大躍進のJ3福島ユナイテッド。主力を失った2025シーズンはどうなるか
2025年2月14日(金)18時0分 FOOTBALL TRIBE

2月15日に開幕する明治安田J3リーグ。J2から降格した栃木SC、ザスパ群馬、鹿児島ユナイテッドに加え、JFLから昇格してきた栃木シティ、高知ユナイテッドが初参戦し、全20クラブによる戦いが始まる。
昨2024シーズンは降格組の大宮アルディージャが独走V。2位にはFC今治が食い込んでJ2初昇格を果たし、3位に入ったカターレ富山がプレーオフを勝ち抜き、実に12季ぶりとなるJ2昇格を決めた。
プレーオフに進出したものの昇格を逃した4位の松本山雅は、前年は9位。5位の福島は前年15位。6位のFC大阪は前年11位だ。メンバー構成の入れ替わりが激しいリーグとあって、前年の順位など全くアテにならないことが分かる。しかも20クラブ中、7クラブが新監督を迎えている。始まってみなければ何も分からないというのが、正直な印象だ。
ここでは昨シーズン戦前の予想を大きく上回る好成績を収め、J2にリーチを掛けるまでに至った福島ユナイテッドの今2025シーズンを占いたい。

昨季クラブ最高タイ記録J3・5位
昨季、寺田周平監督を迎え、クラブ最高タイ記録の5位にチームを押し上げた福島。しかし、その原動力となったFW塩浜遼がJ2ロアッソ熊本に完全移籍し、U-20日本代表で背番号10を背負うMF大関友翔もレンタル元の川崎フロンターレに帰還した。また、長年主将としてチームをまとめていたGK山本海人は現役を引退した(浦和ユースのGKコーチに就任)。
即戦力として、FW飯島陸をヴァンフォーレ甲府から、DF安在達弥をアスルクラロ沼津から、GK上田智輝をFC岐阜から迎えた福島。さらに業務提携を結ぶ川崎からユース育ちの19歳の長身ボランチであるMF由井航太、新人にDF當麻颯(甲南大学卒)、MF中村翼(法政大学卒)、FW石井稜真(法政大学卒)といった若き新戦力も加わり、新主将のMF針谷岳晃を先頭に再びJ2昇格へ挑む。
守備陣は大きな動きはない。昨季主将を務めDFリーダーでもあった堂鼻起暉が、シーズン途中で同県のJ2いわきFCに引き抜かれても破綻を起こさなかったことで、ある程度計算は立つだろう。
塩浜と大関の穴をどう埋めるか?
問題は昨季16得点の塩浜と昨季8得点の大関の穴を埋める作業だ。福島は伝統的に【4-1-2-3】のフォーメーションを敷きポゼッションを重視しているが、今季もこの戦い方を継続するならば、昨季ボランチ起用が多かったMF宮崎智彦を1列上げ、左サイドハーフに置く可能性もあるだろう。
3トップに関しては、背番号10を背負うMF森晃太を左ウイングに、ベテランの域に達してきたFW樋口寛規をセンターフォワードに置くことは既定路線だろう。塩浜が君臨した右ウイング候補に名前が挙がるのはFW城定幹大、FW清水一雅に加え、新加入の飯島、石井らが激しいポジション争いを繰り広げることになるのだろう。
いずれにせよ、上位リーグへのステップアップが噂された寺田監督の続投が最大の”補強”であることは間違いなく、2年目を迎える今季チームをどうビルディングしていくのか期待したい。

胸スポンサーにスポーツX株式会社
また今季、福島にとって大きな動きがあった。実に11年ぶりにユニフォームの胸スポンサーが変更となったのだ。
福島県の第一地銀・東邦銀行が10年の長きにわたりホームスタジアムのネーミングライツも取得していたが、京都に本社を置き関西サッカーリーグ1部「おこしやす京都FC」や、東北リーグ1部「みちのく仙台FC」のオーナー企業でもあるスポーツX株式会社が、2024年同社の代表である小山淳氏が代表取締役CEO(最高経営責任者)に就任し経営に参画した上で、満を持して胸スポンサーに就いた。
スポーツX株式会社は2009年に創設。「スポーツ×ネット×教育」を軸に、プロスポーツクラブ運営、スポーツ企業への投資・支援を行い、「スポーツを通じて世界中の人々、地域をつなげ、全世界に笑顔の花が咲き誇る幸せな未来をつくる」ことを理念とする異色の企業だ。社員はJリーガーも含む元アスリートが多く、指導者の育成やクラブの経営支援を手掛けるコンサルティング業務と並行し、スクール事業も行っている。
「スポーツクラブは地域に根ざしたインフラ」という哲学の下、その事業は海を越え、ミャンマーのプロリーグ「ミャンマー・ナショナルリーグ(MNL)」と、ミャンマーでの選手育成とミャンマー代表の強化を目指す合弁会社「ミャンマージャパンフットボールディベロップメント」を設立。日本のスポーツビジネスに新風を巻き起こしている。
そんな小山氏の著書は『弱くても稼げます シン・サッカークラブ経営論』(光文社/入山章栄氏、松田修一氏、阿久津聡氏との共著)。まさに福島を取り巻く状況にピッタリのタイトルだ。
昨季は上位争いを演じたお陰で平均約1,800人の観客を動員したが、それ以前は入場者数が1,000人にも届かず、平日ナイターともなれば555人という有り様だった福島。同社が持つノウハウが集客に結びつけられるかも見ものだ。

開幕からリーグを引っ張る存在に?
雪国クラブの宿命だが、福島は2月16日の開幕戦(奈良クラブ戦)から3月1日の第3節(FC琉球戦)まではアウェイ戦を強いられ、本拠地とうほう・みんなのスタジアムでの初戦は、3月8日のFC岐阜戦まで待つことになる。
夏場と終盤に調子を上げプレーオフ切符をつかんだ昨季だったが、寺田監督の戦術が浸透した今季は、開幕からリーグを引っ張る存在となることが期待できる。
副将のGK吉丸絢梓は、2月7日の内堀雅雄福島県知事への表敬訪問の際「目標はJ3優勝とJ2昇格」とハッキリと口にし、それに応える形で内堀知事も「多くの観客に来てもらう取り組みをしていきたい」と語った。
昨季の快進撃によって地元にも認知され始め、クラブと官民が一体となりつつある福島。魅力的なサッカーに結果が付いてくるようなら、昨季以上のムーブメントを起こすことは可能だろう。