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C大阪、清武獲得資金捻出の背景。約6億円にのぼる移籍金。ヤンマーの支援と不退転の覚悟

フットボールチャンネル2月17日(金)10時39分
画像:C大阪、清武獲得資金捻出の背景。約6億円にのぼる移籍金。ヤンマーの支援と不退転の覚悟
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「最後のほうはあきらめていました」

 2017シーズンのJリーグが、いよいよ25日に開幕する。選手の移籍が活発化したなかで、ひときわ大きな注目を集めているのが3年ぶりにJ1の舞台で戦うセレッソ大阪だ。ハリルジャパンのトップ下を担う清武弘嗣を、ヨーロッパの冬の移籍市場が閉まる日本時間2月1日になってセビージャから完全移籍で獲得。500万ユーロ(約6億円)とされる高額の移籍金が捻出された背景には、玉田稔代表取締役社長をはじめとするセレッソ経営陣の不退転の覚悟があった。(取材・文・藤江直人)

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 ヨーロッパの冬の移籍市場が閉まる1月31日が迫ってくるにつれて、絶望感が占める割合のほうが大きくなってきた。スペイン1部セビージャとの間で進めてきた日本代表MF清武弘嗣の移籍交渉に関して、セレッソ大阪の玉田稔代表取締役社長は破談になると半ば観念していた。

「最後のほうはあきらめていました。話が進まない、これはダメだなと。移籍金の金額もそうですけど、ウチもお金があるわけでもないので。分割や先延ばしで払おうとしたんですけど、そういうことを先方がなかなか飲み込んでくれませんでしたからね」

 セビージャで完全に出場機会を失っていた清武が、Jリーグへの復帰を希望している——。セレッソ側がこうした情報をキャッチしたのは、年が明けて間もない1月上旬だった。しかも、清武の代理人を介して、古巣セレッソでのプレーを希望していることが伝わってくる。

 大熊清チーム統括部長を中心にさまざまな検討がなされた結果、玉田社長の承認のもと、同13日にセレッソがオファーを出す。しかし、違約金を600万ユーロ(約7億2000万円)に設定しているセビージャの反応は鈍かった。それほどまでに金額面で乖離していた。

 昨夏にハノーファーから清武を獲得した際に、セビージャが支払った移籍金は650万ユーロ(約7億8000万円)とされている。セビージャが可能な限り清武獲得資金を回収したいと考えるのは当然の流れで、値下げはもちろんのこと、玉田社長が言及した分割や先延ばしにも応じる気配を見せなかった。

 平行線をたどっていた移籍交渉に、劇的な変化が生じたのは現地時間1月29日。アルゼンチンの強豪ロサリオ・セントラルに所属する23歳のホープ、MFワルテル・モントーヤを獲得することで合意に達したことがセビージャから発表された。

 合意した契約期間は4年半だが、セビージャへの合流時期が2月か、あるいは今シーズン終了後になるかは未定ともつけ加えられた。3枠あるEU外選手枠がすでに埋まっていたためで、アルゼンチン人のホルヘ・サンパオリ監督の構想から実質的に外れていた清武の移籍交渉が必然的に加速される。

ヤンマーの支援が一番大きかった

 それでも、違約金の額は思ったほど下がらない。スペインとの時差は8時間。日本時間の2月1日午前8時の期限が刻一刻と迫ってきたなかで、まさにギリギリのタイミングで交渉がまとまった。急転直下で清武の獲得が決まった舞台裏を、玉田社長はこう明かす。

「メインスポンサーのヤンマーさんの支援が一番大きかったですね。清武がセレッソに戻りたがっていると察していただき、それならばぜひとも応援しようと言ってくださったので」

 違約金は最終的に500万ユーロ(約6億円)で落ち着いたとされる。セレッソは1月末決算のため、セビージャ側へ支払った移籍金は2017年度の決算の対象となる。玉田社長が続ける。

「今年中に返せるかどうかわかりませんけど、いずれにしても借金となりますから。稼いで、どこかで返していかないといけませんからね」

 昨シーズンのJ1昇格プレーオフを勝ち抜いたセレッソは、2014シーズン以来、3年ぶりにJ1の舞台に戻ってくる。25日の開幕戦の相手は、中村俊輔が加入したジュビロ磐田。会場は4万7000人収容のヤンマースタジアム長居だが、前売りチケットは快調な売れ行きを見せているという。

 ジュビロを率いる名波浩監督も「そりゃあ売れるでしょう」と、2006シーズンに1年間だけプレーした古巣との激突を心待ちにしている一人だ。

「我々には(中村)俊輔が加入して、向こうにはキヨ(清武)が帰ってきて、カード的にも盛り上がりますよね。キンチョウスタジアムではなく長居でやるということは、(スタジアムの)箱が大きい、人も入るということで必然的に注目されるでしょうから」

気合いを入れる必要性。クラブライセンスの発行問題

 ハリルジャパンでもトップ下のレギュラーをつかみつつある清武の加入は、営業面にもプラスに働くだろう。観客増に伴う入場料収入のアップや、十の位と一の位を足して「10」になる「46番」をつけた清武のユニフォームの売り上げ増が期待されるが、玉田社長は「そんなに甘くないですよ」と気を引き締める。

「現状のままいけば、と仮定すれば、2017年度は単年度の赤字になると思います。それほど厳しいと思っています。だから、相当の気合いを入れて頑張らないかんですよね」

 昨シーズンは開幕前にFW柿谷曜一朗をバーゼル(スイス)から、夏場にはMF山口蛍(ハノーファー)をそれぞれ完全移籍で復帰させた。特にわずか半年間で出戻る形となった山口のケースは、当初は想定していなかったという。

 必然的にチーム人件費もかさんだが、玉田社長によれば「2016年度は何とか少しのプラスになると思っています」と今年度決算の見通しを語る。一方でJリーグから開示されている2015年度の経営情報では、セレッソの純資産は1億1000万円となっている。

 この数字が何を意味するのか。2016年度で上積みされるとはいえ、2017年度で多額の赤字を計上すれば債務超過状態に陥るおそれもあるし、すでに清武の違約金という支出がある。そうなれば、クラブライセンスの発行問題も絡んでくる。玉田社長が「相当の気合い」と言及した理由がここにある。

「ウチはあまり利益を出せるクラブではなかったんですけど、そこは何としてでも自立していかなければいけないと思っています」

 清武はまだクラブ間の交渉が行われていた先月31日にスペインを後にして、ドイツ経由で2月2日に羽田空港へ帰国した。機上の人となっている間に交渉が合意に達したことに、4年半ぶりに復帰したセレッソへの感謝の思いを口にせずにはいられなかった。

「不安はあったし、ドキドキしてもいたけど、セレッソがすべてを出してやってくれているとも思っていたので、少し安心している自分がいたのも本音です」

育成して送り出すだけでなく、戻ってくるルートも

 羽田経由で伊丹空港に降り立った到着ロビーでは、人混みのなかから玉田社長を見つけ出し、駆け寄って頭を下げている。

「私も彼も初対面だったんですけど、『社長、ありがとうございます』と言ってくれました。今年のチームが始動するときに、私は『ファンやサポーター、スポンサー企業、そしてスタッフに対して感謝の気持ちを忘れずに1年間やっていこう』と選手たちを集めて言いました。当然ですけど、そのときに清武はいませんでしたけど、そういう感謝の気持ちをもってくれていることは嬉しかったですね」

 一夜明けた3日には大阪・北区にあるヤンマー本社を黒いスーツ姿で訪れ、移籍金捻出に尽力してくれたことに「ヨーロッパで4年半経験したことを、結果で示したいと思います」と感謝の思いを伝えている。

 ワールドカップ日韓共催大会代表のFW西澤明訓をはじめとして、MF香川真司(ボルシア・ドルトムント)、FW乾貴士(エイバル)、近年ではMF南野拓実(ザルツブルク)とヨーロッパへ数多くの選手を輩出してきたセレッソだが、玉田社長のもとで新たな流れを作り出そうともしていた。

「ウチはいままで育成型クラブという位置づけでやってきましたけど、実際には選手が出ていくばかりでした。もちろん海外へ出し続けることも重要ですけど、何らかのタイミングで戻ってくるケースも作りたかったんですね」

 Uターンの第1号が昨シーズンの柿谷と、ドルトムントへ期限付き移籍していたMF丸岡満だった。特に柿谷の場合はバーゼル側が1000万ユーロ(約12億円)の違約金を設定していたが、粘り強く交渉を重ねた末に、玉田社長をして「5分の1、いや6分の1かな」と言わしめた減額に成功した。

「セレッソはタイトルを獲らないといけないチーム」(清武弘嗣)

 育成組織から生え抜きの山口、大分トリニータから加入して2年半プレーした清武の復帰はそれぞれイレギュラーではあったが、異国の地で困難に直面しているなかで、愛してやまない古巣への復帰を熱望している彼らの思いを無視することはできなかった。玉田社長が振り返る。

「(柿谷)曜一朗のときは『戻れるならばウチへ』と話を進めていましたが、(山口)蛍が半年でとか、清武がこのタイミングで、というのはまったく頭になかった。本当に予想外。移籍していった選手のなかでは、乾が一番早く戻って来られるのかなと思っていたくらいですから。

 セレッソはしょせん仲良しグループで甘い、というご指摘をよくいただきます。仲が良いのは事実ですけど、イコール、甘いとか甘やかされているということではないと思う。チームとして戦うなかで仲の良さがプラスに働いたこともあるだろうし、曜一朗や蛍、そして清武が海外で味わってきた厳しさを持ち込んでくれるという意味で、さらにプラスになると思っています」

 1995シーズンに初めてJリーグ昇格を果たして以来、セレッソはタイトルを獲得したことがない。柿谷やロンドン五輪代表のFW杉本健勇を前線に擁する攻撃陣を、さらに活性化させる役割を担う清武は、こんな意気込みを口にしている。

「セレッソはタイトルを獲らないといけないチーム。何かタイトルを獲れるように頑張りたい」

 J1に残留するだけでは到底満足できない。厳格な指導で知られる尹晶煥新監督のもと、記録と記憶に残る結果を求める新生セレッソは、情に厚いフロントの不退転の覚悟と選手たちが抱く感謝の思いを車の両輪として、力強く、真っすぐ進んでいく。(金額は推定)

(取材・文:藤江直人)

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