2025年のJリーグで「ブレイク」するのは誰か?A代表入りも期待される「注目の5人」を識者が選出
2025年2月14日(金)17時39分 ココカラネクスト

中島の実力にはチームメイトのトルガイも「第2のソン・フンミン」と太鼓判を押す(C)Getty Images
2025年のJリーグが開幕する。
昨年は神戸がリーグ連覇を果たし、武藤嘉紀がMVPに輝いた。柏の関根大輝はU−23日本代表、A代表共に初選出のサプライズを起こし、冬にスタッド・ランスへ移籍。また、鮮烈なインパクトを残した鹿島の知念慶や濃野公人は、J1ベストイレブンに選ばれるなど、昨年も多くの選手が名を揚げた。
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今季のJ1でブレイクするのは誰か。名声を世に顕し、ベストイレブンやA代表入りを果たすかもしれない注目の5人を選んでみた。
【1】中島洋太朗(広島)
2023年にクラブ史上最年少の17才でプロ契約を締結し、昨季は公式戦17試合に出場。2月8日に行われたスーパーカップでも天才の片鱗を見せ、すでに話題沸騰。U−20日本代表の中心でもあり、今季は開花のシーズンになりそうだ。
公式プロフィールでは身長175cmだが、試合中はそれより少し高く感じられる。それは膨張色のスパイクだけでなく、凛として美しいプレー姿勢の影響があるだろう。スッと立ち、常に上がった目線は遠くを見通し、ダイナミックにパスを展開する。
そうした視野の広さはもちろんのこと、ボールタッチするギリギリまで判断を変えられるのも中島の特徴だ。止めると見せかけて持ち出したり、右にプレーするのをやめて、左にボールを止めたり。そのとき、左足も利き足と遜色のない精度でパスを出すことができるので、ギリギリで変えた判断もノッキングを起こさず、スムーズにプレーが流れていく。
ピッチを上から俯瞰する人以上のアイディアを出し、観客を驚かせる選手はプロでも決して多くはないが、その逸材が、守備にも労を厭わず汗をかく。この選手はJリーグで長くプレーしないかもしれない。今季、見るべき選手だ。
【2】長倉幹樹(浦和)
浦和のアカデミー、順天堂大学を経て、2022年は関東サッカーリーグ1部の東京ユナイテッドでプレー。その後J2群馬へ移籍し、翌年はJ1新潟と、少しずつステップアップを果たし、2025年は遂に地元へ帰還する。関東リーグでプレーした選手が、3年で世界最高峰の舞台、新クラブW杯に出場するかもしれない、夢のある話。浦和のシンデレラは幸せを掴むか。
スピードあり、技術あり、空中戦あり、運動量あり、ないものを探すのが難しい選手だ。身体をしなやかに使い、周囲をアッと驚かすターンも魅力的。本職はトップ下だが、1トップでも適応可能だ。
浦和の1トップ候補はチアゴ・サンタナ、髙橋利樹、松尾佑介など、特徴がはっきりした一芸タイプが多いので、どこかの時期で汎用的な長倉がハマる可能性はあるのではないか。競争相手は多く、レベルが高いが、意外と長倉は特異なアタッカーだ。
【3】鍬先祐弥(神戸)
非常に気の利くフィルター型MF。ポジショニングが的確で、予測も早い。危険なスペースをいち早くカバーする。パワーがないので当たり負けは否めないが、アジリティが高く、高強度のランニングを持続できるのは大きな魅力。広範囲にスペースを埋める。
技術もしっかりしており、判断がシンプルで早い。得点やアシストを量産するタイプではないが、本人に欲があれば数字も残せるのでは。どこかで変質するか。
昨年はサイドバック起用だったが、今季は中盤が増えそうだ。山口蛍が移籍し、井手口陽介を怪我で欠いてスタートした神戸だが、鍬先が台頭すれば面白い。リーグ3連覇のキーマンの一人だ。
【4】伊藤達哉(川崎)
ここ数年、Jリーグを経由せず欧州サッカーへ挑戦する10代の選手が増えているが、宮市亮や伊藤達哉はその先駆者だった。柏ユース時代にハンブルガーSVとプロ契約し、欧州で10年プレーした伊藤が今季、27才で新人Jリーガーになる。
小柄な伊藤のアジリティや瞬発力を生かしたドリブルは、大柄で直線的な選手が多いドイツでこそ、弱点を突くクリティカルな武器になった。それがJリーグでどう通じるか、やや不透明に感じるのは正直なところ。だが、伊藤はそもそもドリブル一辺倒ではない。ドリブル「も」ある連係的なプレーが光る選手であり、特にワンツーは絶品だ。
プレスをかけられても慌てないし、判断良くボールを動かせる。相手を背負った状態から意外な反転突破やワンツーを見せたりと、仕掛けのパターンは豊富だ。伊藤のプレースタイルは、川崎の選手たちとは特に相性が良さそう。成熟を期待せずにはいられない。
また、長谷部監督の就任によりゾーンプレッシングを整備した川崎においても、サイドハーフを務める伊藤のポジショニングは的確だ。攻守共にフィットしており、逆輸入ブレイクの可能性は高いだろう。
【5】田中隼人(柏)
8クラブで監督が代わる今季のJ1。その中でも、戦術的な方向性が大きく変わるのが柏だ。それが良いほうへ転ぶのか、悪いほうへ転ぶのか。今季単年で言えば、どちらもあり得る。
長崎で主軸として経験を積んだ田中隼人は、その鍵を握る選手になりそうだ。左利きのCBは、ビルドアップを志向するリカルド・ロドリゲスのチームでは貴重な存在であり、3バックへの可変も取りやすい。
また、主導権を握りつつもチームが決定力を欠くとき、ネガティブトランジションの保証を含め、先に崩れないように統率するのはCBの重要な仕事だ。昨季の柏は後半アディショナルタイムの失点が目立ち、多くの勝ち点がこぼれ落ちてしまった。これを改善しなければ、スタイル云々以前に結果は得られない。存在感を出してほしいところだ。
[文:清水英斗]