も状況次第ではA代表候補に入ってきそうな勢いだ。センターバックも昌子源や植田直通といったロシアワールドカップ組の20代選手が国際経験を積み重ねていて、槙野や吉田と言えどもウカウカしてはいられない状況になってきた。

 ベテランがその波に飲み込まれるのか、それとも踏みとどまるのかは、それぞれを取り巻く環境次第と言っていい。

ピッチ内だけではない長友佑都の価値

 ただ、左サイドバックに関して言えば、依然として長友が突出した存在感を誇っている。今大会も6試合に出場し、28日の準決勝・イラン戦で対面に位置したアリレザ・ジャハンバフシュに仕事らしい仕事をさせず、1対1の守備で絶対的強さを示した。

 2010年南アフリカ、2014年ブラジルワールドカップに参戦した20代半ばの頃のような攻撃参加とゴールに直結するピンポイントクロスを見せる場面は少なかったものの、彼がチームにもたらした安心感は見逃せない点だった。

 今大会のメンバーだった佐々木翔も17日のウズベキスタン戦に1試合に出場し、競り合いの強さという武器を示したものの、国際経験ではどうしても長友より劣る。森保監督にとってはサンフレッチェ広島時代の秘蔵っ子ではあるが、佐々木を大一番で起用する覚悟は持てなかったようだ。

 他の左サイド要員を考えてみても、昨年11月シリーズに招集した山中亮輔や東京五輪世代の杉岡大暉のような有望選手がいるが、すぐに長友と取って代わるレベルに達していない。

 長友本人は「(森保)監督自身もベテランの僕とかを今後、どうするかを考えると思いますよ。これがもしかしたら最後になるかもしれない、僕の代表が」という強い危機感を募らせたものの、いきなりドラスティックな世代交代が行われるとは考えにくい。仮に森保監督がそういう方向性を示すのなら、絶対反対と言うしかないだろう。

 長友が日本代表にいる価値はピッチ内だけではない。毎日、堂安と冨安とともに練習前のボール回しをし、若手を盛り上げ、時には苦言を呈するなど、「ピッチ上の指揮官」として八面六臂の活躍を見せていたのだ。

 長友がいるだけでチームの雰囲気が明るくなり、選手たちが和む。槙野や乾もそういった役割を精力的にこなしていたが、長友がいるからこそやりやすかったはず。

「世界コミュニケーション選手権優勝」を公言する男

 2008年から足掛け12年間日の丸をつけ、さまざまな個性を持つ先輩たちとフランクに接し、自らを「世界コミュニケーション選手権があったら優勝できる」とまで言い切ってしまう特別なキャラクターが失われたら、森保ジャパンは大人しく地味な集団と化してしまうかもしれない。いい意味での世代交代は若い選手だけでは進まないのだ。

 さらに言うと、メディアやサポーターへの発信という仕事も長友は一身に背負っていた。12月の国内合宿合流時から「このアジアカップで活躍できなかったらもう代表に呼ばれないだろうと。それくらいの覚悟を持って臨んでます」と強烈なインパクトを与える言葉をいきなり口にし、チーム全体をピリッとした空気にさせた。

 1月3日にアブダビ入りした直後には「僕はおみくじは信じないんで。2011年も凶が出たけど、アジアカップで優勝して、インテルにまで移籍できた、僕にとっては大吉だった。全然当たんないし、ただの紙切れですね」と報道陣の笑いを取り、中島翔哉や守田の離脱といったアクシデントが起きた時も「絶対優勝していい報告をしたい」と力を込めた。

 乾が追加召集される時には「乾だと聞いた時はざわつきましたもん。『来るか』と。それが彼の持ってるパーソナリティでしょう」と目を輝かせ、自分に懐いてくる堂安についても「あいつの向上心はすごい。ビッグクラブに行ける可能性がありますよ」と期待を示した。

 そうやって仲間をリスペクトし、前向きに語り、ポジティブな機運を作り、一体感を醸成していくのが長友のやり方。さすがは「世界コミュニケーション選手権優勝」を公言するだけのことはある。

長友を外せば日本代表は人気低迷の危機?

 大会中もイランとの対決を「ライオンと虎」に例えたり、カタール戦に向けて「ハイエナ戦法」と自分たちの戦い方を評すなど、とにかく言葉の使い方がうまい。

 イランのエースFWサルダル・アズムンを「元ブラジル代表のカカに似ている」と言ったり、サウジアラビアのFWファハド・アルムワラドを「スピードモンスター」、カタールのFWアルモエズ・アリを「チーター」と言うなど、聞く側に具体的なイメージを持たせる術にも長けていた。

 そこまでの表現力や話術を持つ人間は今の日本代表には見当たらない。非公開練習が続き、ロクに情報のない中、記事を書かなければならないメディアにとって、彼の存在は大きな拠り所だった。

 それだけの発信力のある選手がいなければ、日本代表人気が低下し、露出が減る恐れも否定できない。長友の姿勢を見て、森保監督や他の選手たちもそういう危機感を持ってほしいと感じることは少なくなかった。

 もちろんサッカー選手の本業はピッチ上での一挙手一投足であり、勝利につながるパフォーマンスを示せるかどうかだが、それを含めても、長友がいない代表を考えると恐ろしくなった。彼にはピッチ内外で傑出した価値を示し続けてほしいし、代表の歴史と重みを伝え続けてくれることを強く願いたい。

(取材・文:元川悦子【UAE】)

フットボールチャンネル

「日本代表」をもっと詳しく

「日本代表」のニュース

トピックス

BIGLOBE
トップへ